王妃様
はい、諦めますと思ったけど、やっぱりぐうたら生活に未練はある。
王命が下ったのであれば、逆らうことはできない。諦めるしかない。
それに、殿下は私の為に廃嫡するとまで言った。まだ断りたいと言ったら、周りのみんなから、そんな殿下の気持ちを踏み躙るつもりかと責められる。
私は知らないし、そんなの殿下の勝手でしょ。私が私の為に廃嫡してくださいと言ったわけじゃない。
「ヴィヴィ、王妃様は優しいわよ。あなたが殿下の妃になる事を本当に喜んでいるの」
今日は母と一緒に王妃様に呼ばれた。王宮に向かう馬車の中で母は私にそう言う。
母と王妃様は子供の頃から姉妹のように仲がいい。
父と結婚したのも、王妃様の紹介らしい。なかなか結婚しない父に母を紹介したら、ふたりは恋に落ち結婚したそうだ。
王妃様と母は私が生まれた時から私と殿下を結婚させたかったが、年齢差が10歳もあるので、諦めていたらしい。
「クラウディア、ヴィヴィ、今日は来てくれてありがとう。嬉しいわ」
「王妃殿下、本日はお招きいただきましてありがとうございます」
「堅苦しい挨拶はいいわ。いつものようにエカテリーナと呼んで」
王妃様と母は本当に仲がいいみたいだ。
「エカテリーナ様、娘のヴィヴィアンヌがなかなか良い返事をせず、申し訳ありませんでした」
母が頭を下げる。
「いいのよ。ヴィヴィアンヌ嬢からしたら、アイザックなんて叔父さんだし、嫌だと思うわ」
王妃様は案外面白い人かもしれない。
「そんなことはありませんわ。アイザック殿下は見目麗しく、ご立派でございます」
母、なかなか持ち上げるなぁ。
「まぁ、私に似て見目麗しいけどね」
王妃様は笑う。
「ヴィヴィアンヌ、ごめんなさいね。王太子妃とか王妃なんてめんどくさくて嫌でしょう。私も嫌だったからよくわかるわ」
えっ? 王妃様も嫌だったのか?
「でもね、我が国の王妃は結構面白いのよ。女は黙っていろって言う人はいないから、女でもどんどんやりたいことができる。私は商会を立ち上げて商売をしているし、代々の王妃もみんな色々な事をしていたわ」
そうなのか。
王妃様は話を続ける。
「でも、別に何もしなくてもいいのよ。国王陛下のサポートをしたり、子育てをしながら、社交界で闘う王妃もいたわ。よその国と違って人形じゃなくてもいいの」
つまり、働くも働かないも自分次第か。
「あなたは凄く頭がいいとお妃教育に派遣した教師たちは言っていたわ。政治や経済、経営にも興味があるみたいだと。せっかく王太子妃、いずれは王妃になるのだから、国の経営なんて楽しいんじゃないかしら?」
王妃様はにこにこ微笑みながら、マシンガントークを繰り広げる。
母はそれを楽しそうに聞いている。
国の経営か、面白そうだな。昔取った杵柄が疼き出す。
「王妃様、本当に私で勤まりますでしょうか」
「大丈夫よ。私がやってるんだもの」
そう言ってケラケラ笑う。
王妃様は予想以上に面白い。
私はどんどん外堀を埋められていった。




