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コメディ短編シリーズ

The Eternal Leaf

作者: 井花海月
掲載日:2021/01/23


「あの木から最後の葉っぱが落ちたら、私は死ぬの」


 病室の窓から覗く、一本の枯れ木に辛うじてくっついた葉っぱを見ながら、私は呟く。


「そんなこと言わないで!紗香ちゃんはきっと、元気になるよ!」


 恋人の太郎くんは目尻に涙を浮かべて必死に励ましてくれるが、私には分かる。

 あのぼろぼろの葉っぱが木の枝から離れた時、私の命もまた、儚く散るのだということが。


「ありがとう太郎くん。あなたと過ごせて、とても幸せだった……」


 だから最後に、精いっぱいの笑顔を浮かべて太郎くんに別れの言葉を告げた。


 1ヶ月後。


「い、意外に散らないね……」

「まさか1ヶ月もつなんて思わなかったわ」


 1年後。


「あの葉っぱ凄いね。冬を越したよ?そして、君も余命僅かだったのに、まだ生きてるなんて」

「ほんとね。もう私にも、あの葉っぱがいつ落ちるのか分からなくなってきたわ」



 10年後。


「落ちないね」

「周りの木々は何度も咲いたり散ったりしてるのに、あれだけあのままよ。時間が止まってるのかしら」


 50年後。


「やだ!死なないでよ!」

「いや、僕はもう充分に生きた。君はあの葉っぱが落ちるまで幸せに生きてくれ……ガク」

「まさか、太郎くんが先に死んじゃうなんて……あの葉っぱ、どうして落ちないのよ!?」


 100年後。


 知り合いはみんな死んでしまった。

 外の世界はすっかり姿を変えた。

 なのに、私とあの葉っぱだけは変わらない。



 1000年後。


 もはや、あの頃の時代の面影もない。

 今がもう何年なのか、私には分からない。

 それでも私は生きるわ。

 あの葉っぱが落ちまで、私は死ぬことはない。


 10000年後。


 私はとうとう古き肉体を捨てた。

 永遠の命の前に、徐々に朽ちていく肉体は必要なかった。

 そして私は、空間そのもの調和を果たし、永遠の時を生きる存在となった。


 50000年後。


 私は物質の法則の全てを理解した。


 とうに滅びきった世界に、私は物質を作り出し、また新たなる世界を構築した。

 新たな世界が滅びれば、再び構築した。そして幾度となく生物は生まれ変わり、文明を作り出し、そしてまた何もない世界へと戻る。

 それをただ、何度となく繰り返し続けた。



 100000年後。


 よもや私は神。

 いえ、神をも超えた。


 私は神であり世界であり宇宙。


 幾たびの無限を無限にこの手で創りだした。


 そう、今の私の命を止められる者など……



 ポロッ



「ぐえっ!」



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