6話 ついにもふもふです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。楽しんでいただけていたらうれしいです。
揺られること数十分。
いつも薬草を取っている場所に着いた。
「すごいな!いつもなら一日かかるのに」
「サハラをなめてもらっちゃ困る」
俺が褒められたわけじゃないがうれしいのでとりあえず威張っとく。
この薬草、コツをつかんだら簡単なのだが失敗すると大変なことになる。
そう、モンスター化するのだ。
まず、このバンジーのような薬草を見つけたら花弁を切り落とす。
受付のお姉さんが言うには薬になるのは根っこの部分らしい。
簡単に言ったもののこの作業が一番難しい。
というのも、この花弁をすこしでも残したらモンスター化してしまうのだ。
花弁は三枚。
とりあえず、二枚は切り落とせた。
最後の一枚。
花弁にはさみをかける。
「うああぁぁぁ!!!」
はい、失敗した。
コイツはモンスター化をすると自分で土から出てきて追いかけてくる。
なので、ダッシュで逃げる。
追いつかれるとかまれるのでそれはもう猛ダッシュで逃げる。
すこし追いかけっこをしていると見かねたサハラさんが助けてくれる。
サハラはちょっと走っただけで俺のところまで来てパクッと一口でモンスター化した薬草を食べてくれる。
かっこよすぎ。
それを見ていたアベルが俺に近づいてくる。
「なるほどな、お前やけに手ぶらだなと思ったらそういうことか」
「サハラがいれば装備とかいらないんだよね」
ちなみにアベルがガチガチ装備なのもこの薬草のモンスター化に備えて買いそろえたものらしい。
これのためだけに。
まぁそんなことは置いておいて、そろそろ薬草を入れるために持ってきた袋がパンパンになるところだ。
あればあるだけ稼げはするが取りすぎないでほしいとギルドから言われているし今日はこのあたりにしよう。
「アベルー!そろそろ引き上げるぞー!」
「おっけー!」
少し遠くにいたアベルが返事をしたのを聞いてからサハラに荷物を載せる。
荷物と言っても薬草が入った袋なので大した重さではない。
アベルもサハラのところへ帰ってきたので二人でサハラに乗り込んで街に帰った。
街までの道はモンスターが出ることもあるらしいが俺は見たことがない。
噂では、小さいゴブリンや気色わるめのスライムなど低級モンスターが出るらしい。
まぁただ、アベルよると夜に出やすいから気にすることはないと言っていた。
モンスターついてアベルと話しながら帰っているとあっという間に街に戻ってきた。
今は夕方に差し掛かるほどの時間だ。
とりあえず、薬草をギルドに持って行って少し買い物をしたらすぐに帰ろう。
そりゃ、サハラがいたら怖いものなしだが気色わるめのスライムは見たくないし。
と、いうことで買い物をするためにこの前キャベツ的な野菜を買った店に来た。
ここで買ったキャベツ的な野菜はまんまキャベツだった。
街をぐるっと回って一通り食料を調達することができたのですぐに帰る!
もう、空は赤い。
このままだと、帰っている途中に夜になってもおかしくはない。
アレンさんのところに急行してサハラに荷物を載せた。
今日は重いものばかり乗せてしまって申し訳ない。
だが、それはそれ、これはこれとして今は急いで家に帰らなくては。
いくらサハラでもゴブリンはパクッとできないと思うのでもし出てきたら俺が戦わないといけない。
無理!絶対に無理!
せっかくの異世界転移が低級モンスターのゴブリンに殴られておしまいは絶対に避けたい。
大丈夫、俺はトラックだって転移で回避したんだ。
この豪運があれば俺はモンスターに会うことはないはず!!!
「うあああぁぁぁあ!!!!!」
はい、フラグ回収。
俺はサハラに乗ってるからこの時点で悲鳴をあげなくてもいいんだがゴブリンがグロすぎて叫んだ。
深緑でザ・モンスターみたいな感じのゴブリンが五体ぐらいいる。
一匹はサハラが後ろ足で蹴り飛ばしてくれたがまだ四体もいる。
俺が下りて戦うしかないのか?
てか、めっちゃ足早いな!
サハラについてこれるとか早すぎるだろ!!
俺が倒すとか無理なんだけど!降りたら死だよ!
すると、後ろで何かが倒れた音がする。
サハラも止まる。
何かと思い後ろを振り向くとゴブリンがすべて倒れていた。
「なにこれ......?」
倒れているゴブリンの近くには紫色の水のようなものが溜まっていた。
なんかやばい色してるから絶対、水じゃないけど。
サハラは倒れているゴブリンに近づき、頭をかじる。
吐きそうなぐらいグロかったが、まぁサハラが嬉しそうに食べていたのでよしとする。
はじめてサハラのモンスターとしての片鱗を見た。
後日、モンスターに詳しいアレンさんに聞くとこれがサハラの狩りらしい。
蹄から毒を出して獲物を毒漬けにして喰う、怖。
俺が愛されスキル持ちでよかったと思った。
まぁそんなこんなあって家まで帰ってきた。
ちなみにサハラは毒漬けゴブリンを一体持ち帰ってきていた。
サハラがうれしそうなのでよしとする。
今日は叫びすぎて疲れた。
サハラのための野菜を切って、毒漬けゴブリンの横に置いておいた。
もう、今日は寝る。
明日は気色の悪いモンスターに会いませんように。
ウェルカム、もふもふ。
そう思いながら眠りについた。
朝、起きて着替える。
あさごはんは節約のために食べていない。
そこまでは、いつも通りだった。
家のそばにでっかいもふもふわんこが倒れてなければ。
「寝てる......?」
俺には最強の愛されスキルがついているが、使う前に攻撃されてしまったらコロッと死ぬので慎重に近づく。
白と銀のきれいなグラデーションのわんこ。
よく見ると前足に二本、矢が刺さっていた。
「え、怪我してんじゃん。」
やばい。そう思ったのでとりあえずうちに運び入れる。
ふつうの大型犬より少し大きいので苦戦したが、本当にドアの真横ぐらいに倒れていたので何とか入れることができた。
動かないがぬくもりとたぶん心臓が動いているのを感じるので生きてはいる。
俺は獣医じゃないから適切な処置かはわからないが矢を抜いて血が止まるようにタオルを傷口に当てた。
何十分かして矢も抜けたし、血も止まった。
だが、わんこは起きない。
「あ、そういえば」
もしもの時のために薬草を持って帰ってきていたんだった。
あれは、ポーションにするための薬草らしいが一応薬草のままでも使えるらしい。
物知りおじさんのアレンさんが言っていた。
薬草の根っこの部分をすって粉々にする。
それを患部に塗って包帯を巻く。
これで完成なはず。
これは緊急の使い方として使われるからポーションよりは効果が薄いらしい。
街でポーションも買ってきてあげないとな。
このまま直に床に寝かしとくのもかわいそうなので俺の少ないお給料で買ったブランケットを床に敷いてその上に寝かせてあげた。
上にかけようかと思ったがもふもふだし床に敷いてあげたほうがいい気がした。
一応、サハラの様子も見に行ったが怪我はしていないようだった。
ついでに野菜が入っていたボウルを回収しておこう。
......?
今、なんかちらっと見えたぞ。
サハラの後ろ。
濃い緑が見えた。
まさか、またゴブリン?
覚悟を決めて、サハラの後ろを見てみる。
そこにいたのは四体の
毒漬けゴブリン。
「増えてる......」
当の本人は気にせずのんびりしていた。
解せぬ。
解せぬがサハラがかわいいのでよしとする。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次も読んでいただけると嬉しいです!