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第28話 改革の波紋

 都市や農村の民衆の間では、ユリウスを中心とした革命派の動きがますます活発化していた。王室や貴族の腐敗に不満を抱く人々にとって、コレット領の「成功例」は希望の象徴になりつつある。


「見てほしい。パルメリア・コレットがやり遂げたことを。真剣に取り組めば、人も社会も変えられるはずだ」


 街頭でユリウスが熱を込めて訴えると、足を止める市民の数が次第に増えていく。これまでは「革命」という言葉をどこか他人事のように聞いていた人々も、パルメリアの改革の成功を知ったことで「自分たちも動けば未来は変わるかもしれない」と思い始めたのだ。


「私たちの領地でも、パルメリア様の方法を試せないかな?」

「貴族に依存しない社会ができるなら、学ぶ価値はあるよ」


 こうした声を背景に、革命派とコレット領の間では物資や人材の交流がさらに加速していた。コレット領で開発された新しい農具の設計図や教育プログラムが各地に広まり、町の技術者や若い学徒がコレット領へ移り住む動きも盛んになっている。

 表向きは領地間の交流として扱われているが、実際には王国全土に改革を波及させるためのネットワーク作りが進行中だった。


 当然ながら、この動きに最初に反応したのはベルモント公爵を中心とする保守派の貴族たちだ。

 パルメリアが主導する改革と革命派の連携は、彼らにとって見過ごせない脅威である。もし改革や革命の思想が広がれば、長年守ってきた特権が崩壊しかねないからだ。


「コレット公爵令嬢を革命の旗印にさせるわけにはいかん。早急に手を打つべきだ」

「暗殺が失敗した以上、もっと徹底した手段を講じなければ……」


 公爵邸や宮廷の奥では、パルメリアを封じ込めるための策が次々と練られていた。内通者を送り込むか、財政を締め上げるか――もしくは、さらなる暗殺計画を仕掛けるのか。保守派の貴族たちは、最も効果的で容赦のない手段を模索している。

 加えて、これまでも改革派を警戒していた宮廷の強硬派も、パルメリアとユリウスの協力体制に神経を尖らせ始めた。彼女が革命派と密接に関わっているという噂は王太子ロデリックの耳にも届き、宮廷内には新たな緊張感が生まれている。


「危険は確実に増しているわ。でも、これほどの好機は滅多にない。この改革を全国に広げ、腐敗した体制を揺るがす時が来た」


 パルメリアは執務室で地図を広げ、クラリス、レイナー、ユリウス、ガブリエルと共に次の方針を検討していた。周囲の批判や敵意に惑わされず、彼女は冷静に戦略を組み立てる。今や多くの注目を集めているコレット領の成功が生む支持は、着実に増加しつつあった。


「他の地域でも私たちの改革に注目している人が増えているわ。複数の領地が同時に動けば、保守派や宮廷も無視できなくなるかもしれない」


 パルメリアが地図を指し示しながらそう告げると、クラリスが続ける。


「ただ、それに比例して先日の暗殺未遂のような事件も増えるでしょう。リスクは確実に高まります」


 冷静なクラリスの指摘を聞き、ユリウスはあえて明るい声で応じた。


「大丈夫だ。護衛を強化すればいいし、脅しには屈しない。民衆が味方につけば、やりようはいくらでもある」


「僕だって、パルメリアを守るためならどんな戦いも引くつもりはない」


 レイナーが拳を固く握りしめてそう言うと、ガブリエルは無言でうなずき、意志を示す。


 仲間たちの熱い決意に触れ、パルメリアは内心で改めて覚悟を定める。腐敗した体制を断ち切り、より良い未来を切り拓く――そのための反撃は、もう遠い先の話ではなかった。


 コレット領から広がり始めた改革のうねりは、多くの人々を巻き込みながら勢いを増している。一方で、保守派の貴族たちの敵意もいっそう強まっており、王国全体が高まる緊張感に包まれ始めていた。

 パルメリアは、もはや後戻りできない状況を自覚している。それでも彼女は、仲間と支え合いながら腐敗の根を断ち切るために作戦を着実に進めていく。冷静な判断と揺るぎない信念を胸に、王国全体を巻き込む戦いへと、一歩ずつ踏み出していくのだった。

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