第118話 マールと競争にゃ
更に加速した俺とブリットはマールの横に並んだ。
「それが電光石火か結構速いな。」
マールは俺達に並ばれながらもまだ余裕の表情を浮かべていた。
「まだまだ速く走れるにゃ!」
俺は調子に乗ってマールの周りをぐるぐる回って見せた。
「御主人様、子供相手に大人気ないですよ。」
「それもそうだにゃ!」
「調子に乗ってると痛い目にあうぞ!」
マールが指をパチンと鳴らした。
同時に俺の目の前の石畳の石がはねあがり壁となった。
バチン!
「ぎゃふん!」
俺はギャグマンガの様に石にぶつかった。
「アハハハ!ぎゃふんだって。」
マールは大笑いをしながら俺達を置いて走り去って行った。
「御主人様、大丈夫ですか?」
「ひどい目にあったにゃ!」
「妨害OKってことはこう言うことも有りだったのですね。」
「ブリット、追いかけるにゃ!」
「了解です。御主人様!」
「いたずらっ子にお仕置きしてやるにゃ!」
「御主人様が先にからかったのては?」
「何のことにゃ?」
俺はまだまだ大人になれない少年なのだ。
その間にマールはサラスの神殿を走り抜けていた。
「やぁ、サラスの姉御!」
「マール、私の神殿をコースにするなと言っているだろう!」
「固いこと言うなよ。連中に道から外れられないとの誓約があるんだから仕方ないだろ!」
マールはそう言い残してサラスの神殿を走り抜けた。
マールが神殿を走り抜けた直後、俺とブリットがサラスの神殿に到着した。
「ハハハッ!どうした、にゃんこ、鼻が赤いぞ!」
サラスが笑いながら俺に声を掛けてきた。
「急がないとマールはもう先に行ったぞ!」
「分かってるにゃ!」
俺は鼻だけなく顔も赤くなった。
だがにゃんこだけに顔をおおった毛でばれることはなかった。
湖にたどり着くと何とマールは水の上を走っていた。
「何で水の上を走れるにゃ?」
マールの走りを見ると足が水を沈む前に抜き出すことを交互に繰り返している。
「あれで本当に沈まずに走れるのにゃ?って出来るか!」
「さて、にゃんこは湖を渡れるかな。」
湖を渡り終え後ろを確認するために立ち止まった。
振り返ったマールの目に入ったのは水面を走ってくる来人とブリットだった。
「あいつらも水走りが出来るのか!」
厳密には、来人とブリットは水の上を走っているのでは無かった。
来人とブリットは電光石火の電気を湖の水に流し気絶して浮いてきた魚を踏み台にして湖を渡って来たのだ。
マールと来人達の差は、徐々に縮まっている。
「やば、追い付いて来た。」
マールは慌てて走り出した。




