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【プロトタイプ版】悪役令嬢、理想を掲げて ~破滅の運命を超えて、彼女は革命を目指す~  作者: ぱる子
第四章:暴かれる腐敗

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第29話 決定的証拠

 ベルモント公爵派による妨害や暗殺未遂を乗り越え、王国の各地では改革の機運がさらに高まっていた。仲間と共に腐敗した貴族社会の本丸を突き崩すため、パルメリアは決定的な証拠を(つか)むべく奔走していた。

 そしてついに、ベルモント公爵やその重臣たちが国庫の資金を流用し、密貿易で私腹を肥やしていることを示す動かぬ証拠を押さえることに成功。さらに王太子ロデリックとの間に極秘の協力体制を築き、王国の中枢へ切り込む準備を進めていた。


(ここまで来るのに、どれだけ苦労を重ねたか……でも、この証拠こそが、腐敗した貴族たちを一掃する鍵になる)


 夜も更けたコレット家の館の一室。パルメリアを中心に、ユリウス、クラリス、レイナー、ガブリエルらが顔をそろえ、積み上げられた書類に目を通している。そこには国庫の資金流用や密貿易の実態が克明に記されていた。


「これがベルモント公爵派の実態か……」


 ユリウスが紙束を手に取り、低く(うな)る。革命派のリーダーとして数々の腐敗を見てきた彼ですら、記された不正行為の悪質さに言葉を失いかけていた。

 隣で記録を読み解いていたクラリスが、貿易関連の書類を丹念に調べながら息をのむ。


「積み荷のリストや港湾の許可証が改ざんされています。関税も一切支払われていないし、船の名義も偽造ばかり……。闇商会を通じてベルモント派が牛耳っているのでしょう」


「もし正しく資金が使われていれば、どれだけの人が救われたことか……。これじゃ、ただの盗賊だ」


 レイナーは拳を固く握りしめながら、抑えきれない怒りをにじませる。下級貴族として長年、権力の不条理を見てきたとはいえ、これほど大規模な悪行には言葉を失っていた。


 パルメリアは冷静な表情を保ちながら、仲間たちを見渡す。


「これだけの証拠がそろえば、公にする材料としては十分ね。だけど今すぐ発表したら、逆手に取られるリスクがあるわ。王室の中枢で彼らを糾弾できる体制を整えるまで、タイミングを見極めないと」


 彼女の言葉には揺るぎない自信がうかがえる。頼みとなるのは、クラリスの綿密な分析だけではない。パルメリアは秘密裏に王太子ロデリックとの連携を深めていたのだ。

 ロデリックが持つ王室内の情報網や人脈を駆使できれば、国王や重臣を集めた特別審議の場でベルモント派を一気に告発することも可能になる。


「殿下にはすでに一部の資料を見せてあるわ。腐敗を黙認すれば王室の権威が失墜すると、彼自身も危機感を持っている。だからこそ、協力してくれると約束してくれたの」


 パルメリアの説明に、ユリウスは微かに眉をひそめる。革命派として王室に抵抗感を抱く彼だが、共通の敵を崩すためには、あらゆる手段を模索するしかないのだ。


(前世のゲームでも、ベルモント公爵との対決は重要なイベントの一つだった。でも私は同じシナリオには従わない。自分の手で新しい道を切り拓くわ)


 胸中でそう誓いながら、パルメリアは手元の書類を整える。仲間たちと視線を交わし、改めて深い決意をこめた言葉を放った。


「この戦いを必ず勝ち抜くわ。そして、この国を変えるための土台を作る」


 やがて訪れる大きな戦いを前に、パルメリアは大胆かつ冷静に、そして強い覚悟をもって最後の準備を進めていた。目指すのは、腐敗した体制との決着をつける――その歴史的な瞬間である。

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