第125話 一撃にゃ
「すみません、フドウ様。」
「サイガよ、お前が負けた理由は分かるか?」
「相手より私が弱かったからでは?」
「違うな。お前は己の力を過信した。相手を倒せるチャンスがあったにもかかわらずそれを無駄にしたことだ。戦場で次の機会などないのだぞ。」
「分かりました。」
「分かれば良い。次は私が出る。」
残りの3人の学ランが慌ててフドウを制止する。
「フドウ様が出るまでもありません。我々で勝負を決めてみせます。」
「ふっ、俺に指図するのか?」
「いえ、そのようなことは…。」
「俺が手本を見せてやるから後に続くが良い。」
「分かりました。」
フドウは、ゆっくりと武闘台の中央に歩みでた。
『おーっと漢組の次の選手はフドウだ。』
「いきなり、大将のお出ましかよ。」
「それじゃあ、ここは俺が出るにゃ。」
俺が武闘台の中央に出ようとした所を修一が止めた。
「いや、ここは俺に任せろ。来人は昨日も活躍してもらっているからな。」
「そう言うことなら、頼むにゃ。」
修一は武闘台の中央に歩み出た。
「俺の相手はにゃんこではないのか?」
「お前の相手はこの俺、赤と青の流星だ!」
『おーっと、妖精剣の2番手は赤と青の流星だ。』
「俺の相手はにゃんこではないのか?」
「俺をなめるなよ!」
ジャーン!
試合開始のドラが鳴る。
『妖精剣はフドウを相手にせずにゃんこを温存する作戦だ!』
「そんなんじゃねぇ、俺がフドウを倒すんだよ!」
修一は解説に喰ってかかった。
ドン!
次の瞬間、修一はフドウのタックルをまともに受け、闘技場の壁に叩き付けられていた。
ドシャ!
そのまま、修一は無言で石畳の上に倒れた。
会場は静まり返ったが一気に大きな歓声が起こった。
『おーーっと、一撃、失神だ!フドウのタックルで赤と青の流星が流れ落ちた。』
修一が解説に気を取られよそ見をした一瞬の出来事であった。
「戦いの最中に相手から目を離す等、素人同然だな。」
フドウはそう言い残し武闘台から降りて行った。
俺達は修一の元に駆け付けた。
「修一、大丈夫にゃ?」
「かかって来ーい!」
修一はすぐに目を覚ましたが一瞬、状況が判断出来ないでいた。
「修一、お前の負けだにゃ。」
修一はやっと状況を理解してがくりと首を項垂れた。
「ゴメン、調子に乗って負けちまった。」
「本当、お調子者なんだから。まあ、後は私達に任せておいてよ。仇は私がとってみせるわ!」
自信有り気に言ったのはエリスだったのだ。