プロローグ
緩い設定の転生した令嬢のお話。ぐうたらしたい侯爵令嬢ヴィヴィアンヌを見守っていただけると嬉しいです。
私は面倒臭がりだ。
好きなことはやるけど、好きでない事や興味のない事は一切やりたくない。
できるだけ動きたくない。いつも座ったまま本を読んだり、刺繍をしたりしていたい。
ただのぐうたらなのだが、周りは身体が弱いとか、思慮深くお淑やかな令嬢だとか言いみんな勘違いしている。まぁ、よく思われるのはいいことかもしれない。
私には前世の記憶がある。
前世は日本人の貴子だった。
私はとても忙しかった。子供の頃は習い事と勉強。学生時代は勉強、部活、アルバイト。家は自営だった為に両親も忙しく、家事、弟や妹達の世話、店の手伝いもしていた。
大人になって就職してからは、自立の為に公認会計士や中小企業診断士の資格を取り、朝から晩まで働き回り婚期を逃した。
35歳で独立することになり勤めていた会社を辞めた日に事故で亡くなった。
死の間際に『私の人生って何だったんだ。生まれ変わったら絶対ぐうたらしたい。あくせく働かない、家事もしない、お金の心配もしない、何でも人にやってもらって好きなことだけして生きたい。今度生まれ変わったら絶対そうする!』と願った。
気がついたら私はベッドの上にいた。
私は死んだんじゃなかったの?
助かって入院しているの?
病室にしては広くて家具も可愛い。
特別室か。
色々考えていたら声が聞こえてきた。
「お嬢様~、お目覚めですか~」
メイド服を着た外国人が扉を開けて入ってきた。
「ヴィヴィアンヌお嬢様、そろそろ起きてくださいませ」
「ヴィヴィアンヌって私の名前?」
「寝ぼけてるんですか? 起きてくださいよ」
あぁ、そうだ。私はヴィヴィアンヌだ。そして私を起こしているのは侍女のクロエだ。
5歳のヴィヴィアンヌは朝目覚めた時に前世の記憶を思い出してしまった。
一瞬で貴子の35年分の記憶とヴィヴィアンヌの5年分の記憶が交差する。
私は熱を出し3日の間寝込んでしまった。