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第30話 決戦前夜

 決定的な証拠を手にしたパルメリアには、もはや迷いはなかった。 守りに徹していては、暗殺や妨害が続くだけ――そう判断した彼女は、腐敗を根本から断ち切るために正面から立ち向かう道を選ぶ。


「ベルモント公爵がこのまま黙っているわけがないわね。これを公表すれば、必ず全力で私を叩き潰そうとするでしょう」


 夜も更けた執務室。広げた地図の中心には王都があり、改革派の拠点や保守派の影響範囲がひと目でわかるよう印が記されている。パルメリアはそれを見つめながら、低い声で告げた。

 そばでは、ガブリエルが剣の刃先を丹念に点検しながら提案する。


「パルメリア様の護衛を強化するべきです。保守派が動くなら、こちらも備えを万全にしておかねばなりません」


 一方、クラリスは各地で衝突が起こった場合のシミュレーションを冷静に報告する。その声には、ただの妨害を超えた戦乱の気配が含まれていた。


「民衆が巻き込まれるほどの規模になれば、犠牲は避けられないかもしれません。……でも、相手が軍を動かすなら、こちらも黙って見ているわけにはいきません」


 ユリウスが重くうなずき、鋭い視線をパルメリアに向ける。


「俺たち革命派は、その時を狙って一斉に蜂起するつもりだ。……君はどう動く?」


 その問いには、革命に懸ける彼の揺るぎない信念と、パルメリアへの大きな期待が込められていた。彼女は窓の外へ視線を移し、闇夜の先に見えるコレット領の灯火をじっと見つめる。


(ここまで来るのに、どれだけの困難を越えてきたか……。だけど、もう後戻りはできない。国全体を変えると決めた以上、恐怖に立ち止まるわけにはいかないの)


 彼女はゆっくりと息を整え、仲間たちの方へ向き直る。


「決起のタイミングは慎重に見極めるわ。ベルモント派が動き出す前に、王室の中枢へ証拠を突きつける準備を整える。そして、彼らが軍を動かすなら、こちらも攻勢を仕掛ける。みんなと連携して、一気に行動に移すの」


 その言葉は、腐敗した貴族社会に挑む宣戦布告に等しかった。

 レイナーは静かに息を吐き、胸の奥で熱い決意をかみしめるように目を閉じる。ガブリエルは一度うなずいただけで、その忠誠を言葉よりも雄弁に示していた。クラリスは資料を抱え直し、迷いなく次の作業に移る。ユリウスは拳をぐっと握り、行動への意志をあらわにした。


 こうしてパルメリアは、ただ守りに回るのではなく、革命のための一歩を踏み出す決意を固める。腐敗の核心を突き崩し、新たな時代を切り拓くための準備は着々と進んでいった。

 夜空に散る星を見上げながら、パルメリアの胸にはこれまで以上に強い炎が燃え上がっている。決戦の時は近い――仲間と共に、彼女は王国に深く根を張る闇を打ち破り、新たな未来を創造しようとしていた。

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