勘弁してくれよ(フィル視点)
アイザックの側近でヴィヴィアンヌの叔父でもある、フィルの視点です。フィルはふたりの間に入って大変ではあるのですが、アイザックの事も好きだし、ヴィヴィアンヌの事は叔父として溺愛しているので、なんとかふたりがうまくいってほしいと願っています。
とうとう殿下がヴィヴィに求婚した。
ヴィヴィは私の可愛い姪、殿下は物心ついた頃から一緒にいる幼馴染で今は私は殿下の側近。いわゆる腹心の部下ってやつだ。
7年前、私が怪我をして公務を休んでいた時に殿下がうちに見舞いに来た。
その時に見たヴィヴィに一目惚れしてからずっと私は殿下の恋が成就するように動いていたのだが、今回の殿下の勇み足には正直参った。
ヴィヴィはご機嫌斜めで結婚はしない。手紙のやりとりもやめると言い出した。
殿下は凹んで使いものにならない。
あの人は頭も良いし、適度に腹も黒い。カリスマ性もあるし、能力もあるので王太子としては何の問題もない。
もちろん国王になっても上手くやっていくだろう。他国からの評価も高い。
なのにヴィヴィが絡むとダメなやつに変身する。
この7年、本当に大変だった。
ヴィヴィは叔父の私が言うのも変だが見目麗しい。キラキラ光る薄い金色の髪、すみれ色の瞳。真っ白い肌、薔薇色の頬。丸い目とぽってりした唇。華奢なのにメリハリのある身体。見た目は庇護欲をそそるのに、中身は年齢よりもしっかりしている。
読書好きだからか、頭も良いし、知識量は私なんかよりも凄い。発想も面白く、ヴィヴィの提案で色んな物を作り、我が公爵家はかなり潤っている。本当に15歳かと思うくらいだ。
8歳で殿下に見染められてからは秘密裏に王太子妃教育をしてきたので、マナーやダンス、その他のことも素晴らしい。家柄も筆頭公爵家の令嬢だし、王太子妃になることにはなんの問題もない。
それに、悪い虫が付かないように、この7年間、余程の事がない限り、屋敷の外に出さない軟禁のような生活をしていたので醜聞なども一切ない。
もう、ヴィヴィが王太子妃にならなければ他に相応しい者などいないと言っても過言ではない。
それなのにヴィヴィ自身が殿下との結婚は嫌だと部屋に閉じこもってしまった。
殿下が慌てないでもっとゆっくり距離を縮めていればこんな事にならなかったのかもしれない。
それにしても、ヴィヴィは殿下のどこがそんなに嫌なんだろう?
王子様と結婚するのは女の子の夢ではないのだろうか?
年齢差か?
やはり、叔父と同じ年の男と結婚するのは嫌なのか?
しかし、あの嫌がり方は少し異常だ。ミドルネームを使いジェフとして手紙のやりとりをしていた時もジェフの事は好意的だったし、ミドルネームだったので偽って手紙を書いていた訳ではない事も納得していた。
なんであんなに嫌がるのか?
一度ヴィヴィと話をしなくてはならないな。
まぁ、殿下にも泣きつかれているし、腹心の部下としてはなんとかするしかない。
私は意を決してヴィヴィの部屋の扉を叩いた。
「ヴィヴィ、少しいいか? 話をしたい」
扉が開き、ヴィヴィが顔を出す。
「結婚の話ですか? 私の気持ちは変わりませんよ」
「とにかく話をしたい。中に入れてくれないか?」
ヴィヴィはため息をついたが、扉を開け、部屋に入れてくれた。




