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第42話 仲間たちと共に

 大統領に就任したパルメリアは、就任式を終えた直後から休む間もなく業務に追われていた。暫定議会を中心に共和国の基盤をさらに強化するため、彼女は各地の行政機構の整備に着手する。戦時中に崩壊した組織や地域間の連携を再構築し、軍事体制も平時向けに再編成する方針だ。


 そんな膨大な作業を進めるなかで、パルメリアを支えているのは、革命の苦難を共に乗り越えてきた仲間たち。彼らは新体制の要職を担い、この国を動かす原動力となっていた。


(私ひとりでは到底ここまで来ることはできなかった。だからこそ、仲間と一緒にこの国を作り上げたい)


 とはいえ、民衆の生活はいまだ混乱のただ中にあった。パルメリアは臨時議会の開会準備を進めながら、そのメンバーとして名を連ねる頼もしき仲間たちを思い浮かべ、胸の内で決意を新たにする。


「レイナー・ブラント:外務担当」

 下級貴族の青年として義勇軍を率い、農民や商人から信頼を得たレイナーは、その誠実で温和な人柄を買われ「外務担当」に抜擢された。周辺諸国との外交や、新体制の国際的承認を得るために奔走している。内心では「自分に本当にこの役目が務まるのか」と悩むこともあるが、公務を重ねるうちに少しずつ迷いは薄れていった。


「ユリウス・ヴァレス:内務・治安維持担当」

 革命派のリーダーとして民衆の声を反映してきたユリウスは、新政府で「内務・治安維持」を一手に引き受けることになった。混乱の残る都市を統制し、旧体制の残党による反乱を防ぐため、組織網を駆使して秩序の維持に努めている。かつて体制を打倒した彼が、今度は新しい体制を支える立場に立っているのは、パルメリアへの厚い信頼の証でもあった。


「クラリス・エウレン:科学技術・教育担当」

 天才学者として多くの研究を積み重ね、戦時中には兵站(へいたん)や医療面で大きく貢献したクラリスは、「科学技術・教育担当」の要職に就く。農業や医療の改革、義務教育制度の整備など、多岐にわたるプロジェクトを推進する彼女の合理的で情熱的な姿勢に、パルメリアは絶大な信頼を寄せていた。


「ガブリエル・ローウェル:国防軍司令官」

 パルメリアの護衛騎士として名を馳せたガブリエルは、国防軍司令官に就任。旧王国軍を再編し、「国民を守るための軍」へと変革することが彼の使命だ。寡黙(かもく)ながらも確かな技量と揺るぎない姿勢で兵士たちの信頼を一身に集めている。二度と「王室の私兵」に戻らないよう、真の防衛組織を築くことが彼の誓いでもあった。


 レイナー、ユリウス、クラリス、ガブリエル――革命を共に駆け抜けた仲間たちが、新政権の中核を担い、パルメリアの掲げる「革命後の国づくり」を形にしていく。過酷な戦いの中で培われた強い絆は、時に意見の衝突を生むものの、それすら力に変えて前進する原動力となった。


 こうして、パルメリアは初代共和国大統領として、新しい国の舵を握る。長い闘争の末に勝ち取った新体制は、多くの犠牲と試練を経て、ようやくその輪郭を現しつつある。彼女が掲げる理念は「全ての人が声を上げられる国をつくること」。戦乱の爪痕が色濃く残る今こそ、人々の生活を安定させ、新しい時代の礎を築くのが彼女の使命だった。


 就任式が終わってしばらく経ち、広場を埋め尽くしたあの日の熱狂も少しずつ落ち着きを見せ始めていた。

 パルメリアは執務室にひとり佇み、あの日に誓った思いを胸に改めて決意を固める。


(これからが本当の始まり。この国を変えるため、私は全てを懸ける――)


 疲れと重圧に押しつぶされそうになりながらも、仲間たちの支えを胸に、彼女は一歩ずつ前へ進んでいく。かつて「傲慢な貴族令嬢」と揶揄(やゆ)された若き指導者は、愛と友情の狭間で揺れながらも足を止めず、新たな時代を切り拓く。

 その姿は多くの人々を強く引き寄せ、行く先に希望の光を照らし続けていた。

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