第119話 アバランパンダにゃ
俺とブリットはマーリンの神殿の直前で何とかマールに追い付いた。
妨害を抜きにしてもマールの動きは電光石火を使っている俺達と互角の速さであった。
しかも、まだまだ余裕を残している様に見える。
「中々、やるなにゃんこ!」
マールは爽やかな笑顔で汗一つかいていない。
俺達がマーリンの神殿に突入した時、マーリンはのんびりとお茶を飲んでいた。
「あら、にゃんこ、マールくん、競争?」
「やぁ、マーリン姉さん。」
マールは通り抜けるついでにテーブルに置かれたパイを取ると口に放りこんだ。
「にゃ!マーリン姉さんって?」
「あれ、知らなかったのかい。マーリンもサラスも俺の姉さんさ!」
そう言うとマールはさっき取ったらパイを放ってよこした。
「姉弟だったにゃ!」
俺はマールから受け取ったパイをほおばりながら呟いた。
「ちなみに次の神殿は一番上の兄貴さ。」
俺達はマールが最初の石畳の仕掛け以外、俺達に対して直接の妨害を行っていなかったことに油断していた。
パチン!
マールが指を鳴らすと同時に俺とブリットの足下の石畳が割れ落とし穴となった。
「にゃー!」
絶妙なタイミングで開いたら落とし穴に俺とブリットは見事に落ちてしまった。
「にゃんこ、お先に!」
マールはそう言うと先に走り去った。
「くそ、やられたにゃ!」
俺とブリットは素早く落とし穴から飛び出した。
しかしマールの姿は見えなくなっていた。
その間にマールはアバランの前にたどり着いていた。
「マール様、私に御用ですか?」
マールはいたずらっぽく笑った。
「今、にゃんこと競争してんのさ。」
そう言うとマールは筆を取り出すとアバランに迫った。
「マール様、な、何を!」
マールは、アバランの目の回りに黒く丸を書いた。
「悪いね、アバラン!」
そこに俺とブリットがたどり着いた。
「にゃんこ、筆を貸してやるよ!」
マールは、持っていた筆を投げてよこした。
「にゃ!」
「アバラン、しっかり抵抗するんだよ!」
マールは、そう言うと神殿に向かって走り去った。
「やばい、急ぐにゃ!ブリット、アバランを押さえるにゃ!」
「了解しました。御主人様。アバラン、悪く思わないで下さいね。これも試練をクリアするためなんです。」
「冗談じゃない、お前達にまで顔に落書きされてたまるか!」
「すまないにゃ。」
俺とブリットはアバランを二人がかりで押さえつけるとアバランの目の回りに黒く丸を書いた。
アバランの顔はまるでパンダの様だった。
「急いでマールを追うにゃ!」
俺とブリットはアバランをその場に残してマールを追いかけた。
一人取り残されたアバランは唖然とした表情で叫んだ。
「お前ら、いい加減にしろ!」