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【プロトタイプ版】悪役令嬢、理想を掲げて ~破滅の運命を超えて、彼女は革命を目指す~  作者: ぱる子
第五章:革命の火蓋

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第37話 王宮突入

 コレット領の義勇軍は、王国軍を相手に熾烈(しれつ)な戦いを重ねながらも、ついに反転攻勢へと転じた。各地で蜂起(ほうき)した農民や下級貴族、そして革命派が続々と加勢するなか、パルメリア・コレット率いる「革命軍」は勢いそのままに、いよいよ王都の目前へと迫る。

 目指すは、腐敗の象徴たる王宮の制圧――そして王国の中枢を牛耳る保守派を一挙に掃討すること。国全体を巻き込んだこの激流は、誰にも止められないほどの熱狂を(はら)んでいた。


 迎え撃つのは、ベルモント公爵ら保守派の軍勢を中心とした王宮守備隊。名門騎士団を従えてこそいるが、士気に満ちた革命軍の大胆な作戦に翻弄(ほんろう)され、これまでに幾度も敗走を余儀なくされている。


 そして、夜明け前の冷たい空気を裂くように炎が城門を照らすと同時に、革命軍の進軍路が切り拓かれた。凍える闇をも震わす歓声とともに、ついに革命の火蓋が切られたのだ。

 まさに今、王国の命運を賭けた壮大なクライマックスが幕を開けようとしている――


(ここまで来た以上、一歩も退けない。どんなに敵が多くても、ここで止まるわけにはいかないわ)


 パルメリアは静かに振り返り、凛とした声音で全軍に呼びかける。


「みんな、私に続いて! このまま王宮へ突き進むわ!」


 夜明け前の静寂を破った総攻勢。パルメリアの号令とともに、革命軍は一斉に王都の城門を突破した。長引く戦乱で市街は混乱を極めていたが、多くの市民が彼女を迎え入れ、恐れと希望の入り混じった視線を送ってくる。ベルモント派の部隊が散発的に抵抗を試みるも、革命軍の鋭い攻撃と市民の協力に押され、次第に後退を余儀なくされていった。


「ここを抜ければ、宮廷の正門が見えてくる。ガブリエル、先頭を任せるわ」


 パルメリアは毅然(きぜん)と告げる。ガブリエルは黙ってうなずき、胸当てをきつく締め直して剣を抜いた。その気迫に、革命軍の兵士たちも続々と意気を高め、大きな声で応じる。


「いつでも行けます。先頭はお任せください」


 合図とともにガブリエルは一閃で守備兵を弾き飛ばし、道を切り開いていく。同時に、ユリウスが率いる部隊は街路から宮廷へ通じるルートを確保し、王国軍の退路を断つべく進撃を続けた。王都の市民も積極的に協力して路地を封鎖し、王国軍の増援を阻んでいる。


「あと少しだ! みんな、このまま行こう!」


 レイナーが剣を振り上げ、これまで仲間たちと築いてきた絆を思い返しながら、最後まで戦い抜くと決意する。革命軍はその叫びに呼応し、最後の(とりで)を突破すべく一気に駆け出した。


 やがて革命軍は正門を突破し、王宮の広大な敷地へと雪崩れ込む。そこに待ち受けるのは保守派の貴族たちの最後の抵抗――今こそ決戦の時だ。


「ここが……宮廷の大回廊。さすがに厳重な守りね」


 パルメリアは手元の見取り図を見やりながら、素早く仲間たちへ指示を出す。舞踏会に出席した際の記憶、父から得た情報、そして王太子ロデリックが明かした内部事情をもとに、最短ルートを頭に叩き込んでいた。

だが、大回廊の奥には王国軍の精鋭部隊が盾を構えて立ち塞がっている。これが保守派の最後の防衛線だ。


「まさか……こんなに早く王都を落としに来るとは。お前はいったい何者なんだ!」


「そこを通してもらえるかしら? 私たちも急いでいるの」


 パルメリアはわずかに唇を歪め、挑戦的に微笑む。敵兵たちは一瞬たじろぎ、その間に小さな隙が生まれた。

ガブリエル、レイナーを先頭とする部隊が一気に突撃し、盾の壁を崩していく。乱戦は激しさを増し、ユリウスの部隊も左右から攻め込み、保守派を次々に混乱に陥れた。


「パルメリア、こっちだ! 奥へ急いで!」


 レイナーが声をかけると、パルメリアはためらうことなく彼のあとに続く。仲間たちも一斉に走り出し、「謁見の間」に通じる大扉を目指した。

宮廷内では火の手が上がり、豪華な家具や美術品が打ち壊されていく。かつての華やかさは無残に消え去り、剣戟(けんげき)と怒声が響き渡るなか、まるで王国が新たな時代へと生まれ変わる瞬間を告げているかのようだった。

 そして、燃え盛る革命の炎はついに最高潮に達し、その勢いを止める者は、もはやどこにも存在しなかった。

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