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ひかりの声が聞こえる  作者: 平凡
日常とその応用
33/34

クレイジー・ジョー

「ありゃこりゃまぁなんていうか…」

「豪邸?」

どかーん、という感じの、西洋風な家の前に車は止まった。

「あ、いや、そっちじゃなくて。」

林さんは人ん家の駐車場に車を止めたまま、すたすたと歩きだす。

天気は快晴で、少し日は傾きかけている。

「ほれ、ここ。」

林さんが左の手で指し示した家は、曲がり角に面していて…お世辞にも「普通の家」とは言えない、ここだけが他の家と違って正直ボロ屋だった。

「ありゃこりゃまぁなんていうか…」

「ボロ屋?」

「君たちちょっとそれは失礼すぎないかい?」

「だって、ねぇ…」

「本人の前ではそーゆう僕に対する態度みたいなの、やめてね。鈴木さん、ナイーヴなお方だから。」

鈴木さんというのか、というのと同時に、『それは結局お前も鈴木さんを馬鹿にしていないか?』という鷹霧くんの心の声が聞こえる。あ、やべ。ヘッドホン外さないとな。


「鈴木さーん?林ですー!」

インターホンを鳴らして玄関から呼びかける。玄関のコンクリだってひび割れてガタガタだし、インターホンだって間抜けな音が玄関まで聞こえてくる。

「あれぇ?いないのかなぁ?」

ピンポンピポンピンポーン!林さんがボタンを連打する。

「はーやーしーでーすー!」

物音一つしない。

「鈴木さん、人騒がせだなぁ」と鷹霧くんが言うのをちょっと見てから、林さんは私に、「悪いんだけど、ちょっと聴いてくんない?」と、ヘッドホンを頭につけるジェスチャーをする。

「一回百円ですよ。」

私はそう言いつつ、さっき外したばかりのヘッドホンを再装着し、耳をすました。


『…………どっちの林だろう?どっちの林だろう?』


「どっちの林だろう、っつってますよ。」ドヤ顏で報告。

「どっちって、どっち?」林さんは混乱している。

「知りませんよ。」とは鷹霧くん。

「まあでも、いますよ、鈴木さん」

「…そうだね、…入っちゃうか!」

空気がかたまる。鷹霧くんが『住居不法侵入住居不法侵入住居不法侵入』と心でつぶやいている。

…私に言えってか?いいよ、やってやんよ。その代わりにハーゲンダッツな。

「そうゆうのって、じゅ、住居?不法?侵入?住居不法侵入!みたいなのになるんじゃないですか?ヤバイんじゃないんですか?ねぇー?鷹霧くん。」

鷹霧くんの方を思いっきりドヤ顏で見る。爽快っ!

『あの野郎、ドヤ顏しやがって!!』って、聞こえてますよ?聞こえてますよー、鷹霧くん。


その時。家から小さく、

「オダギリ」と聞こえた。

なんだこれは。

林さんがとっさに、

「ジョー」と応える。

「あ、人の足音だ。」鷹霧くんがやや興奮しながら言う。聞こえてるっちゅーに。




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