囮か?
扉には鍵がかかっている。
窓か。窓から外を見る。
ここは何階だろう? 飛び降りたらきっと死ぬな。それにしても我が家の防犯対策どうなってるわけ? 私は王太子の婚約者なのよ。護衛や影はついてないわけ? いや、護衛はたしかついていたな。護衛どうしたのよ。まさか犯人とグルだったとか?それにしても家の中にいて誘拐されるって普通ないでしょう。本当に公爵家の騎士団も何してるのよ。全く腹立つ。
さて、どうしたものかと思っていたら足音が聞こえてきた。
「これはこれはシュラット公爵令嬢、お目覚めですかな」
あっ、あの時のあの人だわ。なるほどそういうことか。
私の目の前に現れたのはナムーリ国の使節団の人だった。
あの時は第3王女だけの単独犯行だということになり、使節団は罪に問われず国に帰ったのだったわね。
この人たちも私の結婚式の来賓に紛れて我が国に来ていたのか。ということはここはどこかの宿泊施設だな。この部屋の雰囲気は高級ホテルだ。
しかし、ナムーリ国の人って我が家以上に危機管理意識薄いと見た。どこに泊まっているかなんて調べればすぐにわかるじゃない。しかも、前に一度やらかしているのだから、我が国としては他の国より注意を向けているはず。
まぁ、先にメイドを潜入させていたとは用意周到だ。きっとあのメイド以外にも何人か潜入しているのだろう。本当に何度も言うけど、シュラット公爵家の危機管理はどうなっているんだ。帰ったら文句を言わねば。帰れたらだけど。
ちょっと待てよ。あまりにも簡単に誘拐されすぎじゃない? いくらなんでもあり得ない。クロエが私から離れる訳もないし、これ、ひょっとして私を囮にしたの? まぁそれならそれでいいけどね。
「それで、私をどうするおつもりですか?」
私はその男に聞いてみた。
「死んでもらいますよ」
やっぱり殺すつもりか。
「私を殺せばラックノーラン国とナムーリ国は戦争になります。戦争になればナムーリ国は滅びますがそれでいいのですね。ナムーリ国の罪もない国民があなたのせいで皆国を失います」
「姫を殺しておいてよくそんな事が言えるな。お前は賊に殺されるんだ。ナムーリ国の者の手にかかったなど誰にもわからぬわ」
男は笑っている。
「あなたね。馬鹿じゃないの? ナムーリ国には影とかいないの? 第3王女は生きているわよ。我が国の王弟殿下と恋に落ち幸せに暮らしているわ。一応罪人だから公に出来なくて行方不明になったことにしているけどね」
男は驚いたのか目を見開き固まっている。
さて、私のハッタリはどこまで通用するかな。助けが来るまで時間稼ぎできればいいんだけどね。
囮なら、そこら辺に影とか助けとかがいるんだろうけどね。
アイク様は私を囮にするような奴だったのか。やっぱり婚約は解消だな。そんな奴と結婚なんてしない。
もう、私を面倒に巻き込まないでほしいよ。
家に帰ったら婚約解消して、王家から慰謝料がっぽり取ってやろう。
領地に戻って慰謝料で死ぬまでぐーたらして暮らすぞ。
私は大きなため息をついた。




