嘘も方便
ヘッドホンを外す。こうゆういわゆる「心理戦」みたいのは得意じゃない。
真っ白な状態で受けて立とうじゃないのよ。かかってこい!
嘘嘘。大嘘。頼むから、こっから先の「Bの話」ってのを言わないでほしかった。実のことをいうと、つばめはずっと耳を塞いでいたかった。
でも林は言うんだ。悠長にカフェオレなんかすすりながら。
「それで、なんだけど。あ、Bの話ね?中学生を前に、主人公達を前に言うのもアレなんだけど。
・・・なかなかブラックな方々に追われてんのよ。僕。」
「 ・・・え?!」とあたかも鳩に豆鉄砲みたいなリアクション私今してるけど。
まぁ、おクスリの事なのかな?と。納得できる捌け口があっちゃうから怖い怖い。
「で、そのブラックな方々の正式名称ってのが・・・『世界希少精神病捜査機関』っつうやつの日本支部で。」
お決まりのパターンだ。映画とか、ドラマとか。「メン・イン・ブラック」で例えればエディーマーフィー達があっちで、こっちはエイリアン。
鷹霧が思いっきり能面のような無の表情をしている。気を失わないか心配。
「で、なんでそんな物騒な方々に追われてるかと言いますと。・・・あ、進化薬は関係ないよ?」
え¨。うっそだぁ!
「軍隊ですか?」
真横から声。鷹霧だった。林が補足する。
「ビーンゴ。そう。そいつらは、俺らをとっ捕まえて、戦争に使いたいワケ。」
こめかみが動いたのが自分でもわかった。
あれ、日本ってこんなにこわい国だったっけ?
「でもってそいつらも」と鷹霧が汗をこぼしながら言ったところで。嫌な予感がした。背中を冷たく汗が通る。
「患者さん?!」嘘であってほしい。なんか、もう泣きそう。
ニヤッと林が笑う。「いや、ちょっ、あんたソレ笑い事じゃないから。」思わず泣き声になる。
心臓が高鳴っていた。悪い意味で。