熟した後は腐るだけ
ぼりぼりと頭をかきながら、林はたった今自分で運んできたカフェオレを一気に飲むと、部屋の奥の方に消えた。
つばめはほっ、と息をはいた。疲れた。
それに合わせるかのようなタイミングで、鳩時計が鳴く。0:00。
鷹霧はぼけっと、そしてじいっとカフェオレを見ている。どうやら東京に演劇を観に行った親を心配しているらしい。
えらいわねぇ。彼は今までで何回こう言われたんだろう。私の何倍だろう。
林が戻ってきた。
「Aの話とBの話、どっちがいい?」
「AもBも何も、選べと言われても困ります。」
鷹霧が至極真っ当な抗議をする。だけども、さ。
「Aはクスリの話。Bは敵の話。」
私はココロが読めるってことを忘れないでほしいな。
ん、いや待てよ?あいつの神的な脳だ、さりげなく私を避けようとしたのか?え、ひょっとして・・・嫌われてる?
北川つばめ。名前は割と簡単で、16画しかないのに、やたらと物事を複雑に考えようとする。その上中途半端。私の悪い癖だ。
会話は続いている。
「大したことないのは?」
「・・・クスリかなぁ?・・・うん、クスリだね。じゃあクスリの話からしようか。」
そう一方的に言うと、林はポケットからフリスクケースのようなものを出した。