ボランティア。
三題噺作成―ひゃくごじゅうなな。
お題:青空・蛇・巻き添え
「あっっっつ…」
止まることを知らぬ汗が、だらだらと流れている。これじゃあ、いくら水分を摂っても無意味なのではないかと思う程に。だらだらと。ぼたぼたと。雨粒のように、アスファルトにジワリと広がる。
手汗も酷い人間なもので。何かを持つのにも、倍以上の気遣いがいる。
「っふー…」
頭上には、目に痛いほどの青空が広がる。
雲一つないと言うと、聞こえはいいが。空の、あの明るさを遮るものがないというのも、考え物のような気がしなくもない。あの色が、嫌でも視界に入ってきて、この暑さを思い出させる。
「……」
周囲には、同じように汗だくの人が数人。
中に1人だけ知り合いがいる。―あいつのせいで、今ここに居たりするのだが。当の本人は、こちらの視線など気にもせず、せっせと活動に勤しんでいる。
テントの設置を手伝ったり、諸々を運んだり。
「これもあっちにー!」
「…はーい!」
そういう自分も、たいして暇というわけでもないが。
あっちへこっちへ。暑い中、汗にまみれながら、モノを落とさぬように気を付けながら。
時々アイツに、恨みの視線をよこしたりしながら。
「…んっとに」
―ふざけんな。
ほそっと、つい口から洩れたそれは、どうやら周囲には聞こえていなかったようだ。
「…ちょっと、水飲んできます」
「はーい」
状況説明が遅れたが、少し水分補給がてら、現状把握に努めよう。
少し離れたところに置いてあるペットボトルを手に取る。
かなりぬるくなったそれは、どろりと。喉を通り過ぎていく。
「……」
さて…。
なぜこんなところに居るのか。
こんな、居たくもない所に居るのか。
外出なんてしようとも思わない私が。
この、私が、だ。
なぜ、こんなところに居るのか。
「……」
こんな所こんな所というと、分かりずらいが。
―暑い中、真昼の太陽の下で、ボランティアの真っ最中である。
地元にある、そこそこ有名な神社で行われるお祭りの、ボランティア。テントの設置から始まり、器具の取り付け、ポップなどの設置もしていたりする。他の祭りのボランティアがそうなのかは知らないが。―というか、ボランティア自体がほぼはじめてに近いのだ。他も何もない。
「……」
しかしこの神社、聞いたところによると、白蛇を神として奉っているらしい。はじめて聞いた…。蛇神信仰?個人的には、蛇に対してあまりいい印象がないので、その蛇を信仰しているのか…?と、ものすごい疑問が残るのだが。
まぁ、それをとやかく言えるほど、ちゃんとした信仰があるわけでもなし。神社仏閣に詳しいわけでもなし。自分の住んでいるあたりに、そういう信仰があるという事だけでも、覚えておこう(すぐ忘れるだろうが)。
「……」
っと、話がそれた。
なぜ、私が、ボランティアなぞをしているかというと。
さっきからまぁ、恨みつらみを交えながら言っているが、アイツのせいなのだ。
疎らにいるこのボランティアの人々の中で、唯一の知り合いの、アイツのせい。
こちらの苦労なぞ知らぬアイツは、ボランティアに精を出している。めちゃくちゃいい笑顔で参加しているあたりが、本当に…ムカつく。
「……」
1人が嫌だとか言う、理由で、私を巻き添えにしたくせに。
出会いが欲しいとか言う、意味の分からない理由で参加しやがって…。それで1人が嫌って、どーゆーことだ…。しかも、今や私と共に参加したことを忘れているだろうあれ…。勝手に一緒にボランティアに応募して…。この日開けといてとだけいって…。よくよく確認すればボランティア。しかもかなりの力仕事…。
「…はぁ…」
今更、こう、あれこれ言っても意味はないし。余計に疲れるだけなのだが…。
嫌でも思考はマイナスに傾く。こう暑いと…なぁ。暑い上に、やりたくもないことをして、汗でべたべたして。
「――っし、」
とりあえず、もう少しで目途がつくとのことを、さっきどこかで誰かが話していたのを耳にしたので。
微力ながらも、働くとしよう。不本意ではあるが。参加している以上は、働く必要がある。
アイツとはもう、良い仲ではいられそうにないが。
そんなことは後回しだ。
さっさと終わらせて、さっさと涼しい家へ帰ることにしよう。