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第12話 知識の橋渡し

 ある日、パルメリアのもとに一通の手紙が届いた。筆者はクラリス・エウレンという名の若き女学者。学問の都として知られる地方で注目を集めている人物だという。


 その手紙には、パルメリアが進める改革に強い関心を抱き、自身の研究が役立つなら協力したいと、丁寧な筆致で熱意が綴られていた。


(遠方にまで私の取り組みが伝わっているなんて……。これは、逃せないチャンスね)


 そう判断したパルメリアは、さっそくクラリスを館へ招くことを決める。やがて現れたクラリスは、控えめな物腰の中に、確かな探究心と自信を感じさせる雰囲気を宿していた。穏やかに一礼すると、迷いのない視線をまっすぐパルメリアへ向ける。


「クラリス・エウレンと申します。お目にかかれて光栄です。私の研究が、パルメリア様のお役に立てるなら、ぜひともご協力させていただきたいと思いまして」


「研究、というと……具体的にどんなことをしているの?」


 パルメリアの問いかけに、クラリスは瞳を輝かせながら続ける。


「農業だけでなく、医療や上下水道の整備、建築素材の改良など、暮らしを支える基盤づくりに力を注いでいます。パルメリア様の領地で実験的に導入できれば、住民の生活が大きく向上するかもしれません。もちろん、それに伴うリスクは承知しております」


 落ち着いた口調ながら、その内には学問への情熱がにじみ出ている。前世で培った知識を思い出しながら、パルメリアは大きくうなずいた。机上の空論と切り捨てられがちな技術でも、実践と意志次第で大きな成果に繋がると信じているからだ。


「ぜひ力を貸してほしいわ。ただ、いくつか条件があるの。危険を伴う研究や実験を行う場合は、必ず許可を取ること。領民の生活や安全を脅かす行為は、どんな理由でも許されない。それさえ守ってもらえれば歓迎するわ」


「承知いたしました。私も、むやみに犠牲を出すような研究には反対です。あくまで人々の暮らしを豊かにするのが目的ですから」


 クラリスの返答には、まっすぐな探究心と慎重さが同居していた。パルメリアはその態度に安心を覚えつつ、心の奥でわずかな高揚を感じる。


(前世の知識と、この世界で育まれた新たな発想が合わされば、もっと広い可能性を見出せるかもしれない)


 そんな期待を胸に抱きながら、パルメリアは軽く微笑んでクラリスに視線を移す。こうして学術面での協力関係が築かれ、改革にさらに強力な推進力が加わることになるだろう。


 既存の貴族社会が眉をひそめる革新的技術も、見方を変えれば飛躍的な進歩を生む鍵になる――パルメリアは、その手応えをしっかりと噛みしめた。

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