第110話 湖の船旅にゃ
綺麗なエメラルドグリーンの湖の桟橋に小さな白い船が浮かんでいた。
船と言っても帆もオールもない全体的に平たい感じの船である。
「誰もいないね。」
船の周囲に人影は無かった。
「この船、帆もオールも無いにゃ。」
「どうやって渡るの?」
マーリンの神殿からの道は桟橋で途切れていた。
空を飛ぶことはヨーザに止められたているので飛び越えることも出来ない。
やはり向こう岸に渡るには船以外に方法は無いのだろう。
「オーイ!誰かいにゃいか?」
とりあえず大きな声で呼んでみた。
ボコ!
湖面に大きな泡がたった。
「にゃんだ?」
ボコボコ、ザッー!
「呼んだかー!」
声と供に水面に巨大な亀が現れた。軽く水面に浮かぶ船の十倍はある。
大体、列車二両位の大きさだ。
「で、でけー!」
「あんたが次の試練の相手にゃ?」
「それは、違うぞー!この湖の渡し守。それが私!」
「じゃあ、あんたが湖の向こう岸へ渡してくれるのか?」
「船に乗るんだよー!甲羅に乗せていくんだよー!」
「ありがたい、助かるにゃ!」
「ありがとう!えーと…?」
「ノアルだよー!」
「ありがとう、ノアル!」
「どういたしましてだよー!」
俺達は船に乗り込んだ。
乗り込むとノアルは船を甲羅に乗せて泳ぎ出した。
「思ったより早いにゃ!」
ノアルはゆっくりとした速度で湖面を進んでいた。
「ノアル、次の神殿はどんなところなの?」
アリアが早速、情報収集を始めた。
「この先にはサラス様の神殿があるんだよー。」
「サラス様のどんな試練なの?」
「試練はいつも変わるんで知らないんだよー。それよりダーツフィッシュの群れが通過するんで注意するんだよー!」
「ダーツにゃ?」
俺は、ダーツというゲームを知っているだけ何か嫌な予感がした。
ピュン!
何かが、湖面から飛び出し、船の上を通過した。
「何だ!」
ピュン、カツン!
船の床板に何かが突き刺さった。
良く見るとまるでダーツの矢の様な形をした鯵位の大きさの魚だ。
「ダーツフィッシュってこれのことか。」
「でも、ノアルは群れって言ってたよね。」
次の瞬間、何百という大量のダーツフィッシュが船に飛び込んできた。
「あ、危ね!」
俺達は必死になって飛び込んでくるソードフィッシュの突撃を避けて避けて避けまくった。
「これがサラス試練なのか?」
修一が叫んだ。
「違うよー。ダーツフィッシュは俺が通るといつも驚いて湖面を飛んで逃げるんだよー。」
「だったら、船に屋根を付けろよ。危ねーだろ。」
「それもそうだ。考えたことも無かったんだよー。」
ノアルが群れの中を通過する間、俺達は飛び込んでくるダーツフィッシュを避け続けた。
「これ、喰えるのかな?」
船底に残っていたダーツフィッシュを片付けながら修一がつぶやいた。
「やめたほうがいいんだよー。昔、食べた人間がいたけど固くて歯が欠たんだよー。」
一時間ほどで湖の対岸に青いクリスタルで出来た神殿が見えてきた。
「あれがサラス様の神殿なんだよー。」