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第31話 迫る戦火

 腐敗の核心を握り、着々と不正告発の準備を進めていたパルメリア。だが、その動きを察知したベルモント公爵をはじめとする保守派は、予想以上の速さと過激さで動き出した。王国軍を掌握し、改革派の活動を王国への「反逆」とみなして大規模な弾圧を始めたのである。


 ある朝、コレット公爵領に重苦しい空気が漂っていた。普段は穏やかな村々もどこか落ち着かず、人々の顔に不安の色が浮かんでいる。いくつかの報告によれば、領地への通路となる街道が王国軍によって封鎖され、通行しようとした商隊が引き返したという。真偽は不明なまま、村の人々の間で不安が広がっていった。


「道が封鎖されたら、物資の流れはどうなるんだ? 農家や商人には大打撃だろう」


 寄合所や市場では、物資の停滞が人々の不安を増幅させ、商売に影響を及ぼす懸念が広がっていた。


「もし王国軍が進軍しているのが本当なら、コレット領も危険なことになりそうだ」

「兵士たちが街道を封鎖しているって話だが、いったい何が起こっているんだ?」


 そんな噂話が飛び交うなか、商人や旅人たちは警戒心を強め、村に近づかないようになった。家に籠もる者も多く、村のいつもの賑わいは消え、雰囲気は冷え込んでいた。


 一方、ユリウスが率いる革命派が活動している都市部では、市民の集会が暴力的に解散させられ、学生や労働者が蓄えていた物資を奪われるなど、苛烈な弾圧が横行し始めていた。


「ここまであからさまに弾圧されたら、もう動けないよ……」

「あの兵力を相手にして、勝ち目なんてあるのか……」


 絶望と諦めの声が人々の間に広がる。ベルモント公爵は王国内部で根回しを完了し、事実上の軍権を掌握しつつあった。

 その最重要のターゲットは、改革派の象徴と呼ばれ始めたパルメリアとコレット領だった。そこを潰せば、改革派の中枢を叩ける――その狙いが見え隠れしていた。


 パルメリアは館の執務室で報告書を手にし、略奪や住民の恐怖が記された文面に目を通す。予想していたとはいえ、これほど早く保守派が軍事行動に出るとは思わなかった。

 家令のオズワルドに静かに視線を向け、問いかける。


「王国軍が国境を越えてくるなんて、本当なの?」

「はい、商隊や周辺領地の使者からの報告です。少なくとも百人規模の部隊が、コレット領の『反逆』を鎮圧する名目で進軍しているとのことです」

「そう……。もう黙ってはいられないわね」


 パルメリアの声は低く、決意に満ちていた。

 執務室にはレイナー、ガブリエル、クラリス、ユリウスといった仲間たちが集まり、その報告を聞いていた。レイナーは拳をぎゅっと握り、ガブリエルは剣の柄を握り直す。クラリスは地図を眺めながら物資や避難経路の点検を進め、ユリウスは民衆を守るための決起を強く示唆する。


(保守派がここまで強硬に踏み込んできた以上、こちらも相応の手を打たなくては。戦いは避けられないかもしれない。でも、この領地と人々を守るためには……)


 パルメリアは心に静かな炎を灯し、仲間たちと共に次の一手を固める。改革は、もはや後戻りできない段階に入っていた。

 近づきつつある衝突を予感しながらも、彼女は臆することなく立ち向かう決意を新たにする。それこそが、この領地と人々を守る道だ――揺るぎない思いを胸に、パルメリアは行動を起こすのだった。

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