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15魔法の箱と恩返し

『今度は何をしているのです?』


「はい、あの、エビのアヒージャという料理を試してみようと思いまして……」


 この『アヒージャ』という料理、名前と作り方は聞いていたのだが、上質な油をとてもたくさん使うので、実家では手が出せなかったのだ。


『相変わらず、熱心ですね。……しかし、なぜわざわざこれらの生き物を凍らせているのです?』


 わたしは、エビの足が早い事をバードラ様に説明した。

 優しかった料理長からの受け売りだが、一度、少し時間をおいてしまったエビでお腹の調子を崩したことも有るのだ。

 まぁ、たいして大ごとにはならなかったから、もしかしたら別の理由で少しおなかの調子が悪かっただけの可能性もある。


『なるほど。しかし……『冷凍石』ですか。『蓄魔石』に冬の冷気を封じた訳ですね……貴女は、魔法を習っていないんですよね?』


「え? は、はい。魔法は一切使えません」


『…………そうですか。という事は、無意識なんですね』


「無意識?」


 『魔の緑髪』ならば、あり得ない話ではない……と、ぼそぼそとバードラ様が話されていたような?


『ミルティア様』


「は、はい!」


『ミルティア様は、きちんと学べば、きっと直ぐにでも魔法を使う事ができるようになりますよ』


 あっさりと、そう宣言するバードラ様。

 本当にそんな事ができるのだろうか……?

 

 わたしが半信半疑なのがバレてしまったのだろう。

 バードラ様はそれ以上は追及せず、台所の奥へと進むと一つの小箱を持って来た。


『でも、今すぐ魔法を覚えて使いましょう、という訳にもいかないでしょうから、腐敗しやすい食材を保存したいなら……ウチにある、この『時空保管箱』をお使いなさいな』


「ええ!? で、でも、そんな高価な魔道具は……」


『気にせず使いなさい。保管容量が30種を10個ずつしかありませんし……こんなものは、使われなければ、ただの箱です』


 だ、大貴族ってそういう感覚なんだ……!

 30種類を10個づつ保管できるって実家の3倍は凄いんですが……!

 なんだか申し訳ないような、でも、そういわれると、使わなければもったいないような……


 ああああぁぁ、でも、やっぱり、出来立てほやほやが、そのままに保管できるなんて、べ、便利すぎる……!

 

『……旦那様から許可を貰いました。その箱は貴女専用にして構いませんよ』


 なんということでしょう……っ!!!


 こ、ここここ、これは、何かご恩返しをしなければっ……!

 わたしは、自分の出来る事の中で、マリクル様が喜びそうなことを考えてみた。


 ……うーん……公爵様だから、高価なものや欲しいものはご自身で買いそろえられそうだし?


 ふと、彼の生活を思い返すと、いつも椅子で休まれている姿が頭をよぎった。

 もし、お身体を綺麗に拭いて、あの体を覆う『海の欠片』を全部落としたら、お布団で寝られるようになるのでは……??

 お礼と言っても、そのくらいしかできないけど……試す価値はありそうだ。

 

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