鼓膜なんかとんでけとんでけ
「いやぁ、参っちゃったよ」
私なんでこの人のこの車にすっごく自然に乗ってしまったんだろう、とぐるぐるしていると、林はそう言った。
何の事だろう。
でもなんとなく今の言い方はマジメな話だったような。だとすれば、あまりいい話ではないのだろう。
勘弁してくれぇい!と思う。
ただでさえ訳わかんない事言われて混乱してるってのにまたなんか悪い知らせとか聞いたらホント、私のちっちゃな脳みそなんか簡単に爆発してしまうよ。
「この前さ、なんか水色のヘリコプター飛んでただろ?」
「ああー、朝にですよね。」
だからなんで私はこんな自然にこの変人としゃべってんだよ。まあもうこの際いいけども。
「あのヘリはさ、」
「あー!!言わないでください、言わないでください。無理無理無理無理」
「なんでさ」
だって、悪い知らせはやだし、しかもなんとなくは最悪な知らせである事は予想がつくもの。
「そーゆう事か。」
突如、鷹霧くんがつぶやく。何一人で納得してんだよ。
「JMBか。」
「あーもう!なんでそんな事言うの!馬鹿!」
耐えきれずについに口に出してしまった。いや、私だってそのJナントカコントカみたいなのを予想してたけどさぁ。ちょっとさぁ。
「いやー、最近の中学生は勘が鋭くていい子達だなぁ」
あー聞きたくない聞きたくない。いっそ聞いてたまるか。っていうかのんきすぎるだろあんた。
「ただ、も一個ヤバイ事があって」
「あーいいですいいです、もういいです。」
「黒石くんがまた逃げちった。」
赤信号で車が一旦止まる。
「え、それってヤバイんですか?」
「彼の体からはねぇ、僕たちの病気を治す細胞がみつかったんだ。」
え、治んの、これ。と私と鷹霧くんが同時につぶやく。
「で、彼がJMBにつれてかれると…」
あとはもう予想ができた。
「うわぁめちゃヤバイじゃないですか」
「そうなんだよね。しかも彼、自殺中毒みたいなとこがあるから、目立つ事目立つ事」
「じゃあどうするんですか?」
鷹霧くんがちょっとだけ前のめりになってたずねた。
「…もし、彼がつれてかれた時のために、こうして君たちを半分誘拐みたいな感じで連れてきたんじゃないか」
ははは、と林さんは笑ったけれども。
笑えねーし。てかそれどうゆう意味だ。