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第48話 革命のその先へ

 パルメリア・コレットが初代大統領として率いる共和国は、模索しながらも着実に前進を続けていた。貴族制度が完全に消滅したわけではなく、各地には腐敗の名残がくすぶっている。それでも、人々はかつての恐怖から解放され、自由に声を上げられる社会が動き出したことで、新たな希望を抱き始めていた。


(道のりはまだ長いけれど、誰もが自分の力で国を動かそうとしている――これこそが、革命の真の意味だわ)


 国中では改革の芽が育ち、村ごとに小さな学校が設置され、市民が主体となって公共施設を整備する動きも加速している。パルメリア自身も山のように積まれた書類に目を通し、議会の意見をまとめながら法整備に尽力していた。

 クラリスは科学と医療の推進を加速させ、レイナーは国外との外交に奔走。ユリウスは国内の治安を守り、ガブリエルは軍の再編に力を注ぐ。それぞれが自分の役割を全うするなか、パルメリアにもようやく少しの余裕が生まれ、静かな笑みをこぼす瞬間が増えていく。


「大統領閣下、中央広場で新議会の開会式を祝う行事が行われるそうです。ご出席なさいますか?」


 秘書の控えめな問いかけに、パルメリアは口元を微かに緩め、「もちろん」と即答した。混乱を乗り越え、民衆が自ら築き始めた新しい政治。その幕開けを、この目で確かめたいと思わずにはいられない。

 執務室を出ると、廊下の先には書類の束を抱えたレイナーが立っている。穏やかな笑みとともに声をかけてきた。


「パルメリア、いや、大統領。外に出るなら、ガブリエルに警護をお願いしよう。ユリウスはもう広場で市民の誘導を始めてるんだ」


「ありがとう。みんながしっかり動いてくれて、本当に助かるわ」


 疲れは溜まる一方だが、仲間の支えを感じるたびに、パルメリアの胸には感謝の気持ちが湧き上がる。どんなに大きな仕事でも、彼女は決して一人ではない――その想いこそが、彼女の原動力だった。

 今では全国から「彼女の改革を手伝いたい」という声が上がり、「傲慢な貴族令嬢」と呼ばれていたパルメリアが、実は誰よりもこの国を想い、愛している人物だと、多くの人々が気づき始めている。


 広場に足を踏み入れると、色とりどりの旗が風に揺れ、大勢の市民が詰めかけていた。「自由」「平等」といった新時代を象徴する言葉が掲げられ、子どもたちは輝く瞳で空を見上げ、農民や職人は笑顔で手を振る。

 本来、今日の行事は新議会の開会を祝うためのもので、パルメリアが演説を行う予定はない。しかし、彼女の姿が見えると、人々は惜しみない歓声と賞賛を送ってきた。


「大統領万歳!」

「パルメリア様、改革をありがとう! 私たちの暮らしが本当に良くなってきたよ!」

「誰が『傲慢な貴族令嬢』だって? もう過去の話さ!」


 そうした声が飛び交うたび、パルメリアの胸には熱いものが込み上げる。もちろん、腐敗が完全に消え去ったわけではないし、地方にはまだ課題が山積みだ。けれど、何より大切なのは「人々が自分の意思で国を動かし始めた」ということ――彼女はそう確信している。


「私たちは、ようやく新しい歴史の一歩を踏み出したばかり。先の道のりが楽だとは言えないけれど、みんなが力を合わせれば……」


 そう思いながら、彼女は広場を見渡す。ユリウスは市民と穏やかに言葉を交わし、ガブリエルは警備兵たちに威厳を保ちつつ柔らかな眼差しを向けている。レイナーは大量の書類を抱えたまま市民の質問に応じ、ロデリックは人混みに溶け込みながら新体制の行く末を見守っていた。

 パルメリアはその光景をしばらく見つめ、静かに目を伏せる。


(いろいろあったけれど、この国は変わり続けている。今、みんなが自分の力で立ち上がっているんだ……)


 晴れ渡る空の下、高らかに鳴り響く祝賀のファンファーレ。人々の声が波のように広がるなか、新しい時代がいよいよ本格的に幕を開けようとしていた。

 パルメリアが願う「より優しく、より輝かしい明日」へ向けて、無数の想いが一つに重なり、今まさに動き出そうとしている。

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