第39話 王国の終焉
首都での最終決戦に勝利し、ベルモント公爵ら保守派を打ち破ったパルメリア率いる革命軍。王太子の後押しもあり、国王が退位を宣言したことで、王国の長き時代についに終止符が打たれた。
しかし、これはあくまで「旧き支配」の幕引きにすぎない。新たな社会をどう築いていくのか――勝利の余韻が広がる一方で、首都から地方に至るまで混乱の兆しがくすぶっていた。
(ここまで来るのに、どれほどの苦難を乗り越えてきたことか。でも、今はまだ喜んでばかりはいられない。新しい時代を築くために、私たちはこれからどう進むべきなの……?)
王宮突入の翌朝、国王は正式に退位を表明し、玉座を降りる。その決断は、政治に無関心だった彼にとって震えるほどの恐怖を伴うものでもあった。
これで王国は名実ともに「主不在」となり、王太子ロデリックも「王位を継ぐ意志はない」と言い残して身を引く。混乱を鎮めるため奔走していた彼は、最終的に新しい体制の構築をパルメリアに託すつもりのようだった。
「国王陛下が退位した後、この国はどうなるんだろう?」
「重税はなくなるのか? 没落した貴族が逆恨みで襲ってきたりしないだろうか?」
首都の市場や広場では、人々が不安そうにそんな声を交わしながら情報を求め合っている。一方、地方からは「ようやく腐敗が終わった」「これからはパルメリアの下で新体制を築こう」という歓迎の声が増え始めていた。
とはいえ、全ての貴族があっさり降伏するわけではない。ベルモント公爵に従っていた者たちの一部は潜伏や逃亡を図り、地方では権力の空白をめぐる小競り合いが散発している。
「このままだと、各地で混乱が広がる一方だわ。臨時の統治組織を立ち上げて、人々を落ち着かせる必要がある」
首都に設置した臨時の執務室で、パルメリアは広げた地図を見つめながら口を開いた。つい先日までは戦場の指揮を執っていたというのに、今度は政治の実務を担わなければならない立場に置かれている。
部屋にはレイナー、ガブリエル、クラリス、ユリウス、そしてロデリックが顔を揃え、彼女の言葉に耳を傾けていた。
「私たちは勝利を収めたけれど、本当の改革はこれからよ。人々が安心して暮らせる仕組みを作らなければならない。貴族の支配に代わる、新しい制度が必要なの」
(前の世界では、こんな重責を負うことなんて想像もしなかった。でも、今の私ならどんな困難が待ち受けていても覚悟はできている。――本番は、ここから。もう迷うことはない)
パルメリアの言葉に、仲間たちは静かにうなずいた。国王の退位によって一つの時代は幕を下ろしたが、真の改革が始まるのはまさにこれから――誰もがそう感じずにはいられなかった。