第133話 鏡の中へにゃ
『おおーっと!ブリット、スピードでサイガを超えて優位に立ったのもつかの間、サイガの霧鏡陣で再び形勢が変わった!』
「これでは自慢のスピードも役に立つまい!」
サイガは鏡を使った攻撃に霧の分身を織り混ぜてくる。
その為、本物と分身の判別を難しくしていた。
「ならば、鏡を消すまで!」
ブリットは一つの鏡に向かって雷球を放った。
しかし、鏡は割れることなく雷球を吸い込んでしまった。
ドンッ!
「ぐあ!何だと。」
何と鏡に吸い込まれた雷球が背後の鏡から飛び出しブリットに命中したのだ。
「言い忘れていたが鏡への攻撃は攻撃した者に跳ね返るから気をつけるんだな。」
「そんなことは、先に言って欲しかったですね。」
『おおーっと、ブリット、鏡への攻撃で自分がダメージをおってしまった!サイガのブリットへの猛攻が始まった!』
ブリットは、サイガの攻撃を避けるのをやめ、がっしりとガードに徹していた。
「何を考えているのか知らんがこの程度で諦めるお前では無かろう。」
しかし、ブリットは反撃をするどころか目を閉じていたのだ。
「お前、目を閉じているのか!」
サイガはブリットに攻撃した際、ブリットが目を閉じていることに気付いた。
その時、ブリットがカッと目を見開きサイガの腕をつかんだ。
「本体はお前だ!」
「何だと!」
「目を閉じてしまえば、実態の無い霧の分身に惑わされることはないですからね。」
ブリットは渾身の力で右の拳を腕をつかんだサイガのみぞおちに叩き込んだ。
吹き飛んだサイガが空中で弾ける。
『おーっと、ブリットの渾身の拳を受けたサイガが弾けとんでしまった!』
「何だと?」
「ふっ、残念だったな!」
弾けとんだはずのサイガがブリットの懐に飛び込んでいた。
バキッ!
サイガのに強烈な左アッパーがブリットのあごをとらえた。
ブリットは上に向かって吹き飛んだ。
「ぐっ、この位で!」
ブリットは、背中の翼を広げ体勢を立て直そうとする。
「残念だが後ろを見てみろ!」
サイガの言葉にブリットが後ろを振り返るとそこにはサイガの鏡があった。
「あっ!」
小さな言葉を残してブリットは鏡の中に吸い込まれていた。
ドサッ!
ブリットが倒れ込んだのは観客席に置かれた鏡の前だった。
「何でこんな所に?」
『場外だー!ブリット、サイガの鏡で場外に出されてしまった!今度は、サイガが勝利だー!』
「ハハハ、今度は勝たせてもらったぞ!」
「どうなっているんだ?」
「俺の霧分身に実体が無いと思い込んだ、お前が未熟だったのさ!霧分身は虚実を織り混ぜることで本領を発揮するのさ。」
「くっ、申し訳ありません、御主人様。」




