第122話 霧のサイガにゃ
翌日の朝、俺達は神殿内の闘技場に集合した。
闘技場はローマのコロッセオ風の造りとなっていた。
石造りの闘技場は円形の武闘台の周囲に5メートルほどの壁があり、その上が客席となっていた。
既に闘技場の真ん中にフドウと四人の学ラン姿の人物が俺達を待ち構えていた。
「ゆっくりと休めたか?」
「おかげさまで疲れも取れてばっちりにゃ!」
「そうか、それは良かった。それでは試練を始めようか。昨日も言ったが一対一の団体戦だ。」
「御主人様!先鋒戦は私にやらせてください。」
「ここは、手堅く一勝しておきたいから、頼むにゃ!」
ブリットは闘技場の中央にあゆみでる。
『晴れ渡る晴天の中、フドウ様の神殿、大闘技場において、来人率いる妖精剣とフドウ様率いる漢組の一戦が開催されようとしています。私、実況のマースであります。おーっと、妖精剣の先鋒は猫耳がチャームポイントのイケメン。ブリットのようであります。』
ブリットが右手をあげながら爽やかな笑顔でこたえた。
するとフドウの右側に立っていた人物がジャンプしてブリットの前に立つと学ランを脱ぎさった。
『おーっと、対して漢組の先鋒は漢組一番のイケメンの霧のサイガだ。』
サイガは黒い長髪の涼しい目元の女性的な顔立ちのイケメンだった、
鍛えられた身体は無駄な筋肉はついておらず細く締まっている。
「キャー!サイガ様!」
客席からは黄色い声援があがった。
いつもは黄色い声援を受ける側であるブリットがここでは完全にアウェイであり敵役である。
「ブリット!そんなイケメンやっつけてしまえ!」
修一の声援が更にアウェイ感とヒール感を煽っている。
「何か、調子が狂いますね。さっさと終わらせたいですね。」
ジャーン!
ブリットの呟きが聞こえたのか試合開始のドラが鳴った。
ブリットはいきなり電光石火でサイガに接近すると右の拳をサイガの顔面に叩き込んだ。
しかし、ブリットの拳はサイガの身体をすり抜けてしまった。
『おーっと、ブリットの攻撃が当たらない!霧の様に相手の攻撃をすり抜けてしまう。サイガ得意のミストウォールだ。』
「すり抜けてしまうのにゃ。解説も便利だにゃ。」
「ブリットさん、そう慌てず、ゆっくり戦いを楽しみましょう。」
「ふむ、簡単にはいかないようですね。」