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【プロトタイプ版】悪役令嬢、理想を掲げて ~破滅の運命を超えて、彼女は革命を目指す~  作者: ぱる子
第六章:共和国の誕生

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第46話 揺るぎなき誓い

 大統領就任からしばらく経ち、共和国の体制がようやく安定の兆しを見せはじめた頃。夜も更けた執務室で、パルメリアは書類に目を通していた。すると、扉を叩く控えめなノックが響く。

 小さく揺れるランプの光の中、かつて護衛騎士だった男――今や国防軍司令官として重責を担うガブリエルが静かに姿を現した。


「深夜に申し訳ございません。……国防軍の配置状況をご報告に上がりました」


 淡々とした口調とは裏腹に、どこか緊張を含んだ声。パルメリアは手元の書類を脇へ置き、椅子から立ち上がる。いくら寡黙(かもく)で真面目な彼でも、ここまで表情を硬くするのは珍しい。


「ご苦労さま。……何か問題が?」


 彼女の問いかけに対して、ガブリエルはわずかに息をつき、ゆっくりと頭を下げた。その仕草は、かつて夜更けの執務室で誓いを立てた時と同じ――だが、今はさらに深い決意を宿しているように見える。


「いいえ。国防軍の再編は順調ですし、警備隊との連携もうまくいっています。ただ……どうしても、パルメリア様に改めて伝えたいことがありまして」


 まっすぐな言葉に、パルメリアの胸が(かす)かに高鳴る。ガブリエルは視線を外さず、意志のこもった瞳で彼女を見つめていた。


「パルメリア様と出会ったからこそ、いまこうして自分の正義を貫けています。新しい国を守るための盾であり、剣であり続けたい。それが、私の揺るぎない誓いです」


 短い言葉に秘められた真情が、強く胸を打つ。パルメリアはその率直さに一瞬息を飲み、視線を伏せた。自分が率いる「共和国」が、彼にとっての生きる意義になっていると、改めて感じる。


「ここまで苦労して、ようやく国が落ち着いてきたわ。でも……先はまだ遠い。私も、あなたも、どれほどの困難が待ち受けているのかわからない」


 彼女がそうつぶやくと、ガブリエルの口元にほんの少し笑みが浮かぶ。その慎ましやかな表情には、言葉以上の力が宿っていた。


「たとえどんな試練があろうとも、私は決して退きません。パルメリア様がこの国を導く限り、私はあなたの盾であり続けます」


 静かな室内に、その誓いだけが響く。パルメリアはガブリエルを見つめ返し、深く息をのんだ。守られるばかりではなく、彼と共に道を切り拓く――そんな思いが胸に湧き上がる。


「ありがとう、ガブリエル。……あなたがいてくれるなら、私も怖いものはないわ」


 二人の間を満たす空気が、穏やかに溶け合う。夜の(とばり)は深くとも、その暗闇を払うように、彼らの絆は力強く結ばれていた。

 こうして、ガブリエルの忠誠は改めて形を成す。たとえ新体制の行く手にいくつもの障害が待っていようとも、寡黙な騎士と大統領の絆は、夜明けの光が差す未来へ向かって、揺るぎなく続いていくだろう。

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