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49経済力最強の薬指

「!!?? こ、これは、まさか……トリニティ・ローズ!?」


 トリニティ・ローズとは、「昼」「朝夕」「夜」で、「青」「緑」「ピンク」の3色に変化するとても珍しい宝石で、世界でも数えるほどしか存在していないらしい。

 

「れ、レンロット公!? ミルティア様!? こんなに大きなトリニティ・ローズは王宮にもありませんよ!? ど、どんな魔法をお使いになったんですッ!?」


「わ、わたしは……何も……」


 魔法なんて使えないわたしは、全力で首を横に振る。

 そして、わたしとジーナさんの視線が、マリクル様に集中した。


「まさか……浄化? いや、でも……魔力容量が多いとは言え、私は魔導士です。浄化の専門家ではありませんし……?」


「れ、レンロット公!! お、同じように濁った『ナイト・ローズ』が、もう2つ3つあったはずですから、ちょっと待ってくださいっ!!!」


 滅多に取り乱す事など無さそうだった女主人が、血相を変えて店の奥に引っ込むと、3つの濁った宝石を持って来た。

 だが、その3つの石にマリクル様が触れても何も起こらない。


「ど、どういうことなんですの!?」


「ちょっと良いですか? ミルティア、これを持って下さい」


 『トリニティ・ローズ』に変化した宝石に比べると3つとも一回りは小さな石である。

 濁った感じは最初の石によく似ている。

 当然だが、わたしが持ったところで、それらの石に変化は見られない。


「どうです? これらの石も、その『トリニティ・ローズ』と同じように奇麗にして欲しそうに感じますか?」


「え? えーと……?」


 よく分からないけれど、奇麗に出来るならして欲しいと思っているだろうし、マリクル様なら何でもできてしまう気がする。


「は、はい、もし、できるなら……」


 その言葉を聞いて、ゆっくり頷いたマリクル様がわたしの手の上の石に触れる。

 すると、さっきと同じように青白い光が灯り、奇麗な海の青さを湛えた石へと変化した。


「!! 幻の『トリニティ・ローズ』が三つも……!」


 マリクル様は少し何かを考え込んでいるようだったけれど、ふっと勝利の微笑みを浮かべて


「ジーナ、やはり今回の勝負……私の勝ちのようですね」


 と、おっしゃったのだった。




 ……結局、あのトリニティ・ローズ……当然だが『超一流』枠の中でも最上位に位置する石らしく、超絶お得なお買い物、と相成ったのだった。


 マリクル様が浄化した合計4つの『トリニティ・ローズ』のうち、最初にわたしが選んだあの石が一番色の変化がハッキリしていて、大きさも最大サイズで、一番お値段が張る品だったそうだ。

 本来は大損したはずのジーナさんだが、三流以下として処分するしか無かったクズ石が、三つも『超一流』に化けたのだ。

 しかも、『ナイト・ローズ』とは違って、『トリニティ・ローズ』になるまで進化した石は、瘴気などを吸収しなくなり、むしろ『浄化』の力を放出し、輝きが固定化するため、より宝石としての価値が上がるらしい。


 そんな訳で勝負には負けたものの、むしろ大収穫とばかりに、おまけでいくつか宝石を貰ってしまった……

 後日改めて髪飾りやネックレスにして届けてくれるとのこと。


 そしてあの『トリニティ・ローズ』は……婚約指輪としてわたしの右手薬指に収まっている。

 

 マリクル様は「値段の割にとても良い買い物だったんですよ、気にしないで下さい。むしろ、魔法的な守りとしての効果は絶大です。絶対にいつも身につけておいてくださいね」とおっしゃっていたが……

 わたしの薬指一本で小さな城が建つお値段……と、聞いて軽く戦慄している。


 これ……魔法的な守りなんかよりも、経済的な守り効果の方が高いのでは……??



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