12話 もふもふLOVE
ここまで読んでいただきありがとうございました。この話も楽しんでいただけたら嬉しいです。
「解釈違いです!!!」
動物がしゃべったり普通に二足歩行で歩くのは解釈違い!
たまに、動物がしゃべったらかわいいんだろなとは思うが本当にしゃべるのは違う!!!
目の前のキツネは何言ってんだコイツという顔をしている。
俺は、何しゃべってんだコイツと思っている。
しかもコイツ、俺のかわいいかわいい羊たちを売れって言ったか?
俺のかわいいもふもふの子たちを売るわけないだろ。
「羊たちは売れない。」
「一匹当たり、10金貨二百枚で買う。」
10金貨は金貨十枚分の価値がある。
それが二百枚。
つまり、日本円にすると2000万。
物価などは元の世界とあまり変わらないので本当にそのくらいだろう。
だが、俺はいくら金を積まれてもあの子たちを売ることはない。
あんなかわいい子たちがいなくなってしまった暁にはショックで三年は何もできなくなってしまうかもしれない。
「いくら積まれてもあの子たちは売れない」
「じゃあ、羊毛ならどうだ?」
羊毛か、確かにちょうど売るところには困っていたが.....
「いい値で買う。一匹当たりの羊毛で10金貨3枚でどうだ?」
30万.....
相場が分からないな。
ここにいる羊たちは10匹前後。
10匹で計算すると300万。
悪くないのかもしれないが、どうするか。
かわいいあの子たちの毛だ。
得体も知れないキツネに売っていいのか。
「お前、そもそも誰なの」
「俺は、ハル。商人だ。」
「商人なんだ」
「あぁ、他国への輸出とかまぁいろんなことをしている。」
なるほど、それで羊毛を。
気になることはひとつ。
「なんでお前はしゃべるんだ?」
「まぁ、いろいろある。」
「いろいろって.....」
動物がしゃべる現象をいろいろあるで済まさないでほしい。
「旦那の名前は?」
「啓介だ。そっちの大きい狼のはきょう。」
「啓介か。よろしくな、啓介の旦那!」
「まだ、取引するって決まったわけじゃないんだけどな.....」
ハルから持ち掛けられた取引を受けるかを考える時間をもらった。
次の他国への輸出が近頃あるらしく、早めに決めてほしいとのことだった。
とりあえずの猶予は三日。
この期間でハルと取引をするか決める。
だが、正直取引をするところも決まっていなかったし300万も入ってくればあの子たちのご飯ももっとグレードアップできるだろう。
それに、ほかの動物たちを飼い始めて本格的に牧場にしていくことも可能になるだろう。
そう考えるとハルとの取引は素晴らしいものだ。
だが、懸念するところがいくつかある。
一つは、あの羊たちが絶滅しそうな子たちだということ。
いわば、レアな素材を他国にまで出せば今、自然に暮らしている子を危険にさらすのではないかということ。
まだ、いるとわかれば探し回る連中はいるだろう。
探し回るとか飼うとかならまだいいかもしれないが、殺して羊毛を取るなんて絶滅を早めるだけだ。
俺のように羊たちを飼って、羊毛をもらうなんてことはできないのだろうか。
もしかしたら、俺は愛されスキルのおかげで触れ合えているだけなのかもしれない。
まぁ、どちらにせよあまり広めていいものではないかもしれない。
うーん、どうしたものか。
あれから三日。
今日、ハルが俺の決断を聞きに来る。
あれから、街に出て羊毛のことについて聞いてみたがすべての店で幻級の物だと言われた。
いい値で買い取ってくれるかもしれないが、羊毛が広まることは避けられないだろう。
今日、ハルに一部の客だけに出して羊毛を広めないように掛け合ってみる。
無理そうなら、この子たちの羊毛は売らない。
羊たちの毛を刈りながら考えているときょうが近づいてきた。
俺をじっと見つめてから三日前、ハルが現れた茂みを見た。
ハルが来た。
俺は、羊の毛を刈るのをストップしてきょうが案内してくれるほうに進んだ。
きょうが立ち止まった茂みの近くを見てみるとハルがいた。
しゃべらなければ普通のキツネにしか見えない。
「旦那の決断を聞こうか」
「ハルと取引しよう。」
「本当か!?」
「だが、一つ。
条件がある」
ハルが真剣な顔になる。
「この子たちの羊毛はすごく希少だ。
まだ、この子たちが自然にいると知れ渡ったら狩りによってこの子たちは減ってしまうかもしれない。
羊毛が知れ渡らないようにしてほしいんだ。」
「なるほど、旦那が言ってることはわかった。
そうだな、ちょっと待ってくれ。」
ハルはそういって考え込んだ。
いいやり方があればいいが、難しいだろう。
少しするとハルが口を開いた。
「一部の限定した人にしか売らない。
これでどうだ?」
「その売った人から広まっていかないか?」
「俺の信用できる客にしか売らない。
その客にも旦那から仕入れていることは言わないし、まだ羊たちがいた時の物だと言ってもらう。」
確かに、それなら広まらずに売れるだろう。
ハルを信用してみるか。
「わかった。取引成立だ。」
「ありがとな、旦那。早速、5匹分ほしいんだが、行けるか?」
「あぁ、明日取りに来てくれ。それまでに終わらせておくよ。」
「わかった。助かるよ、旦那」
次の日、刈った毛を五匹分ハルに渡し150万稼ぐことができた。
そのお金で、羊たちの食べている草をアップグレードした。
ついでにソファも買って家の中に置いた。
が、きょうが気に入ったのか俺はあまり座れていない。
サハラのご飯もバリエーションを増やした。
本格的に暑くなってきたので、サハラの小屋と羊たちの柵の中にある小屋に魔法石で動く扇風機を導入した。
水遊びをしたり、残りの子の毛を刈ったりして暑さ対策を進めている。
最近あまり、ギルドに顔を出せていない。
アベルは元気にしているだろうか。
まぁ、あいつのことだから心配しなくても元気だろう。
最近、やっといろいろ落ち着いてきたので動物用のブラシを買ってみた。
きょうに使ってみたが思ったより毛が取れる。
三回、ブラッシングするだけで毛がたくさんつくのでゴミ箱の近くでしかブラッシングできなくなってしまった。
きょうが気持ちよさそうにしてくれるのでうれしい。
羊たちにも使ってみたが羊たちも気持ちよさそうにしてくれるので気づいたら何時間かとけていることもざらにある。
落ち着いてきてしたいことをもう一つすることもできた。
それはきょうやサハラ達を洗うことだ。
きょうや羊たちは頑張って俺がいつも入っているお風呂で洗ったがサハラはそういうわけにもいかない。
なので、サハラは川の近くで洗った。
泡を川に流すわけにはいかないので川には入っていない。
ちなみに、一番嫌がったのはきょうだった。
川には入っていたので泡が好きじゃないんだろう。
かわいい。
そんな感じで、したいことは大体できたのでやっと一息つける。
と、思っていた。
トラブルが舞い込んできたのは二日前。
家に何人かの男女が来た。
それは、この世界で最初に会った勇者になった高校生たちだった。
首都で剣術の基礎などを学んでから出発したらしい。
俺が勇者パーティを抜けるとき援護してくれた男の子は優斗くんというらしい。
優斗君たちは、近く街に来て興味本位でギルドに寄ったらしい。
すると、ギルドで誘拐事件の話を聞いたそうだ。
場所もなんとなく特定できているらしい。
助けに行きたいが自分たちの戦力では心配になりギルドの人にいい人がいないか聞いたらしい。
そこで、あげられたのが俺だった。
ということらしい。
なので、一緒に助けに来てほしいと。
ギルドにいた人はなぜ、俺を指名したのだろうか。
まだランク全然下だったはずなのに.....
誘拐事件とか怖すぎるが、断ったら後悔すると思いこの話を受けた。
だが、俺が戦えるわけじゃない。
きょうに頑張ってもらうしかない。
どうしたものか。
とりあえず、俺のことを勧めたギルドのやつを呪う。
読んでいただきありがとうございました。
次も読んでいただけると嬉しいです




