第27話 領地成功の広がり
暗殺未遂を乗り越え、仲間たちとの結束が一層強固になったパルメリアは、改革をさらに加速させていた。彼女の活動を支持する声は遠方の地域にまで届き始め、これまでの成果を広げて一層大きな変革へ繋げるべく、新たな戦略を描き始めている。
(前世の私は、自分がこんなふうに多くの人の命運を背負うことになるなんて想像もしなかった。けれど、今はもう引き返せない。みんなの期待を裏切るわけにはいかないもの)
かつて農業が疲弊し、財政破綻の危機にあったコレット公爵領は、今ではかつての姿を大きく塗り替えようとしている。
パルメリアが主導した新農法や輪作、識字教育などの施策が、はっきりとした成果を生み出していた。
「パルメリア様の改革って、本当にすごい。作物の育ちがこんなに良くなるなんて……」
「子どもたちが自分の名前を書けるようになって、簡単な計算までできるようになったんだ。家で楽しそうに話してくれるよ」
沈んだ空気が漂っていた村々は道路の整備や物流の活性化によって行商人が訪れるようになり、経済の活気を取り戻しつつある。そんな噂を耳にし、隣接する中小領地からは視察団が次々と足を運んできた。
「まさかここまで大規模な改革が成功しているとは……。あの令嬢がこれほどの実行力を持っているなんて」
視察を終えた青年伯爵の率直な感想である。彼のように訪れた貴族や官吏たちは、口々に同じ驚きを漏らしていた。また、パルメリアの手法を学びたいと考える農民の代表者たちも、コレット領を訪れ始めている。
保守派から傲慢な貴族令嬢と噂されても、パルメリアはその評価を気に留めず、ただ成果を積み上げることに集中した。その姿勢に心を動かされ、彼女を支えたいと願う声は徐々に広がりを見せている。
(何を言われようと構わない。結果だけが全てを証明してくれる。今の動きをもっと大きな変革へ繋げられれば、いずれ腐敗を打ち砕く道が見えてくるはず)
パルメリアの改革はもはや一領地の成功にとどまらず、国全体を巻き込む大きなうねりに育ちつつあった。これまで停滞していた体制を揺るがす反撃の布石になり得るのだ。
領地の人々の間に芽生える活気と希望が、静かに、しかし着実に、未来を育んでいる。