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Dearest  作者: イサム
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第2話 冷酷な男と誓いの美女

魔獣退治を終えたヴァンとエレハイムは森林を抜けて城塞都市フォレスへ向かっているところであった。


 森林から城塞都市までは歩いて3日間という距離でその間はただひたすら草原が広がっているだけであり2人は急ぐ必要もないんのでのんびりと歩いていた。

 天気は快晴であり風も強くもなく弱くもなくそよそよと眠気を誘うような温暖の気候に包まれており草原の草木が心地良さそうに揺れている。


「いいわね~。森の中は虫はいるわ暗いわ、なんかジメジメした空気で気分まで落ちちゃうもの。町の中は変な視線で見られるし草原の中で暮らしちゃいたいね~。ねぇ、そうしないヴァン? 2人でここにずっと一緒に暮らしましょう?」


 とエレハイムが後ろへ手を組んで少し前かがみになって上目遣いでヴァンを見上げる。

エレハイムは見た目美しい女性であり快活な性格な為こんな態度をとられたら普通の男性なら完全にノックアウトだろう。


だが、

「・・・俺もお前も目的があって町にいなければいけないんじゃないのか? 本気で言うなら置いていくぞ。」


 この男はまったく無表情で反応がなく、冗談もまったく通じなく最後の言葉も冷たい対応でさっさと足を進めて先にいく。美人なうえ性格もまったく良い女性など滅多にいないエレハイムに対してこの態度は滅茶苦茶失礼である。


 しかしこれでも言葉を返している時点でエレハイムに特別である事をエレハイムは知っている。だからエレハイムは言葉を返してくれている事が嬉しくて目を細めてとてもニコニコしている。すこしの間、先に行く彼の背中を見つめていると振り向いて


「さっさと行くぞ。」


 と声をかけてきて、また前を向いて歩いていく。・・・先ほどよりゆっくりした歩きで。

それを見るとエレハイムはまた嬉しくなりやさしく目を細めて少し弾んだ足取りで彼の背中を追っていく。

・・・あとには2人の背中を微笑ましそうに草木がそよそよと揺れていた。



 3刻ほど歩いた頃だろうか。今まで黙々と歩いていたヴァンが急に立ち止まった。

不思議に思い首を傾げてエレハイムが口を開く。


「どうしたの。ヴァン?」


少し沈黙してから

「前方にさらに1刻ほどの距離で複数の戦闘音がしている。」


 とエレハイムには全く音が聞こえない状況の中でヴァンが音が聞こえると呟く。

普通の人なら疑問をもつところであるがエレハイムは疑う方が間違っているかのように当然のようにヴァンを肯定した。


「そう。どうするの? 誰が戦っているか分かる?」


「ああ、声の状況からするに大人の女性3人と男性2が7人の山賊に襲われているみたいだな。」


とこの男、声まで聞き取れているらしい。

しかもそのセリフを聞いてヴァンよりはまともと思われるエレハイムは常識を破るセリフをかける。


「ふ~ん。大人の女性と男性と山賊なら別に助けなくてもいいわね。1刻もあればみんな殺されているだろうし、山賊がこちらに向かってきたら皆殺しにしましょう?」


「ああ、もとからそのつもりだ。助けるつもりもわざわざ山賊退治もするつもりもない。敵対したら皆殺しにするだけだ。」


 ヴァンの方は先ほど聞いたセリフからさも有りなんといった感じで驚きはしないが、優しい感じをうけたエレハイムまで『助けずに皆殺し』という常軌を逸した発言である。



 予定どおり1刻程歩くと少し草原の草木が空けた場所がありそこに行商人と思われる馬車が荒らされて置いてあった。先ほどヴァンが聞いた音はここで行商人が襲われていた音だったようだ。

 周りには血の跡が残っており商人と思われる男性2人と女性3人が血を流して倒れておりどうやら山賊はすでに去ったあとだったようだ。


ヴァンたちがそのまま進もうとした時に倒れていた女性に足を掴まれた。ヴァンが見下ろすと20後半の女性が胸から血を流しておりヴァンへ


「お願いします。助けてください。」


と懇願してきた。それを見たエレハイムは薄く笑い。


「そう、でも残念だったね~。」


と言い、女性は『えっ』という顔をした瞬間に

『グチャリ』

女性の頭が上から凄まじい力で一瞬で潰された。


潰れた原因を見るとそこには足を掴まれていたヴァンがそれがうっとおしいかの様になんの感慨もなく拳を女性の頭へ打ち下ろしていた。


その後ヴァンは何も無かったかのようにまた歩きだし、エレハイムも同様に一緒に付き添い歩き出す。


そのあとには無残な死体だけが残され、周りの土が風で巻き上がって死体と馬車を汚していった。



・・・エレハイムは知っている。ヴァンが人に対して何も感じず、殺そうが道端のアリを潰すかのごとくしか感じていないのが。だから普通に会話ができるエレハイムがどれだけ特別か知っており、その例外にあるのが一部の人たちがいる事も知っている。

ヴァンがそうなってしまった理由も。


それが痛々しくて悲しくてエレハイムはずっとヴァンの傍にいて彼を支えることを誓った。


・・・ずっと・・・ずっと傍にいる事を。


本日2回目の投稿です。

次は不定期になりそうですができ次第投稿したいです。

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