表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【プロトタイプ版】悪役令嬢、理想を掲げて ~破滅の運命を超えて、彼女は革命を目指す~  作者: ぱる子
第六章:共和国の誕生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/49

第45話 言葉にできぬ想い

 ある夜、パルメリアが執務室で書類に目を通していると、控えめなノックの音が響いた。ランプの明かりが揺れるなか、扉の向こうから、かつて革命派を率いていた男――今は内務と治安維持を担当するユリウスが姿を現す。彼は少しためらいながらも部屋へ入り、口を開いた。


「忙しそうだから、なかなか二人で話す機会がなかった。でも、どうしても伝えたいんだ。ここまで……本当にありがとう」


 かつては「体制を打破する」ことに情熱を燃やしていたユリウスは、パルメリアとの関わりを通じて「ただ壊す」だけではなく、「新しい社会を創る」ことの重要性に気づいた。今では新政府の柱として、荒廃した地域の再建に全力を尽くしている。

 彼の視線はテーブル越しにまっすぐパルメリアを捉え、彼女はそれを静かに受け止めた。


「昔の俺は、とにかく体制を壊すことばかり考えていた。でも君のおかげで気づいたんだ。壊すだけじゃなく、社会を作るという道があるって。それを受け入れられたのは、きっと君が特別だからだと思う」


 ユリウスの言葉には、照れを帯びた声の奥にある真摯な思いがにじんでいる。


(前の世界ではただの会社員だった私が、こんな形で人を導くなんて……あの事故と転生には、きっと何か運命があったのかもしれない)


 パルメリアは微笑んで答える。


「あなたの情熱がなかったら、民衆を動かすことなんてできなかったわ。革命が成功したのは、あなたの力が大きかったからよ」


「……そう言ってもらえるだけで嬉しい。でも、それだけじゃない。今の俺は――君をどう思っているのか、もう隠しきれない。君が革命後も大義を最優先しているのはわかってる。でも、俺は――」


 さらに言葉を継ごうとした瞬間、パルメリアは小さく首を振り、やさしく微笑む。


(あなたの気持ちは痛いほどわかる。でも今は、答えを出すには早すぎる……。私はまだ、この国を導くために全力を尽くさなきゃいけない)


 一瞬の沈黙が二人の間を包み、ランプの炎がゆらめくたびに影が踊る。ユリウスは言いかけた言葉を飲み込み、瞳を伏せた。

 パルメリアも、彼の思いを拒むつもりはない。だが今は国を立て直すことに全力を注がねばならず、個人の感情に向き合う余裕はまだ持てなかったのだ。

 胸の奥で渦巻く彼の想いと、自身の責任とのはざまで揺れ動く心。その葛藤を感じながら、二人は言葉を交わさず、ただ静かな共鳴に身を委ねていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ