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【プロトタイプ版】悪役令嬢、理想を掲げて ~破滅の運命を超えて、彼女は革命を目指す~  作者: ぱる子
第六章:共和国の誕生

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第40話 新体制の構築

 パルメリアは戦乱による混乱を収束させるため、まず「臨時の統治組織」を立ち上げる方針を打ち出した。これまでの戦時体制を再編し、新たに「暫定議会」を設置しようというのだ。

 貴族の中には腐敗に加担していない穏健派もおり、市民運動や農村の代表たちもこの新しい議会に参加できないか模索している。こうした動きが広がるなか、パルメリアは休む間もなく各地との連絡に奔走していた。国内の治安維持や利害調整、さらに飢えや疫病への対策――問題は山積みである。


「まずは最低限の『新憲法』の骨組みを作りましょう。王室や貴族だけが物事を決めていた時代を終わりにするの。全ての市民が法の下で平等となり、議会を通じて政治に関わる――そんな仕組みが必要よ」


 パルメリアはそう語りながら、クラリスがまとめた法制度の資料と、ユリウスが取りまとめた地方の要望を照らし合わせていく。これまで(つちか)われてきた慣習や各地の事情を尊重しつつ、できる限り多くの人々に受け入れられる新しい制度を探っていた。


 一方、ガブリエルとレイナーは国内の治安維持や貴族の取り締まりに動いている。ガブリエルは騎士としての経験を活かし、元王国兵や市民軍を再編した「警備隊」を組織し、首都や主要都市を中心に安全の確保に努めていた。


 ユリウスは革命派のリーダーとして、市民運動をまとめながら次なる政治体制に民衆の声を反映させようと各方面との協議を続けている。保守派の残党による反乱の危険は依然残っているため、彼は懸命に対話の道を探っていた。


「王国体制が崩れた今こそ、革命の真価が問われる時だ。もし暴力と混乱が続くだけなら、何も変わらない。パルメリアが提案する『新しい仕組み』が広く受け入れられなければ、いずれまた争いが起こることになる」


 ユリウスの言葉に、パルメリアは深くうなずく。

 ベルモント公爵派を打倒し、国王が退位した今、権力の空白をどう埋めるのか――単に王宮を制圧しただけでは解決しない課題だ。とはいえ、彼女には仲間の支えと、多くの人々から寄せられた信頼がある。


(「前の世界」で得た知識は、あくまで一つの手がかり。私を支えてくれるのは、この国の人々の切実な願い……だからこそ、中途半端に終わらせるわけにはいかないわ)


 こうして、パルメリアたちは革命の嵐が過ぎ去った後の国をまとめるため、懸命に動き出す。彼女の一見厳しい姿勢も、今では民衆の後押しを受けてさらに力強さを増していた。

 地方の反乱軍でさえ、首都を制圧したパルメリアを「臨時指導者」として認め始め、穏健派の貴族や戦乱に疲れた市民たちも協力を申し出ている。

 もっとも、混乱は依然続き、地方では独立政権の樹立を宣言する者や、旧体制の再興を狙う残党が小競り合いを繰り返していた。だが少なくとも、「王室や貴族だけによる支配には戻りたくない」という思いが国中で芽生え始めている。


「私たちの目指すのは、特権階級による支配から脱却した『共和制』よ。全ての民が声を上げられる国を作りたい。そのためにもまずは暫定議会で基本となる法律を整え、落ち着いたら国民投票を行うわ。みんなが政治に参加できる仕組みこそ、過去の不平等を繰り返さない道だと思うの」


 パルメリアは、貴族制度を廃し、代議制による政治参加を可能にする「共和制」構想を提示する。議論は続き、反発も予想されるが、彼女がコレット領や革命の中で示した指導力はすでに多くの人々の心をつかんでいた。かつては敵対していた者でさえ、彼女の確固たる意志と決断力を認めざるを得ない。


 革命後の再編はようやく始動したばかりで、一時的な混乱はまだ収まらない。けれど、彼女の姿勢を目の当たりにし、周囲は新しい時代の到来を現実のものと感じ始めていた。

 疲労や重圧に押し潰されそうになりながらも、一歩も退かず歩み続けるパルメリア。今や彼女は国の未来を創り上げる立役者として、多くの人々の希望の象徴となっている。

 やがて暫定議会が開かれ、パルメリアが提唱する共和制が受け入れられる日は来るのか――その行方は、激動の時代を生きる全ての人々と共に、新たな歴史を刻んでいくことだろう。

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