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第32話 覚悟の宣言

 その夜、領内の有力者や領民たちが古びた石造りの広間に集まった。壇上に立つパルメリアは、静まり返った空気の中で人々の視線を一身に受け止める。農民、職人、商人、民衆運動の代表――それぞれ異なる立場を持つ人々が、恐れや不安、そして彼女に託す大きな期待を胸に秘めていた。パルメリアはゆっくりと深呼吸をし、しっかりと前を見据える。


「みなさんもご存じの通り、ベルモント公爵派が王国軍を掌握し、私たちの領地を圧迫しようとしています。……もはや、見て見ぬふりをしているわけにはいきません」


 その声は冷静で透き通るようだったが、どこか揺るぎない決意が感じられた。会場のあちこちから、ごく小さなささやき声が漏れ始める。誰もが、「パルメリアなら、きっと未来を切り開いてくれる」と、期待と不安を胸に耳を傾けていた。


「私は、この国が救われるためには、腐敗した王室や貴族社会を根本から改革しなければならないと確信しています。……だからこそ、ベルモント公爵の横暴を黙認することはできません。もし、同じ思いを抱いてくださるのであれば――どうか共に立ち上がってください」


 この言葉は、彼女の揺るぎない覚悟そのものだった。これまでは領地内での改革や防衛に注力してきたが、保守派が軍事的な侵攻を開始した今、自分たちの未来を守るためには、全面的な対決を避けられないと覚悟している。


「コレット公爵領は、ベルモント公爵派にも、腐敗の根源である貴族社会、そして王室に対しても――正式に抵抗を始めます。私たちの自由と未来を守るための戦いです」


 その最後の一言が告げられた瞬間、広間の空気が一変した。農民たちは拳を握りしめ、職人たちは「いつでも力になる」と声を上げ、商人たちや民衆運動の代表たちも「ついていく!」と叫んだ。瞬く間に、決意と熱意が会場全体に広がっていった。


 翌朝早く、コレット領騎士団が率いる初動部隊が国境付近で王国軍と対峙するために警戒線を張ったとの知らせが届く。領地の騎士団や義勇兵、さらには革命派の志願者たちが力を合わせ、決して圧倒的ではない軍勢ながら、民衆の勢いを頼りに立ち向かい始める。


(以前の私には、こんな大きな戦いが待ち受けているなんて想像もできなかった。それでも、引き下がるつもりはない。改革の炎を消すくらいなら、どんな敵が立ち塞がろうと、突き進んでみせる。)


 かつて傲慢だと揶揄(やゆ)されていた公爵令嬢は、今や王国を巻き込む壮大な戦いの中に足を踏み入れていた。もう後退はできない。だが、仲間を信じ、自らの意志を貫いて――燃え上がる改革の炎が、王国全体を照らし出す未来を信じて。

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