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Queen's Deadman's Q

作者: アキ

強烈な雨粒が窓を叩く。

乱雑にどかされた掛布団に足をのせ、息を荒げて眠る男が一人。

雷鳴と稲光が窓から差し込む。

雨足が強くなると共に脂汗と吐き出す息が増えてゆく。

そのまましばらくして男は目を覚ます。

未明に降り注いだ雨が嘘かのように日光が部屋に入り込み、心配性を拗らせいくつもある目覚ましが机の上で大合唱を始めた。

否が応でも訪れる未来に嫌気がさした表情のまま手慣れた手つきで目覚ましを止め、みずみず、と独り言を零しながらキッチンに向かう。

火照った体に冷たい水を流し込みしばらく考え込む。

「アレはN街区の4番付近の工事中の現場・・・今からだと原チャでギリ間に合うか」

時計を確認して足早に準備を始める、前日、朝食にと思ってとっておいた総菜の弁当はすっかり忘れ去られていた。

夢の中で見た景色を求め原付を走らせる。



少しずつ、日々の生活が億劫になるほど気温が上昇し、セミの鳴き声が町中に響き始めた初夏。

「4番は・・・こっちか・・・慣れねぇな・・・せっま・・・」

差し迫るタイムリミットを確認して原付がぎりぎり通れるくらいの路地裏を飛ばしていく。

やっと抜けたかと思うとそこでは古い建物の改修工事が行われていた。

「よし・・・間に合った・・・」

工事現場を間近で見ていた少女に声をかけ、近くの公園に送り届ける。

「おにーちゃん、フシンシャっていう人?」

「ちげーよ、お前お母さんは?」

「おしごと」

「一人で外歩いたら危ないじゃねーか」

「おかーさん、お仕事忙しいから、一人で遊んでって」

少し涙目になった少女の声を掻き消すように先ほどの工事現場の足場が音を立てて崩れ去っていった。

轟音と土煙がこちらまで舞ってきていた。

「んじゃあな嬢ちゃん」

「おにーちゃん、これあげる」

そう差し出してきたのは、少女のポケットでしわくちゃになったミルクキャンディ。

「ありがとな」

原付にまたがりヘルメットを着け、足早にその場から立ち去る。


俺は予知夢が見える。大抵俺とは全然無関係な人間が死んでいくだけの夢だ。

何故?とかどうして?とかは考えるのを辞めた。

死神のおとぎ話がこの街には流れていて、死神が子どもを攫ったりだの色んな迷信がまことしやかに囁かれているのが関係しているのかどうかは分からないが。

ガキの時に人が殺される夢を見て、その夢が本当に起きる事だったと気づいた時から違和感を覚え始めた。

夢で見た出来事がいつ起こるか分からない。しかし、夢の中では自由に動けるため夢の中で発生する時間帯と日付を覚えておく。

ガキの時は何を見ても何も出来なくてただただ怖かった、悪夢だった。

中学生の時に初めて手を伸ばして救ってみた。

それからは何故抱えてるか分からない罪悪感を払拭するために夢を見ては救う日々だ。


「タっちゃんおはよ~!もう司馬センがバチギレのカンカンだったよ!マジ!」

「げ、マジか、なんでキレてんの」

「遅刻しすぎなんだよ!!」

「うげ~、何とかうまい事言っといてくれたか?」

「もちだぜい!」

元気よくブイサインを突き出してきて何か物欲しそうな目でこちらを見つめている。

「あーあー忘れてねーよ、ほらイチゴミルク」

「さっすが社長サン!!ありがとうございやーす!」

「お前ホントに好きだなそれ」

「男がイチゴミルク好きで悪いか!鬼!悪魔!男の敵!」

「お前イチゴミルク飲みすぎて脳みそまでひたひたに浸かってんぞ」

「言いすぎだよ・・・タっちゃん・・・」

「どっちのセリフだ」

このバカは隼人、よく俺が遅刻するときに先生に言い訳しといてくれるいい奴。

イチゴミルクさえあげれば大抵なんでもしてくれる。宿題とかも。

「おいタっちゃん・・・!」

「あ?」

「司馬センだ・・・!!!」

ぼそっとヤバそうな表情をして隼人が呟く。

その刹那、隼人は背を向け廊下を猛ダッシュで駆け抜ける。

一瞬で判断し、俺もその後を追いかける。

司馬センは気付くのにワンテンポ遅れたがそれでも食らいついて追いかけてくる、真後ろから怒号が聞こえ、かなりヤバかったがなんとか撒いた。

「ハァ・・ハァ・・・クソ・・・脇腹チョーいてぇ・・・うまく言ったって・・・じゃあ逃げなくていいじゃねーか・・・なんで急に走るんだよ・・・」

「ハァ・・・いや・・・尿管結石で死んでるって・・・言った・・・」

「ド下手すぎんだろ・・・イチゴミルク返せ・・・・マジ・・・」

「ヤバい・・・今なら返せそう・・・」

「やっめろ!きったねぇ」

外についている非常階段の下でそんな話を繰り広げる。

この夢のせいで普通の学生生活は送れないけれど、こういうのも悪くないなと内心思って笑いあった。



しばらくしてそのまま二人して学校を抜け出してゲーセンに寄って解散した。

予知夢っていうのは毎晩毎晩見えるものじゃない。

ただ予知夢以外の夢を見ることがない。

寝る時は少し緊張するが、これでも慣れた方だ。

慣れた手つきでいくつもある目覚ましを再びセットする。これはなんとなく夢の世界から戻ってこれなくなってしまう予感がしてしまうからだ。

「明日は特に何も無し・・・寝るか」

俺に身寄りはいない。ガキの時に初めて見た予知夢は母親が強盗に殺される夢だった。

目が覚め、号泣した俺はそのまま母親に窘められ、小学校へ行った。

しかし、その日の昼。俺が小学校に行っている間に家に強盗が押しかけ、本当に殺されてしまった。

親父はそうして死んでしまった母親に暴力をふるっていた記憶しかない。

それから俺は自責の念に囚われるようになった。

母親の親戚にしばらくは助けてもらっていたが、中学にあがってからは一人で生活すると申し出て、少し援助してもらいながらここで暮らし始めた。

今でもあの日の夢を忘れたことはない。母親を殺した犯人はまだ捕まっていないけれど、こうして色々な人助けをしていれば、いつか奴に関する予知夢を見ることが出来るんじゃないかと思う。



今日も予知夢を見た。

110番っと・・・

「今日の13時42分にU街区のコンビニに強盗に入ります、すみません」

そう残し、原付を走らせ強盗が入る予知を見たコンビニへと向かう。

やはり、警察は優秀だ、ちゃんと来てくれている。

よし、俺も学校へ向かおう。


「よ、隼人」

「おいおいおいおい!!タっちゃん見てくれよ!これ!」

「んあ?」

「強盗がその日の朝に何時に強盗するか警察に電話してから強盗したんだってよ!笑っちまうよなぁ~どういうつもりだったんだろ」

「そういやしかも司馬センもそこに居合わせてたらしいぜ!?チョー面白くね!?どんな顔してたかマジ見てみたい」

腹を抱えてバカでかい声で一方的に話を拡げる。

コンビニ強盗とか、人の手で行われる犯罪は俺にも太刀打ちできるモノは少ない。

何かあったら俺が殺されかねないしな。

警察とかに任せておくのが一番得策なんだ。

とは、口が裂けてもコイツには言えねーけど。



その日の晩

カップ麺のタイマーをつけたところで突然ノックが部屋に鳴る。

穴を覗くとそこには刑事がいる。

事故の場所に居合わせたりするから事情聴取を受けたりしたことはあるが、家に来るのは想定外だった。

チェーンをそっとかけ、恐る恐るドアを開ける。

「あぁ、ごめんねこんな遅くに、こういうモノなんだけど」

「え、まぁ、はい、なんですか?」

「いやね、君、今日警察に電話かけたでしょ?」

「いや、特に記憶にないんですけど・・・」

「そうか、少し前から同じGPS情報から犯罪予告みたいな電話がかかってくるようになっててね、毎回本当にその通りに事件が起こるのよ」

「そうなんすね」

「しかも君、今日強盗があったコンビニの近くにいただろう?」

「あ~、のど乾いたけどなんか警察居たから寄るの辞めたんすよね」

「とぼけるのはやめな、どういうわけだい?」

少し物腰が柔らかかった顔が、今にもチェーンを引きちぎってドアを開けてくる勢いでこちらを睨みつけている。

多分俺が何か裏で操作している黒幕か何かと勘ぐっているんだろう。

「僕は本当に何も知らないんで、それじゃあ」

「いやね!」

言葉を遮りバタンとドアを閉めてドアから離れる。

「ポストに僕の番号を入れておくから!何かあったらかけてくるんだよ!」

「もう110番にかけずに、僕に直接かけてくれ!」

ドア越しにそう叫ぶ刑事。

無機質に鳴り響くタイマーを止めるのも忘れその場に立ち尽くしていた。



今日は珍しくいい目覚めだ。

予知夢も見ず、前々から引きおこる予定だったモノもない。

「久々に朝から学校行くかぁ」

学校の近くの駐輪場に原付を停め、徒歩で学校へと向かう。

「おっはよう!タっちゃん!」

「おめーか、たまには女の子から声かけられたいぜ俺は」

「タっちゃん女の子絡みないっしょ!」

屈託のない笑顔でこっちを見る、そのセリフには悪意もきっと無いんだろう。

「うっせー、もう遅刻ギリギリだぞ」

「いや、タっちゃんがそれ言う???」

意外とこの世の中事件や事故が多いもので、こうして朝から一日学校に居れる日は珍しい。

バタフライエフェクトっていう言葉があるけれど、事故ってのもそれが起こる前にほんの些細なきっかけがある。

道路に落ちているゴミを拾ったり、歩きスマホを注意すりゃ済むモンなんだ。

ドライバーが居眠りしたりとかは、どうしようもないけど。

だから誰かに感謝されたり、命を救っている感覚はあんまり無い。

そりゃもちろん、最初救えた時はすっげー嬉しかったけど慣れてしまった。

「なぁ、そういやタっちゃんってさ、なんで遅刻したり早退したりすんの?」

イチゴミルクと焼きそばパンとかいう最高に食い合わせが最低な飯を大事そうに抱えて聞いてくる。

「あ?」

「あぁ、いや別に答えにくかったらいいんだよ!」

「特に理由はねーよ、めんどくせーだろ、学校」

「いじめられてんのか?じゃあ今度は俺が守ってやるぜ!!」

ニコニコで空中にシャドーボクシングをかまして、焼きそばパンを落としている。

「ありがとな」



教室に着き、しばらくボーっとしていると担任の司馬センが訪れて出席確認をする。

「お、今日はいるのか・・・」

「そーっすよ」

「あとで生徒指導室に来てくれ」

「ま、気が向いたら」

じゃあ、今日の授業頑張るようにと残して教室を去っていった。

「タっちゃん流石に呼び出し食らっちゃったね」

「あぁ、俺も流石にいくわ今日は、尿管結石じゃねーし」

「んじゃあ頑張れよ!生きて会おう」

「おう、死んで来るや」

ガシッと手を固く結び、軽くため息をついて生徒指導室の扉を開ける。

「お、今日はやけに素直に来てくれたね」

「別に俺ずっと素直っすよ」

「そーいうところが素直じゃないっていうんだよ」

座れと顎でサインを送り、そのまま一点を見つめている。

見た目は本当に若いのだけれど、30代40代と言われてしまえばなんとなく納得してしまうその顔立ちは、整っている方であり女子人気もバカには出来ない先生だ。

「まぁ、なんとなく呼ばれた理由は察しがついてるよな?」

「さぁ、検討もつかないっス」

「はぁ・・・まぁいい・・・けど達哉君、君はただ遅刻したり早退してる訳じゃないみたいだな?」

あの刑事の仕業か・・・?

「いや、ただ遅刻してるだけっス、起きれないもんで」

「警察の人が学校に連絡を入れてくれてな、お前未然に事件をいくつも防いだことがあるみたいじゃないか」

「だからそれ勘違いなんですよね、俺もよく知らないんですけど、話ってそれだけすか?」

「いや、本当なら君は賞賛されるべきだと思ってね、違うならいいんだ、気のせいという事にしておこう、だが、何かあったら何でも僕に相談してくれ、僕は君の力になりたい」

「本当に気のせいっスから」

まっすぐな瞳に耐えきれず思わず目を逸らしながら濁す。

先生は少し呆れて勉強頑張れよとだけ残して先に生徒指導室から出ていった。

なんだったんだ。

生徒指導室の前で待っている隼人がいち早く俺に気付き声をかけてくる。

「お、タっちゃん生きてたんだ、先生が先に出て来たから殺されちゃったのかと思ったマジに」

「バカ言え、普通に終わったわ」

「そういや、タっちゃん、これ知ってる?」

そう差し出したのはスマホの画面。

「Q街区の・・・あぁ、あの死神のおとぎ話か?」

「そうそう、それをYoutuberがライブ配信しながらふざけ半分で試した動画があんだけどさ」

「どうなったんだ?」

「マジも大マジ、おとぎ話なんかじゃなかった。ガチにあっち側に持ってかれてたよ、警察が総出でインターネットから動画を削除しまくってるから、本当に何かヤバい事絡みなんだよきっと」

目をキラキラさせてこちらをのぞき込んでいる。

そういやこういう都市伝説系はこいつの専門分野だった。

「なぁ、隼人、暇じゃねーか?」

「え?いや、まだ午後授業あるじゃん」

「そうか・・・社会見学っつーのはどうよ」

「う~~~~ん・・・・・・悪くない!!!!」

目くばせをし学校を抜け出し、Q街区へと原付を2ケツして走らせる。

「なぁ!マジに大丈夫かなぁ!!」

「大丈夫だろ、あのおとぎ話あれだろ?振り返らなきゃいいんだろ?」

「いや、まぁ、そうだけど・・・」

「もうそろ着くぞ!」

Q街区はいわゆるスラム街と呼ばれるところなのだろうか、ならず者が溢れる街を壁で囲い、他の街区のスラムを殲滅することによってQ街区を犠牲にその他の街区の治安を維持する目的で作られた。

Queen’sDeadman’sと呼ばれるギャング集団が統治し、安寧と呼べるまでに今は落ち着いているらしい、だが、中から壁を破壊する目論見が後を絶えないといい常に衛星で見張られている。

シンプルにこの街を出れないのには理由がある。

このQ街区の出入り口は分厚い壁に挟まれた細い小道一本のみ

そしてこの小道に死神のおとぎ話が言い伝えられている。

チョコを食いすぎると鼻血が出るだの、ミミズにおしっこをかけたらちんちんがかぶれるだのそういう類の子供がいたずら半分に近づかない為の話だと思っていたが、どうやら本当らしい。

俺も母さんから口酸っぱく言われていた。

その小道は一度立ち入ると振り返るだけであの世に連れていかれるという単純なものだ。

ギャング達がぶるっちまって壁ぶっ壊したほうがマシって考えるんだから、おとぎ話ホンモノって考えるのが妥当な線だが。

「さ、行くか」

「な、なんでタっちゃんそんな冷静なの・・・???!?!?」

「いや、ショージキ超こえぇよ、なんだよこの雰囲気」

出入り口の前に立っただけで圧倒される禍々しい空気。

この先に感じる殺気は死神かはたまたDeadman’s共かどっちだろうな。

「本気で行く気かよ・・!!」

「まぁ、振り返らなきゃいいってだけだ」

「それ一回入ったら後戻りできないってことだよね!?」

「向こうまで行ききるか。後ろ歩きで戻るかするよ」

なんとか盛り上げようとムーンウォークをしてみるが隼人の表情は曇っていく一方だ。

「タっちゃあん・・・」

今にも目に涙を浮かべ、俺の腕を離すまいとしている。

だがここまで来たら検証せずに帰るのは、無茶なモンだ。

「分かった、一歩だけ、一歩だけ踏み込んで帰ろう」

「一歩だけだぞ!?分かった!?」

「ああ、お前はそこで見てろ・・・」

生唾を飲み込み、小道に恐る恐る一歩踏み込む。

その刹那、大量の殺気が俺を襲う。

瞬発力だとか、運動神経とかじゃなく、全身の野生本能が超大音量で危険信号を鳴らす。

これでもかと冷や汗をかきながら、全力でその場から離れる。

「ど、どうだった・・・??」

「ヤバすぎる、帰るぞ」

しっぽを巻いて小道を後にして撤退する。

隼人を家まで送り届け、まだ高鳴る心臓を必死に抑えながら帰宅した。

男の好奇心ってのは時としてとんでもない結果を生み出してしまうと反省した。

母さんは俺のこの性格の事分かってたんだろうな、アホだな俺。

母さんの事を思い出して初めて笑えた気がする。

「明日は19日・・・っと・・・」

カレンダーに独り言を言いながら18日にバッテンをつける。

「さ、寝るかぁ」



初めて学校で起こる事故の予知を見た。

今までにない緊張をしている。

ガス爆発が起きるから・・・

えーっと・・・

考え事をしていると少しずつ隼人の声が鮮明になっていく。

「・・ちゃん!!タっちゃん!!!」

「あ?あぁ、そうだね面白いね」

「聞いてねーからってマジにワンチャンに賭けて返事すんなよ・・・」

「あ、そうだ、隼人お前理科室の鍵持って来てくんねーか?」

「え、いいけど、今日の授業でやる実験の予習でもすんのか?」

「いいから、イチゴミルク買って待ってんぞ俺」

「マジか!行ってくる!」

まぁ、理科室の鍵開けて、バルブを閉めれば・・・オッケーだよな・・・

経年で緩んだのか・・・?

駆け足で戻ってくる隼人とお互いのブツを同時にふわりと投げ交換する。

「サンキュー、んじゃな」

「んんん!んんんんん!(俺も!おれもいく!)」

「ストロー離して話せ、禁断症状か」

「まってよう~!」

「来んなよ、待ってろ、もう別の授業始まんぞ」

「理科室でサボるんだろ?俺もサボるって~!」

「ちげーよ、じゃな」

軽く隼人をあしらって理科室へ足を運ぶ。

ウチの学校は少し変わっていて。

教室のみが入っている棟と音楽室や家庭科室などの特別教室のみの棟の2つから成っている。

外の渡り廊下でつながっており、理科室ももちろんその中の1階にある。

ウチの学校で何か起きる予知なんて初めてだから少し戸惑ったが、原因は理科室にあるガス管のバルブが緩まっていることによるガス漏れで爆発が起こる。

経年劣化が激しい特別教室の棟でとんでもない大爆発が発生して、教室側の棟も巻き込みながら学校がほぼ全壊、教師や生徒がほとんど死亡してしまうオチだった。

かなりの死者が生まれる。これに関しては先生に相談した方がいいと思ったが、昨日の今日で相談するのはなんとなく癪だった。

建物入ってすぐ、一階の理科室の鍵を開け、そっと中へと入ると少しガスのにおいが漂っている。

「これでよし・・・と・・・」

バルブをきゅっと締め、窓全開で換気をして、鍵を締めて廊下へ出たとき

強烈な爆発音と暴風で壁に体を強く打ち付ける。耳鳴りがやまない。

な・・・何がおきている・・・!?

フラフラになりながら慌てて逃げようと業火に背を向け出口へと向かう。

これは!!発火原因までは考えていなかった・・!!本当の爆心地は、準備室!!ガス漏れは、あくまでおまけの要素・・・!!まずい・・・失敗した・・・!

何故だ・・・!!予知が外れた・・・!?

このままでは理科室に残留しているガスに引火する!!

不安と疑念を抱きながら外へ飛び出る。

耳鳴りが少しずつ収まってきて、火災警報器のアラートがはっきりと聞こえてくる。

走りながら振り返ると上のフロアに人影が見える。

「なっ・・・!?」

唐突に葛藤が俺を襲う。

だがその葛藤に対して答えを導き出すより早く体が反射的に動き出してしまった。

近場にあった水道で全身に水をかけ、再び業火に足を向け飛び込んだ。

「おい!どこだ!逃げるぞ!!何してる!」

煙を吸い込んでしまわぬように手で口をおさえ、階段を駆け上がる。

予知ではこの棟に人はいなかったはず・・・

何かがおかしい・・・何か・・・何か!

人影を見かけた教室の前に着き、勢いよく扉を開く。もうすでに煙は建物中に充満していた。

「おい!!どこ・・・」

誰もいない。

何・・・?

焦りと疑念、煙のせいか動悸が止まらない。

ヤバい・・・意識が・・・。


「っちゃん・・・!!タっちゃん・・・!!タっちゃん!!」

ここは・・・?

「よかったぁ・・・生きてたぁ・・・」

「ハハ、俺が死ぬかよ」

「死にかけてたんだぞ!!!!」

顔をぐしゃぐしゃにして声を荒げている。

「泣くなよ」

「泣くよ!!」

「俺、これどうなってんだ?病院か?」

「そうだよう、ちょっと先生呼んでくるね」

「あ、あぁ、ありがとう」

駆け足で去っていく。

我ながらよく生きていたものだと思った。

「なんで俺刺し傷なんてあんだ・・・?誰かに刺されたっけか?」

火事に突っ込んで・・・それから・・・倒れて・・・それから・・・

???


強烈な爆発音で目が覚める。

まさか、予知・・・!!

一瞬気を失っている時に予知夢を見たのか!?

あたりは煙で真っ白、視界はほぼ死んでいる。

まずい、早く脱出しなくては。この建物がもうもたない。

重たい体を引きずり、廊下をしゃがみながら歩き始める。

だが、何故病室にいる予知なんだ・・・?

俺は何に刺された・・・!!

あの予知夢は何を予知したんだ!!

「よぉ」

突然何者かから声をかけられる。

「誰だ!」

ぼやけたシルエットが少しずつこちらに近づいてくる。

ガスマスクを身に着け、煙の中からぎょっと覗いている。

「ハハハ!!君なら来ると信じていたよ!実にしびれるねェ」

「何だ!誰だお前!」

「僕かい?僕はそうだね・・・名乗るほどの者じゃないけど、君のファーンだよ」

「なっ・・・??」

言い返す間もなく俺は腹にナイフを刺された。

血が止まらない。

「これで最後ダ」

視界が再び閉じる。


「っちゃん・・・!!タっちゃん・・・!!タっちゃん!!」

ここは・・・?

「よかったぁ・・・生きてたぁ・・・」

予知の通りだ・・・!

だが予知夢だったとしてここで何か事故や事件が起きるのか・・・!?

何も起きずに終わった予知夢は見たことがない。あれは終わったといえるのか、それとも中断したというのか。

「どうしたんだ?もうちょっとなんとか言えよう!」

「あ、あぁ、大丈夫だ、泣くな」

「大丈夫なわけあるか!死にかけてたんだぞ!」

看護婦が俺が目覚めたことに気づき医者を呼びに駆け足で去っていく。

火災の中で見た予知夢と少しズレている。

「おい・・・俺はどれくらい眠っていた・・・?」

「ちょうど火事から丸一日くらいだけど・・・」

丸一日・・・なるほど・・・

看護師が医者を連れてきたようで俺は簡単な質問をいくつかされ、精密検査を再び明日行うことになった。

隼人は面会時間の終了で帰っていった。

「もう、目覚めたんだね」

聞き覚えのある声が不意に話しかけてきた。

「あ、はい」

そこに現れたのはあの刑事だった。

「急ですまないが君、何故あの火事の場所にいたんだい?」

「いや・・・なんでですかね・・・ハハ」

「ふざけている場合じゃない!」

突然声を荒げる警官に俺は不意を突かれ、驚きが隠せなかった。

「ああ・・・すまない、僕は・・・君を心配しているんだ」

「心配?」

「君の身辺調査と最近の行動を調べさせてもらった」

「はぁ??」

「すまないね、これは本当に僕個人の勝手な行動だ、警察は全く関与していない」

「んで?何か?」

「隼人君だったかな?彼からも話を聞いた限り、君は身寄りのいない至極普通の高校生だ」

「まぁ、そうすけど」

「だが、まさかと思い先日N街区で発生した工事現場崩落事故があった周辺の防犯カメラを確認すると、原付に乗った君が近くにいた少女をその場から離しているよね?その少女は、そのままあの場にいたら崩落に巻き込まれて死んでいたはずだ。しかもそれだけじゃあない、君は他の事故の際もまるでその後に何かが起きることが分かっているかのような行動をとっている」

「はぁ、偶然ですよ、それだけですか?」

「にわかには信じがたいが、君には未来が分かるのかい?」

一点の曇りのない眼力に思わず本当の事を言ってしまいそうになる。

「分かるわけないじゃないですか、そんな非現実的なことあるわけないですよ、もう帰ってください」

「すまない、突然こんな話をしてしまって、だが君がもし苦しんでいるのなら僕は救ってあげたい、刑事として非常にふがいないが君が救っている命はいくつもあった、未来が分かるとかそういう事を抜きにしても、偶然だとしても、君の行動は賞賛に値する、今まで救ってくれた人達の気持ちを代弁して僕は君に感謝している。本当にありがとう」

立ち上がり、病室の扉に手を掛けながらそう言い残す。

「い、いえ・・・こちらこそ・・・」

まさかの言葉に俺は思わず口がどもる。

「僕の名前は大和、神崎大和だ、そういえば言ってなかったね」

「俺の名前は、八尾です、八尾たつ・・って知ってるか・・」

「ハハ、すまないね突然、また来るよ、その刺傷の事情も聴かなきゃならないし、今日はゆ

っくり休むといい」

「いえ、じゃあまた明日」

「ああ」

信用出来るかも知れないと感じ、少し考察する。

しかし、刑事さんが出ていくと同時に入れ替わるように再び扉が開く。

「達哉君!大丈夫か!?」

今度は担任か・・・・

面会終了時間ってのはどこいったんだ・・・

「全然大丈夫っすよ司馬セン」

「よかったぁ・・・理科室でガス爆発が起こったと思ったらお前が巻き込まれてしかもナイフで刺された傷があるなんて救急の人から聞いた時はもうどういうわけか・・・」

「大丈夫ですよ、特に今は元気っす傷は痛みますけど」

「そうかそうか・・・さっき出てった人は警察の人か?」

「ああ、ハイ、そうす」

「何話したんだ?」

「いや、特に何も、この傷の事くらいす」

「そうか・・・まぁ、元気そうでよかったよ・・・本当に」

腰を抜かしそうになりながら貧弱な声でそう呟く姿は普段の司馬センらしからぬ姿だった。

「今日はもう寝ますよ俺、明日精密検査なんで」

「あ、ああすまないな、こんな時間に、帰るよ」

今日はなんだかとても疲れた。

まだ頭の中でぐるぐるとガス爆発と気を失った時の予知の記憶が蠢いている。

予知の中で見た予知はどれも外れていた、つまりあの夢は存在しないアンノウンの世界線、考慮外で問題ないだろう。

何だろう、この違和感は

ハッと何かに気づいた瞬間


今までそこに居なかったダレかがソコ立っている


「やっぱり死ななかったか全く」


ガスマスクをした見覚えのあるソイツは蛍光灯に照らされ不気味な雰囲気をこちらに漂わせていた。

何故か逃げなくてはならないのに思うように体が動かない

そのまま全身にゆっくりとナイフを突き刺す、無機質に死ねと呟きながら何度も何度も

殺意を少しも感じないおぞましさとあふれ出る血に一つも声がでない。

突如として耳に飛び込むジリリリリリという音

警報・・・?なんだ・・・???

何故かだんだんと増えていく

そして何故かコイツはその音を気にも留めない。

更に俺はこれを聞きなれている。

やはりこれは・・・!!!!



「うああああああああああああああああああああああああぁああああ!!!!!!!!」


ジリリリリリ・・・・・

目が覚めるといつもの俺の部屋にいた。

真っ先に目に飛び込んだのは18日にバッテンがつけられたカレンダー

目覚ましの音か・・・・

やはり・・・やはりそうだ・・・!!!

「ゆ・・・め・・・??」

あの爆発事故の一連の流れ・・・ガスマスクの男・・・あの日丸一日と気を失って目覚めて俺が殺されるまでが・・・予知夢・・・!!

俺が殺される予知夢だと・・・!?

夢を夢として認識していなかった・・・失態だ・・・眠りが深すぎたのか・・・!?

ガス爆発が起きる予知夢を予知夢の中で見ているから・・・

もうだめだ頭がパンクしてきた。

こんな鮮明な予知夢初めてだ。

一体どこが交差しているか分からないが、一つ言えるのは学校が爆発する予知に関しては本当という事だ、あのガスマスクの男の陰謀に違いない。

「とにかく学校へ急ごう」

原付で風に当りながら状況と記憶の整理をする。

俺は夢の中で2度夢を見ている。

まず起床する前、これはバルブを締めればガス爆発を止められる計算だった。

それがバルブを締めても爆発は起きた、あれは理科室ではなく多分隣の理科準備室が原因だ。見れば分かる。

そして火災の中で気を失った際の予知夢

あれは予知夢と言えるのか疑問だ、何も起こっていないし、その後本当に病院に担ぎ込まれることにはなったが微妙に内容にズレがあった。

誰かが死ぬような内容でもなかった、気を失ったという状況が夢を途中でカットさせたのかも知れない、あの夢は当てにはならない。

なら、俺が出来ることはただ一つ。

そもそもの原因の爆発を止める。

そしてあの教室にいた人影を捉える。あの男がガスマスクの男だ。

ぐずぐずしてられるか。

とうに30km/hなんて超えた速度で原付を走らせる。

まだ、ほとんどの人間が登校途中だ。

雑に原付を近くの駐輪場へ停め、歩きながらあるところに電話をかける。

「はい、はい・・・多分なんすけど・・・そうです・・・お願いします・・はい・・すみません突然・・・それじゃあ」

電話を切ると同時に駆け足で学校へと向かう。

「司馬セン!」

「おお、達哉、おはよう早いな今日は」

「ああ、理科室と準備室の鍵貸してくれよ」

「え?」

「理科室と準備室だ!!」

「な、何に使うんだ?」

「いいから早く貸せ!!」

こちらの形相を見て察したのか急いで職員室の中へと向かう。

やっと持ってきた所を強引に奪い取り、急いで別棟へと走る。

息切れし、震える手でまず理科室の扉を開ける。

バルブを慎重に閉め、更に走って準備室へと向かう。

「間に合え・・・!間に合え・・・!!」

しかし、かすかに見えた希望はすぐさま絶望へと切り替わる。

準備室の鍵穴に、借りた鍵が入らない。

「は!?この鍵・・・」

音楽室・・・・・???

その時突如鳴り響く足音。

「やぁ、夢ぶりだ」

「テメェは・・・・!!!!」

「やはり君は厄介だ、ヒーロー気取りのクソガキが」

「うるせぇ!!」

叫び、掴みかかりに走るのと同時にすさまじい爆風にお互い吹き飛ばされる。

「ふっざけんな・・・・!!」

準備室の目の前で立ち尽くしていたせいでモロに爆破を食らってしまった。

激痛が全身を駆け巡る。

予知夢だったお陰で痛覚がなかったのか・・・

違和感の正体はコレだったんだ・・・まるで痛みを感じなかった

ならやはり、これはやっぱり・・・現実だ!!!

「はは・・・ハハハハハ!!!!最高だ!!!そうだ!お前はまだ死なない!!!そして俺もまだ死なない!!」

「ああまだ死なねぇ!!テメェをぶっ倒すのが先だ!!!!!」

「つくづくアホな男だ!お前は自分が侵している領域の表裏を理解していない!これはその世界の悲惨の炎だ!!」

「何を言っている・・・?」

気付いたら業火に建物を覆われている。このままではマズイ。

だが、ここで引き返すわけにはいかない。

予知の通りに・・・

「いかせてたまるか!って顔してるなァ」

勝ちを確信する表情をするのがガスマスク越しでも手に取るようにわかった。

炎は勢いを増し続けるのに考えれば考える程冷や汗が止まらない。

「お前・・・やはり・・・!」

「ハハハハハハハ!!!自分だけだと思ったかい?なぁ!!!」

堪えきれずに零れた笑いが屋内に響く。

煙は既に空間を支配し、肺がメラメラと燃える感触が全身に伝わる。

「てめぇ・・・は・・・・」

膝から崩れ落ち、もはや立つことは出来なくなっていた

いってぇ・・・・痛すぎる・・・・

肌は焼けただれ、骨もいくつか爆破の衝撃で逝ってるんだろう。

「じゃあね、また会おう」

「ま・・・て・・・!!」

正体はもうわかりきっているんだ・・・!今ここで逃すわけには・・・!!!

「タっちゃん!!!どこだ!!!」

「おめぇ・・・な・・にしてんだ・・」

「何って逃げるぞ!」

肩を担ぎ、引きづるように火を潜り抜け脱出する。

「大丈夫か!?」

「だ、大丈夫・・・だ・・・」

言い終わる前に視界が暗転する。



目を見開くと3度目の景色。

だが何か様子がおかしい。

「達哉さん!?達哉さん!わかりますか!?」

看護師が俺が目覚めた事に気付き先生を足早に呼びに行く。

何故だ、隼人がいない。

看護師も医者も見たことがない面だ。

「達哉君?自分の名前はわかるかい?」

返事をしようとしても声が出せない。体も思うように動かない。

なんとかして首を縦に振る。

どの予知とも違う結末だ。

「どれくらい眠っていたかわかるかい?」

どれくらい眠っていた・・・?

丸一日じゃないのか?

分かりやすい戸惑いの表情に応えるかのように医者は神妙な面持ちで「5年」とつぶやいた。

「あぇ・・・・!!」

衝撃のあまり喉をこじ開けるように思わず声が漏れた。

5年・・・!?

なんだと・・・!?

だが、心当たりはある、爆風を諸に食らったうえ、圧倒的に煙の中の滞在時間が違いすぎた。

しかし、あの事件の記憶も全て昨日の事のように鮮明に覚えている。

脳が何一つ追い付いていなかった。

「無理もない、これでも目覚めたのは奇跡に近い、後遺症の可能性はぬぐい切れないが、少しずつリハビリをすれば元の生活に戻れる、明日から少しずつ検査をして異常を調べるからね」

そう言い残し、看護師といくつかやりとりをして医者は去っていった。

「お友達がしばらく毎日お見舞いに来てたんですけどね、入院してから少ししたらそれきり見えなくなっちゃって、また連絡してあげてください、よく私に話してくれたんです、特に事故から助けてくれた話を嬉しそうに」

隼人だ。看護師になんて話してやがるアイツは。

頭の中で様々な記憶が入り乱れる。

混乱する脳の中、病室にノックが鳴る。

「やぁ、達哉くん」

司馬・・・猛・・・・!!

「じゃあ私はこれで、後でまた様子を見に来ますから」

看護師はいそいそとカルテや資料をまとめ、退室した。

「その目、実に5年前を昨日の事のように感じているような闘志に燃える目、久しぶりに見たねェ」

「どうした?何もしゃべれないかい、そうだよねぇ5年振りだ」

「君は生き残るべくして生き残ったんだ、奇跡だなんて言ってくれるなよ」

「僕はね、死神を信じているんだ、人っていうのは人が殺すモノじゃないんだよ、人には人の死期があり最期がある」

「だから僕が直接手を下すなんて最低なことしたくないんだよ」

何を言っている?コイツは。

「けれど僕なりの懺悔も含めて昔話をしよう」

「今だともう17年くらい昔になるのかなぁ、僕はひどくお金に困っていたんだ」

なっ・・・?

「本当に生活に困ったんだ」

まさか・・・

「僕は目についた手頃そうな女の後に着いていって、そのまま家に押しかけて金品を奪おうとしたんだ」

「そしたらその女が俺に抵抗するもんだから殺しちゃった、ギャハハ」

コイツが・・・・!!!

「奪った金品で僕は人生をなんとか立て直して、必死で勉強して教師になったんだ、面白いだろう?人殺しが子供の未来を創造する様は」

「僕はその時初めて死の美しさというモノに気付いてしまった」

「人間の終末というモノの儚さ、美しさは僕の物足りない人生をとても刺激した」

「だが美しければ美しいほど僕がいかに汚れているかが鮮明になった」

「絶望したよ・・・自分の血まみれの手を千切りたくなって、しばらくその場で泣いていた」

「でもそれ以来夢を見るようになった」

「人を殺す夢だ」

「どの夢もどうすれば僕の手を汚さずに殺せるか見れるんだ」

何・・・???

「最初は全部妄想だと思っていた、ああ、イカれちまったんだなって思った」

「けれど、初めて試した時、僕は、僕は本当に笑顔が止まらなかった、リアルに失禁したねアレは」

「だが、そんなに素晴らしい日々も長続きはしなかった」

「ずっと上手くいっていた僕の趣味が何者かによって邪魔され初めて失敗した」

「それからどれもほとんど上手くいかなくなった、最初は偶然だと思ったよ」

「だって、ちゃんと夢では死んでいるはずなんだ」

「これは僕に対する試練だと思った」

「現場に残り観察していると毎回毎回君という存在が邪魔をしている事に気付いた」

「どうしてやろうかと思っていた矢先、僕が担任になる教室に君の顔を見かけたとき」

「運命や死、その輪廻の恐ろしさを思い知ったね、君を早く殺したくてしょうがなかった、僕は君が生きているだけで夜もぐっすり眠れないんだ、だが君の死期はまだみたいだね、本当に早く死んでく・・・」

「おっと、少し話過ぎてしまったね」

「リハビリ頑張ってくれよ」

「またいつか会えたら会おう、皆卒業してしまったが、学校で待ってるぞ」

アイツが・・・

司馬の野郎が・・・俺の母さんを殺した犯人・・・だと・・・????

絶対・・・絶対に許さない。

下唇を噛み締めあふれる涙をぐっと堪える。

やっと犯人を見つけた。

殺してやる、絶対絶対殺してやる、許さない、殺してやる。

俺が復讐してやる、許してたまるか、殺してやる、殺してやる!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

動かない体にムチを打って、必死に動かそうと試みる。

沸騰した血液が全身を駆け巡る感覚に取りつかれる。

だが、自分の器から零れるほどのドス黒い感情に相反してその体はほとんど返答がない。

ああ・・・俺はもうだめかも知れない・・・

母さんの仇で・・・今まで救ってきた事故は全部アイツの快楽の為で・・・

母さん・・・俺はどうすればいいんだろう。

その時再び病室のドアが開く。

「やぁ・・・僕の事、分かるかい?」

神崎・・・大和・・・!!

「アハハ、その顔だとどうやら覚えてくれていたみたいだね!」

何故か夢でこの人に言われたことを思い出して、堪えていた涙が決壊した。

「どうして泣くんだい!落ち着いてくれ!」

「ありがとう、僕を頼ってくれて」

「僕は君を信じていた、必ず目覚めてくれると」

「きっと君は否定するだろうが、僕が何を言いたかったかは、もう分かっているんだろう?」

「あの電話を受けて僕は本当に嬉しかったと同時に自分の不甲斐なさを呪ったよ」


「もしもし」

「君は・・・」

「大和さん、神崎大和さん、俺の学校の教師に司馬猛ってヤツがいます、ソイツの事を調べてください」

「な・・・?」

「君の学校の教師の司馬ね・・・!分かった」

「それと、今日大規模なガス爆発が学校で起きるかも知れないです。頑張って防いでみますが、無理かも知れません。」

「なんだって!?すぐに警察を・・・」

「大丈夫です、けど、僕に何かあったら後はお願いします」

「ダメだ!子供にそんな事任せられ・・・」

「いや、いいんです、とにかく司馬を、司馬をマークしてください」

「分かった、無理だけはするなよ」

「すみません突然・・・それじゃあ」



「君は確実に真相に近づいている、だから焦るな、無理をするな」

大粒の涙を零す俺の背中をさすりながらそう続ける。

「僕が君の手となり足となる、リハビリにも付き合おう、共に奴を倒そう」

上手く声を出せないが、俺が今欲しかった言葉を全て与えてくれた安心感が俺を優しく包む。

「大丈夫だ」

「今日は僕が一緒にいよう」

そう続け、それからはただただ嗚咽する声だけが部屋に響いた。



半年後

「やぁ、達哉君、だいぶ歩けるようになってきたね」

「はい、ありがとうございます、大和さんのお陰です」

「いや、僕は何もしていないよ、君の努力だ」

大和さんはこうして数日おき程度顔を出して、爆発当日の様子や俺の予知夢に関する事、救ってきた事故、事件にほぼ司馬の存在が確認された事など様々な情報共有をしてきた。

しかし、隼人はケータイに電話をかけてもつながらない、大和さんにも聞いてみたが、そもそもこの世界線では接点すらなかった。

この半年予知夢は見ることが出来ていない。いや、見れなくなったのかも知れない。

今日もどこかで奴が誰かを殺そうとしていると考えるとおぞましく、不安になる。

しかし、司馬はこの5年自分がマークされている事に気付き、教師としてのキャリアを捨てどこかに身を潜めているらしい。

俺の病室に訪れたのを最後に再び行方が分からなくなったが、それでも大和さんは潜伏先を今もなお探してくれている。

本当に心強い味方が出来た。

あの時電話していなかったら、俺一人ではどうにもいかなくなっていたところだった。

「あ、雪だ」

「ホントだ、雪っスね」

「今夜は冷えてるな、風邪ひかないように気を付けてくれ」

「ハイ、また来てください」

「ああ」

早く司馬を捕まえないと、俺に残された時間がどの程度かは分からない、焦燥する気持ちだけが高まっていく。

張り詰めた緊張の糸を一本一本ほどきながら、泥のように眠った。



「久々に・・・予知夢を見た・・・」

どうしようもない無力感が俺を襲う。

その時、勢いよく病室の扉が開いた。

「達哉くん!司馬の!司馬の潜伏先が判明した!」

「えっ、本当ですか!」

「ああ!Q街区の18番、Q街区に残された未開拓の山林だ」

「Q街区・・・あの小道のですか?」

「迷信だよ、気にするな、昔ここに配属されていた時があった」

「アレってマジに迷信すか?」

「ハハ、なぁに気にするな、ちょっと空気が変わっているだけだ」

「そ、そうすか・・・」

「ああ、顔色悪いけど大丈夫かい?無理はしない方がいい、君の体はまだ万全とは言い難い」

「いえ、大丈夫です」

こちらを心配する表情から笑顔へと切り替わり、車へと案内される。

猛スピードで車と車の網目をかいくぐり、そのまま目的地へと飛ばす。

「俺、大和さんに言わなきゃいけないことがあるんです」

「大丈夫だ、言わなくていい」

「え?」

「昨日久しぶりに予知夢を見たとかそういったとこだろう、しかも内容はそんなに良くなかったとか」

ドンピシャで当てられ、思わず逃げ場を失う。

「ハハ、気にしないでくれ、表情で出したい察しがつく職業病だ、嫌な特技だよ、初めて会った時から君の事を疑う気持ちより、何かとてつもないモノを抱えている表情だと思っていたしね」

そういって笑い飛ばす。

「さ、着いたぞ」

車を停め、見慣れた小道の前で停車する。

やはり何度来てもこの雰囲気は耐え難い、古い記憶が蘇り、足がすくむ。

「そう・・・ですね・・・」

なんとも言えぬ緊張感が漂う。

「何度来てもぶるっちまう空気だな、ビビるなよ」

「前にも来た事がありますけど、エグイですよね、ここ」

「だがここを通らなければならない事に変わりはない、行こう」

ゆっくりと小道に足を踏み入れると、以前感じた膨大な殺気に襲われる。

冬の寒空の中、乾燥し冷え込んでいた空気のはずが一気に生ぬるく、じめじめとした空気へと変わる。

まるで人肌に触れているかのような生々しさに覆われながら歩を進める。

噴き出す汗を拭う余裕すらなく、ゆっくり一歩一歩。

首を何者かに撫でられる。

息を吹きかけられ、まるで振り返れと声を掛けられているような感覚が頭からつま先まで支配する。

「大丈夫だ、気にするな」

もう少し、もう少し・・・!!!

もう・・・少し・・!!!!!



息を切らし、なんとかあの小道を抜け、ついにQ街区の中へと侵入出来た。

「何者だ」

銃を突き付けられ、屈強な男たちに囲まれる。

「アハハ・・・こういうモノで・・・」

両手を上げたままゆっくりと警察手帳を開く。

「警察が何の用だ」

「Deadman‘s諸君らをひっ捕らえに来たわけじゃないよ」

「オイ!お前ら!何をしている!!」

突然後ろの方から女性の怒鳴り声が聞こえてくる。

「いえ!姉さん!警察を名乗る侵入者がいまして・・・」

「ナニィ?警察?まさか!」

男たちをかき分けそこに現れたのは、眼帯をつけた金髪の美人。

「やぁ、Queen」

「大和!!元気していたか!お前らァ!!!銃を下ろせェ!何をしている!」

まさか・・・?あのギャング組織のトップ???

けどなんで大和さん・・あんなフランクに話してるんだ????

一瞬で起きた出来事の情報量に頭がついていけていない。ぽかんとしてしまった。

「立ち話もなんだ、街へ行こう」

「いや、歩きながら話すよ、18番に用があるんだ」

「どうしたんだ?あんなトコ何もないぞ?」

「いや、少し人探しをね」

「何、手伝ってやろうか?」

「大丈夫だよ、Queenの手を借りる程落ちぶれちゃいない」

「フン、相変わらず無茶しているようだな」

「僕以上に無茶をするヤツがいますから」

そういって笑って答えると二人してこちらをのぞき込む。

「ああ、そういえば説明してなかったね、ここに配属されている時に世話になったんだ」

「世話になったのはこっちのセリフだ、貴様がいなくては我々社会からあぶれた者達は居場所を失うところだった、お前は我々の英雄だよ」

「褒めすぎだよ、らしくもない」

「そうだったな、ちょうど食料が尽きたし、晩飯の食材にでもしてやる」

「若者の肉の方がきっと旨いですよ」

高笑いをしたその表情はとても美人で、ギャングのトップだなんて見えなかった。

「んで、誰を探しにきたんだ?」

「5年程前からここを出入りしているヤツはいないかい?18番に出入りしているようなんだけど」

「ああ・・・?18番に・・・?いや、すまない分からないな、だが使われていない古屋敷があるぞ」

「古屋敷・・・・ですか、分かりました」

「なぁに、お前の事だどうせその古屋敷に向かうっていうんだろ?」

「当り前だ、ありがとう」

「大和、一つギャングの掟を話してやる」

「なんだい?」

「死ぬな」

「任せろ、Queen、生きて帰るよ」

ギャング所有の車両を借り、18番を目指す。

「こ・・・こか・・・」

「そーっすね・・・」

未開拓のはずなのに誰かが足を踏み入れた形跡がある。

「とにかく行ってみよう」

草をかき分けながら、地図を頼りに進む。

「そういえば、どうやってこんなトコに潜んでるって分かったんですか?」

Queenが知らないのなら、この街区からのタレコミではないはずだ。

「全街区に存在する全防犯カメラの映像を確認して、18番までは特定した、だが一度入ったきりここ5年、18番から出ているところは確認できてないが」

「え?でも確かに俺の病室にヤツは・・・」

「多分古屋敷の地下かどこかにこの街区から抜け出す別の出入り口でもヤツは作ったんだろうな」

「なるほど・・・それなら合点がいきますね・・・」

「ああ、もう少しで着くぞ・・・!」

少し開けたところに出たと思ったら、そこには古びた屋敷が門を構えていた。

禍々しい空気感が森を包む。

「またボロい屋敷だな」

予知の通りに行けば、大和さんは司馬とエンカウントすることによって殺される。

だが司馬は俺がその死の道を断つと分かっているから予知夢で見た方法では殺してこないだろう。

大和さんの死も近くなっているという事だ。

「司馬!警察だ!出てこい!」

門を轟轟と揺らすと、軋む音を奏でながらドアが開く

「やぁ、神崎さん、八尾君、久しぶりだね」

そこには屋敷の見た目に反し、髭を剃りスーツに身を包んだ小綺麗な司馬の姿。

さらっと大和さんの名前を口にし、俺に対し挑発するような表情をしている。

「てめぇ!」

大和さんが激高し、門をこじ開けようとする。

「まぁまぁ、少し話でもしましょう」

ここから既に予知の世界線からズレ始めている。

「ふざけてんのか!」

「ふざけてなんかないですよ」

そう言い玄関先へ座り込む。

「私には信念がある、絶対に逃げ切るという、信念が」

そう零し、続ける。

「いや、ね?僕、達哉君の事ソンケ―っていうのかな?してたんだよ、ひーこらひーこら人助けなんてしちゃって、何してるんだい?ほんとに、ヒーローにでもなったつもりかい?」

「あぁ??」

「君達は死神を信じるかい?」

あからさまに怪訝な表情をしてしまう。

「死神だよ死神、分かるだろ?あのよく鎌とか持ってるイラストの、超ポピュラーな死神だよ」

「死神ってね、この世にいるんだよ、本当にびっくりしちゃうよね」

以前ヤツが口にしていた言葉を思い出す。

「何が言いたい??」


「君が助けた人たち、今どうなってるか知ってるかい?」


その言葉を聞いた時鳥肌が全身を包む。

最悪の想像が頭に過る。

「ハハハ!!いかにもな表情をするねェ!!」

「だれだったっけ?あの見るからにお調子者のバカの・・・はや・・・なんとかクン・・・?だったっけ?彼も今頃何してるんだろうねェ・・・」

にやりと口角を上げ、こちらを覗く。

「て・・・めぇ!!!!!!!!!!!!」

怒号をあげると同時に様々な記憶が頭を駆け巡る。

「どうした?君は救ったつもりだったらしいが、人間死ぬときってモンは決まってるんだよ、死神に逆らうことは絶対に出来ない、誰であろうと」

絶望が襲う

「大丈夫だ!気を確かに持て!」

「ハハハ!!!実に・・・実に君は短絡的でバカで幼稚で考え無しだ!」

そう司馬が叫ぶと同時に銃声が鳴る。

「ハァ・・・てめぇ・・・それ以上言ったらホントに殺すぞ・・・」

「おお、怖いでもねェ死ぬ時が決まってるって言ったろ?それ以外の時は絶対に死なないんだよ、まだ死神のお迎えは俺の元には来ない、隣の奴が一番それを理解しているはずだぜ・・・?」

弾丸にひるむ余裕すらなく、その顔は笑みを浮かべている。

「もひとつ教えてあげよう。サラエボ事件を知っているかい?かの第一次世界大戦のトリガーとなった皇太子暗殺事件だよ」

「それがどうした!!」

「実は一度暗殺に失敗してるんだよ、この事件。皇太子は一度目に起きた襲撃で負傷した人たちの見舞いに行こうと思って、病院へ向かうつもりだった、だがそれが運転手に伝わっていなかったせいで車は道を間違えて細い路地に入ってしまう。慌てて元の道に戻ろうとしていたらたまたまその路地のカフェで暗殺者たちがサンドイッチを食べてたんだ。ホントに偶然に、たまたま気付かれてしまったから殺されたんだ、一度目は避けたのに、二度目は避けきれない」

「死神っていうのはただ人を無差別に殺しているわけじゃない。歴史を正しく描いているんだ」

「それを!!お前は!!!乱しているんだ!!!」

母さんが殺された。

それも歴史の一部。

隼人が死んだ。

それも歴史の一部。

これから大和さんも死ぬ。

それも歴史の・・・一部?

ふざけるな。

そんなことがあってたまるか。

俺も自分が死ぬ予知を確かに見た。

つまり俺も死神の鎌が首にかけられているということ。

一引きすればその首は簡単に跳ねとぶ。

混乱と絶望と覚悟の先に希望が見えた。

「大和さん、アイツを殺します」

「何を言っている!?それでは君もヤツと同類だ!」

「いいや、俺が殺すわけじゃない、ヤツにも死神の鎌をかけてやりましょう」

「なんだと?」

「大和さん、俺は今日アナタが死ぬ予知を見ました、ヤツが言っていることが本当ならここで避けてもアナタはいずれ死ぬ、そして俺は俺自身が死ぬのも見た、だから俺もそろそろお迎えが来てもおかしくないってことです、でも」

「アイツに好き勝手殺させるわけにはいかないってことか」

「はい、いくらその人間の死期が近づいているからって、殺していい理由にはなりません」

「ああ、間違いない」

にやりと口角を上げる

「作戦は?」

「もう立ててあります、スーッと頭がさえました。奴は、ここで俺たちを逃がすとヤツが抑えている殺人衝動が限界を迎えます。死神が歴史を描くなら、その描いているヤツに任せればいいわけで」

「だからこういうわけです・・・」

「何をべらべらしゃべっているんだい?最後の言葉は終わりかい?」

「ああ、今ちょうど終わったとこだ」

「さぁ、始めようか」

「いいや、すきにしてくれ」

そう答えると同時に二人でやって来た道を猛ダッシュで戻る

「何!?」

「逃げるが勝ちなんだよ!!」

「これ以上・・・これ以上邪魔されるわけにはいかないんだよ!!!!!」

必死の形相で追いかけてくる。

隼人、お前とセン公から逃げたのを思い出すな。

Q街区の出口を目掛けて走り続ける。

「待てェ!!!」

18番を抜け、借りた車両へと飛び乗る。

ヤツも手ごろな車を奪い取り、こちらを追いかけてくる。

どちらもアクセルを全開まで踏み込み、狩るものと狩られる者のカーチェイスが始まる。

「大和さん」

「なんだ!」

「この作戦は、やっぱり俺が引き受けるべきです」

「全く頑固な奴だ、僕がやると言ったらやるんだ!」

「けど!」

「そんな事刑事である僕が許せるわけないだろう!これは僕が天国へ向かう為の最後の行いなんだ、許してくれ」

「大和さんも負けず劣らず頑固ですね」

「生憎、こうじゃなきゃ刑事としては生きていけないよ」

Q街区は違法建築の建物が乱立し、車が走れる道が限られている。

2台は大通りを駆け抜け屋台の商品をまき散らしながら土煙をあげている。

車は急停車し、慌てて飛び降りる。

「達哉君!急げ!」

「ハイ!!」

「待てぇ!!!」

ヤツも車を停め、怒号を出しながらこちらを睨んでいる。

「しつこいぞ!どこまで追いかけてくる!?」

足を止め、ヤツに背を向け問いかける。

「ハァ・・・お前らを・・・殺す・・・もう死神はお前たちに手をかけている」

「そうか、だが、それは・・・俺たちだけじゃあない」

「何???」

「ありがとう、達哉君」

その言葉と同時に勢いよく振り返り、ヤツの首根っこを持って後ろを向かせる。

「な、なにィ!?」

しばらくの間静寂が辺りを包む。

「ありがとうございます・・・・」

涙を流しながら、うつむく、しかし後ろは向けなかった。

ヤツの死に際を拝むことも、大和さんにちゃんと感謝を伝える事も出来なかった。

「こ、ここは・・・!?この小道は・・・!?!?」

「フン、僕もろとも、あっち側に行ってもらうよ、司馬猛、これがお前に最もふさわしい手錠だ」

小道の先。

暗闇から数多の手が伸びていく。

2人の首を掴み、深淵へと引き込んでいく。

「な、なにィ!!!!!!!!!」

「ありがとう・・・ありがとう・・・・大和さん・・・」

うつむき溢れる涙を堪えきれなかった。

「そんな・・・そんな馬鹿なァァアアア!!!!」

 


ジリリリリリ…

大音量の目覚ましにたたき起こされる。

みず、みずと呟きながら台所へ向かい、喉へ流し込む。

カレンダーで予定を確認し、原付にまたがる。

ポケットに違和感を覚える。

「ああ、これまだ入ってたのか」

甘いものは得意じゃないが、何故か少ししょっぱいミルクキャンディを口に放り込む。



交差点でトラックに轢かれはじけ飛ぶ。





二次創作の線引きを教えてくれ

あと、テキトーに書いちゃったから矛盾とかあるかも

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