11話 もふもふへの解釈
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羊を迎えてから、二か月。
変わったことと言えば、家に風呂をつけたことだろう。
今までは街にある銭湯的なところに行っていた。
ちなみに、今回もラズさんに頼んで作ってもらった。
あと、変わったことと言えばちょうどよかった気温が暑いと感じるようになった。
といっても、夏のような暑さではなく動くと暑いなと感じるほどだった。
羊たちは一匹一匹には名前を付けず、ボスの子にだけそのままボスと名付けた。
ラズさんが作ってくれた柵は広すぎず狭すぎず過ごしやすそうだった。
羊たちを飼い始めてから、肉食系のモンスターがやってくるようになった。
だが、それらはきょうが追い払ってくれているらしくまだ被害は受けていない。
羊たちときょうはいつの間にか仲良くなっているらしかった。
たまに、きょうが羊たちの柵に入って遊んでいるのを見かける。
アレンさんによると、羊たちはリーフィという葉っぱを好むらしい。
サハラと探しに行くと羊たちを見つけたあたりで大量に見つけたのでサハラの散歩がてら取りに行っている。
毎日、結構な量をあげているのだが柵の中に生えている草なども食べている。
食べる姿もかわいい。
さて、そろそろ動かなきゃな。
俺は今、ボスをモフりながら幸せをかみしめていた。
さっき言った通り、最近気温が上がってきている気がする。
サハラ達もバテるのが早くなってきた。
いつもの感謝も込めてきょうと川に遊びに行こうかな。
あそこの水は冷たいし、気分転換にもなるだろ。
よし!そうと決まればすぐ行こう。
俺はボスをモフるのをやめて自分の家に向かった。
おそらく、きょうは冷たいフローリングの上でごろごろしているだろう。
「きょう!遊びに行こう。」
玄関のドアを開けて、家の中に叫ぶときょうがキラキラした目でこちらを見ていた。
かわいい。
サハラを小屋から出している間も俺の足元でくるくる回っていた。
しっぽをぶんぶん振っている。
サハラと一緒に川に向かっている最中もずっと楽しそうな顔をしている。
行く前からこれだけ楽しそうにしてくれるとこちらもとてもうれしい。
「着いた」
ここは、サハラと最初に会った川だった。
普段から生活用水として使っている。
さすがに、殺菌してから使っているがさすが生活用水に使えるだけはある。
川の底までばっちり見えるほどの透明度だった。
そんなに大きくはなく小川といった感じだ。
川遊びをするにはすこしばかり小さいかもしれないが、まぁ遊んでいたら気にならないだろう。
そう思いながら、川を眺めていると俺の横から飛び出したきょうが勢いよく川に飛び込んでいった。
深さもあまりなく、きょうのお腹が川につかるかつからないかぐらいの深さだ。
バウッ!
きょうが楽しそうに吠えている。
俺も、川に入ろ。
「今日は、遊ぶために来たんだから楽しまないとな。」
ズボンの裾をまくって川に足を入れてみる。
思っていたより冷たくてびっくりしたが冷たすぎはしない。
本当にちょうどいい温度だった。
これなら定期的に涼みに来てもいいかもしれない。
バシャ!
突然、水がかかった。
横を見ると楽しそうな顔をしているきょうがジャンプをした。
バシャ!
水がはねて俺に結構かかってる。
「今日は濡れないつもりだったのに、やったなこのやろ!」
俺はそういいながらきょうに水をかけ返した。
きょうも俺にやり返す。
ちらっと横目でサハラのほうを見ると川の近くで座って寝ていた。
かわいいな。
そう思っていると、顔に水がかかる。
きょうがドヤ顔でこちらを見ていた。
「やったな!くらえ!」
俺も負けじと水をかけ返す。
帰るころにはお察しの通り、びしょぬれになっていた。
サハラさんがびしょぬれの俺を背中に乗せてくれるはずもなく、
俺は徒歩で帰る羽目となった。
まぁ、きょうと遊ぶのは楽しかったけど。
一回、サハラのほうに水を飛ばしてしまったときは焦った。
土下座の方法を何回か考えるほどには焦った。
だが、サハラに水がかかってしまった様子はなく俺は命拾いした。
きょうは帰ろうといっても帰ろうとせず、また来ようと言ったらしぶしぶ帰り道に来てくれた。
今はもう気にすることなく、楽しかったとでもいうようにピョンピョン跳ねながら帰っている。
楽しんでくれて何よりだ。
今回は、いつも羊たちを守ってくれているお礼もかねて遊びに来たのだから。
俺は、帰ったら風呂に入らなきゃ。
きょうは体を振ってほとんど乾いていたようだが、俺はまだ、絞ったら服から水が出てくるくらいには濡れてしまっている。
風邪をひくのは勘弁願いたい。
いろいろ、できなくなると困る。
あ、明日あたりで羊たちの毛を切ろうかな。
結構なもふもふ具合でだいぶ暑そうにしていたから。
熱中症になってしまってはかわいそうだ。
もう少しで、家に着くだろう。
やっぱり、サハラの協力がないと遠いな。
いつも感謝しなきゃな。
サハラと行ったらこの時間の半分で川まで行けるだろう。
うちの子はかわいくて頼りになってかっこいいのか。
最高だな、うちの子は。
昨日は家に帰ってから、ちゃんと風呂に入って体をあったかくしたはずなのに。
のどが痛い。
動けないほどではないが、まぁ軽い風邪だろう。
動物たちにはあまり近づかないほうがいいのだろうが、羊の毛は刈る。
俺は、ハサミを手に羊たちの柵に近づいた。
この世界にはバリカンはないので、ハサミで。
皮膚を切るといけないのできれいに切ることが目標ではなく、安全を目標に行こうと思う。
だから、まぁすこし毛は残るかもしれないが今のもふもふボディよりかは暑くないだろ。
柵の中に入ると俺がハサミを持っているのにもかかわらず近寄ってくる。
警戒心はゼロらしい。
やりやすくてありがたいが、この子たちが絶滅しそうな理由が分かった気がする。
まぁ悪いのはこの子たちではなく人間なんだけど。
適当にボスを捕まえてむぎゅっと足で動かないように挟む。
おとなしくしてくれているのでそのまま慎重にハサミを入れた。
羊を切らないように1cm~2cmくらい残して毛を切っていく。
毛は切っても少し発光したままだった。
慎重に、背中や足の毛を切っていく。
顔周りは怖すぎるので今回はやめておく。
ボスの毛を切り終わったころにはたくさんの毛が取れていた。
この毛は高値で売れるらしい。
まぁ、殺したわけじゃないし嫌がってたわけでもないし売ってもいいかな。
この子たちの食費にもあてるし。
お金は大切だと思う。
そう思いながら毛を袋に詰めた。
次の子に取り掛かろうとすると
バウバウッ!!
ときょうの声が聞こえてきた。
いつもの肉食のモンスターだろうか。
いや、でもきょうがこんなに吠えてるのは聞いたことがない。
まずいかもしれない.....!
俺は急いできょうのところに向かう。
何かあったら大変だ。
走ると、風邪気味の体がつらかったがそんなこと気にしている場合じゃない。
きょうは柵から少し離れたところにいた。
きょうの向かいに立っているのはもふもふのしっぽのキツネ。
群れではなく、一匹でいるようだった。
見た目はヤバそうではないが、きょうみたいなパターンかもしれない。
油断はできない。
サイズは普通のキツネと変わらなそうだ。
もふもふだ。
かわいい。
いや、違う、警戒しないと.....
狙いは何だ?
やっぱり、羊たちか?
きょうはまだ警戒を続けていて今にも銃を出しそうな勢いだ。
キツネがゆっくりと近づいてくる。
そして、口を開いた。
「旦那、あの羊を俺に売ってくれねぇか?」
キツネがしゃべった。
男性の声だった。
もふもふでかわいいのに、しゃべった.....?
「しゃべるのは解釈違いです!!!!」
読んでいただきありがとうございました。
次も読んでいただけると嬉しいです。




