第108話 泉の部屋の死闘にゃ
部屋の奥の壁際に泉は湧いていた。
部屋の内部は以外と広く体育館程の広さがあった。
「あの泉の水を汲んで帰ればいいんだよね。」
「皆、気を付けるにゃ。罠が有るかもしれないにゃ。」
「来人は心配し過ぎなんだよ。」
「御主人様の力が有ればどんな罠でも平気ですよ。」
「そうかにゃ。」
俺は何か胸の奥でモヤモヤするものを感じながら泉にグラスを浸けて水を汲んだ。
別段、何も起こらない。
「ほら何も起こらないじゃない!」
「そうだにゃ。」
「やけに簡単な試練だったわね。」
「来人は心配し過ぎなのさ!」
しかし俺の心配は適中した。
泉を組んで部屋の出口に向かおうとしたところ部屋中に大量の魔物が発生したのだ。
しかも今度の魔物は先程まで出てきていた魔物の3倍は大きい。
更に部屋の出口付近には、それよりもっと大きいカマキリの様な魔物が陣取っている。
「あれは、キラーマンティス!」
「やっぱり、こうなったにゃ!」
「皆、グラスを持っている来人を守るんだ。」
修一が俺の盾となって魔物の中を進んで行く。
魔物の一体一体に俺達一人一人を倒す力は無かったが数が尋常ではなかった。
「キャッ!」
俺の背後で悲鳴が上がる。
「アリアが左腕に傷を負ったわ。」
切りつけた蟻の魔物から蟻酸を吐き掛けられたのだ。
「アリア、大丈夫にゃ!」
「私は、大丈夫、まだ右腕が動くから。」
「ブリット、アリアの援護をたのむにゃ!」
「分かりました、御主人様。」
俺はグラスの水をこぼせないため大きな動きが出来ない。
皆に守られて何も出来ないでいる自分が歯痒かった。
グラスの水守るため俺達は完全に動きを封じられてしまっていた。
それでも俺達はジリジリと出口に向かって歩みを進めた。
そして出口を守っているキラーマンティスの前にたどり着いていた。
「こいつを倒せば部屋から出られる。」
修一が一気にけりをつけようと日輪モードで飛びかかった。
しかしこの判断が誤りであった。
正に蟷螂の持つ凄まじく俊敏な動きでキラーマンティスは修一をその鋭利な鎌で捕らえたのである。
「修一!」
「俺は、大丈夫だ!来人はグラスを守れ。」
「いや、お前、大丈夫じゃにゃいだろう!」
キラーマンティスの鎌に捕らえられた修一はとても大丈夫に見えない。
更にキラーマンティスの牙が修一に迫る。
頼りのブリットもアリアのバックアップで動けない。
修一が殺される。