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【第四章完結!】堕落天使はおとされる  作者: 真白はやて
第四巻 『2クール』
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第16話(7) 『才能の衝突』

 戦いの口火を切ったのはセルスだった。

 クーフルが近接戦を行うことを選んだとしても、奴がセルス同様体術の訓練を受けていないのはこれまでの戦い方からよくわかるため、単純な殴り合いによる経験値の差で言うならば恐らく魔法の性質的にもセルスの方が強いだろう。


 だがクーフルも決して勝ち筋無しにこの距離を選んだわけじゃない。

 セルスの光魔法による強烈な連打がクーフルに迫るが、奴はそれを全てその身で受け、その都度反撃の黒泥を出現させて応戦していた。


 こちらが攻勢に出ていたはずだが、逆にセルスが押されてしまっているのがよくわかる一面だ。

 奴が《《喜劇》》のバフを受けて生成した泥の鎧はやはり強固で、無詠唱の《ルミナ・フラグメント》では奴に回避を強要することすら出来ずにいる。


 更に防御からの攻勢に転じるクーフルの多彩な近接攻撃はこれまでの大技ではなく細かく繊細なモノへと変化していて、すんでの所で回避することは出来ているものの、やはり奴の攻撃もまた破壊することは出来なかった。


 まるで糸のように張り巡らされる強靭な細い泥は徐々にセルスの隙を捉えようと角度を変えて襲い掛かり、ほんの僅かに気を緩めたら一瞬で全ての泥が突き刺さってしまうリスクを抱えていた。


「―――ッッ!!」


「―――」


 だが――光がいれば影もいる。

 セルス、クーフルが邂逅し交差するほんの僅かな重なりに生じて、俺は既に低い体勢から奴の顔面に急接近していた。


「無駄なんだよッ!!」


 強固で壊れない鎧を纏ったクーフルとはいえ、強大な衝撃を生身に届かなくなるまで吸収することは出来ない。

 無詠唱ではなく詠唱込みの《ルミナ・フラグメント》が数回も直撃してしまえば気を失うだろうと理解しているからか、呪法を破壊することが出来ていなくともセルスから注目を外すことは難しい。


 だからこその闇討ち。

 元々俺は正々堂々よりも陰に溶け込む方が得意だから、ほんの一瞬相手に俺の存在を見えさせなくさせるなど造作も無いことだった。


 だが問題は……セルスでも破壊出来ない泥の鎧を、どうやって破壊するか。

 その答えももう出ている。


 そして俺は、本番に――強い。


「《ライトニング【破壊ストライク】》ッッ!!」


 そう確信を持って攻撃したモーションは《ライトニング【撃鉄】》とまるで変化のない同等のもの。

 故にクーフルはたとえ詠唱が違くとも自身の呪法に限りない信頼を有しているから、嗤いながらも拳を突き出す俺を見ようとすらしなかった。


 故に握り締めた拳が、クーフルの腹部へと直撃する。


 だけど言っただろ。

 これは……【撃鉄】じゃないって。


「ぐはああッッ!?」


 俺の雷拳がクーフルの鎧を突いた瞬間、ほんの数秒のタイムラグを経てクーフルは勢いよく後方へと吹き飛ばされた。


 【撃鉄】よりも初速は遅く威力も低いが、より衝撃力、破壊力に特化させた魔法。

 拳をスパイクに見立て押し付けた相手にズレが生じないようにした後、質量の大きい雷撃を点で穿つ。


 衝撃力を増した【破壊ストライク】はクーフルの肌を覆う泥鎧に明確なヒビを入れ、本体にも人間が蹲るぐらいのダメージを与えることが出来ていた。


「また……また調子に乗ってしまいましたよ、クソ天使ぃぃ……!!」


 吹き飛ばされたクーフルは【撃鉄】を直撃した時のような血反吐を吐いてはいなかったが、それでも損傷した鎧の修復にかなりの時間を有していることから改めて【破壊】は明確に奴に通るという確信が持てた。


 練習無しのぶっつけ本番でこれなら、次はもっと精度を高めることが出来るはずだ。

 《《喜劇》》で強化された泥鎧さえ破壊してしまえば、後は俺かセルスの詠唱魔法で勝ちが確定するだろう。


「貴方はいつだって私の上を行こうとする……私の劇場を壊そうとしてくる! 貴方から目を離すなど、あぁ……ゴミ共の介入が重なり、どうやら私も自分の目的を忘れてしまっていたようです!」


 もちろん一度手の内を明かした以上そう上手く同じ手が二度通用することは無いことも理解している。

 だがゆっくりと起き上がり、損傷した泥鎧を修復しながらもクーフルは忌々しい歪んだ顔で俺を睨んでいたから。


「……な? わかっただろ?」


「……ああ」


 心の中で余裕が出始め、セルスが俺の隣に再度立ったことを確認すると。


「これ……行けるわ」


 一つの共通認識を告げて、再度互いに拳を構えた。


「ふ、ふふふふふふふふふ……!!」


 ……そんな俺達を前に、クーフルもまた不気味な笑みを漏らし続けて。


「それは、どうでしょうねぇぇぇぇ!?」


 絶叫を上げたと同時に、俺達は一斉に地を駆けた。


「「「―――ッッ!!」」」


 詠唱としての【破壊】が形になった以上、まだ完全に確立出来ていないが故に何回か失敗してはしまうものの無詠唱での【破壊】は問題なく機能出来ている。

 未だ《《喜劇》》で強化された呪法を破壊出来る算段は付いていないが、既に流れを一度掴んだことで超至近距離での攻防を行うことは出来ていた。


 多彩な手数を持つ呪法《魔呪召現》はやはり強くて伸びた泥針を避けきることが出来ずに俺とセルスの身体を貫くものの、それと同じくらい奴の猛攻を掻い潜った末に得た無詠唱の殴打をクーフルにぶつけることが出来ている。


 三次元的攻防は熾烈を極め、この場において全員が本命の一撃を喰らった奴から負けることを理解していた。


「自分の手札は、最後まで見せないもんだ!」


 故に勝負とは、常に未来を見据えた行動が求められる。

 それを野性的経験により理解していたセルスが笑みを浮かべると、僅かに浮いた状態からクーフルに向け大きく右足を上げていた。


「《ルミナ・フラグメント【剛脚ごうきゃく】》ッッ!!」


 そして右足に展開された星の魔法陣が輝きを放ったと同時にセルスによる踵落としが振り下ろされる。


 新たに出た初見の技にクーフルは驚きながらも間一髪で回避した。

 けれど対象を失ったそのかかとはドーム上の床へと勢いよく叩き付けると、爆発的な衝撃波と共に創られた強固なドームの一部を破壊し、煙と共に黒泥が湧水のように噴き出していく。


 強化された呪法を破壊する程の威力を見せたことにクーフルは更なる驚きを見せながらも、それ程までに強大な力を持ちながら盛大に外し視界を覆い尽くすことしか出来なかったという事実にクーフルは思わず歓喜の嘲笑を上げた。


「はっ! どんな力を見せて頂けるのかと思えば目眩ましとは! やはり貴方はこの劇場に立つに相応しくない! この劇場には、私と堕落した天使だけが立つべきなのでございますッ!」


 たとえ目眩ましとして機能しているとしても決してその範囲は大きくないことから、到底セルスが予想していた本来の目的を成し遂げられたとは言えないだろう。


 だからこそクーフルは……これを、好機と見た。


「《魔呪召現【終極:千秋楽】》ッッ!!」


 そう叫ぶと同時に、この劇場を俯瞰している《《喜劇》》が巨大な白い両手を勢いよく一つに重ねる。

 怨念の籠った負のオーラが重ねた手の中で蠢いていて、やがて両手を広げるとそこには膨張した泥の塊が創り上げられていた。


 まるで、満月だ。

 それ程までに強烈な存在感を放つ強大な力は《魔呪召現》という呪法の全てを体現しているのではないかと錯覚する程の威圧感を放っていた。


「ここで閉幕に致しましょう。貴方方の彷徨う魂は呪法により天国へは行かず私の糧となる」


 勝ちを悟ったクーフルの表情は何処か物憂げなものだった。

 いや、そういう顔をしているだけで奴の心はいつだって自分に酔いしれた恍惚な欲望しか存在していない。


 煙と泥の雨によって包まれた小さな空間で【千秋楽】を避けることなど不可能だという確信が、クーフルの勝利を揺るぎないものとしているのだろう。


「さあ、絶望した顔をお見せください。……メビウス・デルラルト。貴方を殺すことで、私はより強くなれるッッ!」


 故に、クーフルは《《喜劇》》が創り出した【千秋楽】を自身の頭上へと引き寄せ無詠唱による【魂霊媒禍】によって発動した風魔法で自身を包み込む煙を吹き飛ばすことで、その絶望に塗り潰された無様な顔を見ようと口角を吊り上げていた。


「―――」


「―――」


「―――は?」


 だけど――残念ながらそうはならない。

 既に俺達はクーフルを前後で挟み、互いに拳を左手で包み構えているのだから。


 煙で視界が遮られれば《《喜劇》》であろうと俺達の行動を俯瞰出来ない。

 それに加え、今の奴が持つ全能感故の自信を逆手に取ったことでこの状況を作り出すことが出来たのだ。


「主役に立てないかどうかは、最後までわからない」


 クーフルの前方に立つセルスが、先程の狂言への解を成す。

 それを俺も聞きながら、煌めく紅い瞳は目の前の悪党を離さずにいた。


「選択の時だ……クーフル」


「オマエは、どっちを選ぶんだ?」


 雷による火花が飛び散り、星の魔法陣が輝きを放ち、紅い瞳と蒼い瞳がクーフルを射抜き続ける。

 その威圧は奴の頬に一筋の汗を垂らすには充分過ぎるものだった。


 それはクーフル・ゲルマニカだからこそ理解している、死の恐怖。

 『人生は選択の繰り返し』だと奴自身も言っていたが、もう既に奴の人生は一度終点に着き、そうして運よく掴むことが出来た第二の人生を乗り越えるだけの余力などもう奴には残っていなかった。


 選択を間違えれば……負ける。

 負ければまた、【断罪】される。


 だからこそクーフルは慎重に考えなければならない。

 でもその時間を俺達が残すはずがなくて、慎重どころか早急に決断しなければならない状況が唐突に起こったことでクーフルはタイムリミットがあることを俺達に強要されていた。


「う、くっ……!」


 多大な焦燥感がクーフルを襲う。

 前後を挟まれた以上【千秋楽】をぶつけられるのはどちらか一方だけだ。


 俺に撃てば【千秋楽】によって一撃で殺されてしまうのは確実だ。

 だがそれはあくまで当たればの話で、【噴出】の速度を経験しているクーフルは絶対に俺に当てることが出来るという確信を持つことが出来ない。

 拳に加え既に両足にも雷による火花が散っていることから、狙われればすぐにでも【噴出】を使用するのは目に見えていた。


 そしてフリーとなったセルスによる渾身の一撃を喰らうことになるが、たとえ喰らったとしても光魔法の効果によって死ぬことは決してない。

 だが詠唱による二度の全力を喰らった時、意識を保ったままでいられるという自信もまた満身創痍である奴が持つことは出来ないだろう。


 対してセルスに撃てば、絶対に【千秋楽】を避けることは出来ないものの、最初と同じように【千秋楽】を破壊されてしまう可能性があった。


 そして同様に俺による渾身の一撃を喰らうことになる。

 セルスとはまた違うベクトルの、【断罪】のための一撃を通すことになる。


 考え、考え、考えて。


「貴方では私を超えることは出来ない……」


 時間にして二秒と立たない思考時間を過ぎ去った時、クーフルが身体を向けていたのは―――セルスだった。


「そうですッ! 貴様では私には勝てないッッ!!」


 その選択は、自身の呪法が《《喜劇》》によって強化されていることによる自信。

 強力なセルスの魔法がいきなり通らなくなっていた様子をこの目で見ていたが故の最も確実性のある決断だった。


 《魔呪召現【終極:千秋楽】》がまるで隕石のように空気を圧し潰しながら拳を構えるセルスへと放たれる。


『『『ギャハハハハハハハハハハハハハッッ!!』』』


『『『イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッッ!!』』』


 中央広場をギリギリ超えない程の大きさを持つ泥の塊に混ざり合っている怪物が、この後起こる地獄と間違う程の終わりを予測し絶叫に近い嗤い声を上げている。

 散々聞かされてきた絶望へ誘うための特大の闇は、人間一人の拳に宿るちっぽけな光など容易に覆い隠してしまう程に強大だ。


 だがセルスは――動かない。


「……星の光は、どんな暗闇だろうと強く輝いてるだろ」


 自分の持つ力を信じて疑っていないかのように蒼い瞳は煌めていた。


 どうしてそこまで、自分を信じられるのかはわからない。

 でももしその答えを、あいつがずっと嘘偽りなく語り続けていたのだとしたら。


「誰かを助けたいって強く想うことが、オレの持つ光をより輝かせてくれる!」


 それは誰かを助けたいという、強い勇気が心に宿っているからだ。


「《ルミナ・フラグメント【剛拳】》―――ッッ!!」


 何度も繰り返した、ただ光を纏った拳で殴るだけの単純な魔法。

 その殴打は幾度となく無力化され、満を持して登場した割には思うような期待値を上げることが出来なかった力だ。


 だが刹那【千秋楽】に衝突した【剛拳】はこれまでの10倍は超える程の強大な衝撃波を放ち続け、嗤い声を上げる怪物の塊を星の光が浄化させ続けているのだ。


 拮抗どころじゃない、圧倒的なレベルの差を感じさせる渾身の一撃。

 それは多大な衝撃波によって【千秋楽】を浄化し押し返したかと思うと、やがて遂に、満月程ある質量を完全に消滅させた。


 そんな光景を、クーフルは認めることが出来ずにいた。

 目を見開き、呆然と口を開きながら小さな呪法の残滓となって振り落ちる闇の光を絶えず眺め続けてる。


「何故……今までよりも、威力が……!?」


「悪いな……オレとオマエ、どうやら相性最悪みたいだ」


 クーフルの持つ《魔呪召現》は俺のどんな魔法であろうと破壊出来ない程強力な呪法だ。

 もしもクーフルが俺に固執せずにただ人殺しを楽しんでいるだけの極悪人だったなら、【千秋楽】を街のみんなに向けて放った時点で俺一人ではどうすることも出来なかっただろう。


 そもそもカイルに撃った時点でそうだ。

 俺ではクーフルに手が届かなくて、みんなが殺されたことで絶望した俺もまた自殺願望に則って殺されていたはずだ。


 でも……セルスがいたからそうはならなかった。

 あいつはクーフルの創り出す状況を幾度となく打開することが出来た。


 でもあいつには出来なくて……俺にしか出来ない事もある。


「――だがッッ!!」


 呆然としていたクーフルだったが、【千秋楽】が散ったという事実を苦汁を舐めながらも受け入れすぐさま俺の方へと振り返ろうと顔を向けた。


「どれだけ対策を施そうと、私はあんな魔法なんかにやられはしない! 来いよクソ天使ッッ!! 耐え切ってみせる! 貴方に私の強さを、証明してみせるッッ!!」


 《《喜劇》》によってより強化され外装をも纏った泥鎧は、新たに創り出した《ライトニング【破壊】》では最早届かない程に強固になっているのだろう。


 通ったとはいえ、一度見せたクーフルへの対策がもう一度通るとは限らない。

 元々クーフルには通りの悪い雷魔法だが、それを再度通るようにするためにはセルスと同じように、奴の強化された呪法以上に自分の魔力を強化する必要があるはずだ。


 だけど……俺には俺の持ちうる魔力の総量でしか勝負出来ない。

 それは俺の、役目じゃない。


 お前やセルスとこうして死闘を繰り広げたからこそ、気付くことが出来たんだ。

 俺の……俺だけの才能を。


「―――」


 拳と両足だけじゃない。

 全身を巡る魔力を一気に解放し、雷の魔力が火花を散らして強烈な雷光が俺の身体から放出された。


 それは一度奴との戦いの最中でアルカさんとラックスさんを守るために安易に使用した、俺が耐え切れない程の魔力を一気に放出させた魔法とは呼べない粗末な放電攻撃。

 あの時は全身が痺れて多大な隙を晒してしまったが、それでもあの時の雷魔法は俺の持つ魔法の中で一番に匹敵する威力を出すことが出来ていただろう。


 雷魔法の才があるとはいえ電気耐性が特段他の天使と比べて優れているわけじゃない。

 だがそれならそれで、対処法があることに気付いたんだ。


 身体が耐えられる限界まで魔力を放出し、足と地面を接地させアース線に見立てることで耐え切れない分だけを地面へと逃がす。

 この状態で両足を数センチでも上げたら俺はまた全身を痺れさせることになるが、奴自身が選んだことによるこの状況下ではその心配も一切無い。


 だからこそ俺は、全力を出すことが出来る……!!


「《アース・ライトニング―――」


「へえ―――ッッ!?!?」


 瞬間――俺は大きく一歩を踏み出した。

 床から足を離したことで耐え切れなくなる直前に全身を駆け巡る雷の魔力を全て右手へと送り込むことで感電を遅らせ、そのまま全魔力を籠めた拳がクーフルへと接触する。


「【破城追バタリン・グラム】》――――――――ッッ!!」


 そして雷による音速を超えた魔力を全てクーフルへと送り付け、強大な質量を持つ魔法が衝撃波を伴ってクーフルへと叩き付けられた。


 その衝撃波は、クーフルの持つ鎧を砕けない。

 だが一重、二重、三重、四重、五重と続く衝撃波が点でクーフルを貫く度に、徐々に強固な鎧に亀裂が走る。


「ギュッぐ、ううううううううううう―――!!!!」


「うぅぅぅおおおおおおおおおおおお―――!!!!」


 装甲が強化される度に、それに反発し一時的に魔力が増幅する性質。


 どうにか止めようとクーフルは注ぎ足すように鎧を修復していくが、俺の拳からなる雷撃はそれに合わせるように衝撃波の数を増やして行った。


 六重、七重、八重、九重―――


「ぐ、あああああああああああああッッ!!」


「ぉぉぉおあああああああ、ああああああああッッ!!」


 そして遂にクーフルの鎧が―――砕け散る。


 強力な防御壁を失ったクーフルが俺に出来ることはもう無くて、雷拳により強烈に殴り飛ばされたクーフルは宙を舞った。


 この一撃が奴の呪法を弱める決定打になったのだろう。

 宙を飛んでいる間に《《喜劇》》はどろどろに溶け出し、巨大なフィールドとなっていたドームも呪法の残滓となって消滅していく。


 落下し、もとの中央広場へと戻って来た俺達に続いて、クーフルもまた非常に高い高度から無防備のまま勢いよく地面へと叩き付けられた。


 故に、理解する。

 俺達は……勝ったのだと。

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