表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひかりの声が聞こえる  作者: 平凡
日常とその応用
24/34

世界は今日もランキング

鷹霧の部屋は412である。

なので、いつも階段で行こうかエレベーターで行こうか一瞬だけ迷う。一瞬。ほんの、一瞬。

結局いつもはエレベーターになるという例に外れず、今日も脳内鷹霧はエレベーターを選択した。

そのささやかな絶望。


30m程廊下を歩き、左折。

今日は4階にもうエレベーターがあった。

栗色のドアの向こうの鏡には、いざ乗りこまん、とす鷹霧の姿が写っている。

が、その時である。つまりは鷹霧が逆三角形のボタンを押す寸前に、エレベーターは無情にも上昇を始めた。

先ほどまで暖かな、とまで言ったら言い過ぎだけれども、とりあえず明るかった栗色のドアの向こうは暗黒が広がっている。


ちょっとしてから、エレベーターは再び降りてきた。

ただ今回は鷹霧だけの、エレベーターと2人きりの生活ではなく、毛なみの悪い馬のような色の鞄を持ったーおまけに顔色まで悪い、だいぶ頭の禿げあがったサラリーマンと一緒だ。勝手な想像だが、おそらく会社でペコペコと頭を下げ、その寂しい頭頂を晒しているのだろう。

なんて、何様貴様も激しい推測をしていたら、あっという間にエレベーターは1階に着いた。

無言で鷹霧が「開」ボタンを押すと、一瞬驚いた顔をして、眉が上がって、朗らかな感じのおじさんになったが、またすぐ顔色悪く、「ごめんね」とだけ言って花瓶を倒した後の猫のように、すばやく、逃げるように立ち去った。

やれやれ、とエレベーターから出ると、「あ、しまった。」と思った。正確には、思わされた。

というのは四谷よつやがゴミ捨て場の前で既に立っていたからで、何故四谷が立ってちゃいけないのかというと、鷹霧と四谷は「どっちが相手より先に待ってるか」という馬鹿馬鹿しい遊びを一年生の夏休み明けぐらいからやっている訳で。特に最近10月を抜けて冷えこんできてからは鷹霧の勝ちが増えていて、今日まで5連勝だったからで。

鷹霧がいかにも「ちきしょう」という顔でロビーのドアを開けると、四谷はその長い睫毛でニヤリと笑った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ