表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/40

ドラゴンを捌こう

 俺はトカゲを見たことがあるが、捌き方は一切知らない。というかトカゲって捌いて食べるような生物なのか?


『それは私のデータベースには載ってないですねー。ただ、捌き方はありますので、食べる人は食べるんじゃないですか?』


「ダイソーの店員みたいな対応するなよ」


『でも、分からない事を憶測で断言するのは危険ですよ翔ちゃん。憶測で物事を話すときは、これは憶測ですって前提を話すべきだと私は思っています』


 そうですか。俺はめんどくさくなって話題を修正した。


「んで、どうやって捌くんだ?」


『では、語りながら捌いていきましょうか』


 右手にある鉈がギラリと光る。


『まず、血抜きからですね。頭を下にする感じにドラゴンをぶら下げます』


 幸い、此処はスケールが無駄にデカい農場。ドラゴンの伸長を遥かに越す植物がごまんと立ち並んでいる。そこにドラゴンを足に縄をかける形で吊るした。


 昭子はそのドラゴンに手を掛けて登る。


『首辺りを傷を付けます。このあたりに脊髄があるはずなので、もし息の根が少しでもあっても、これで止まります。ついでに血も抜けます』


 その言葉どうりに昭子は鉈を振るう。だが、鱗が硬いらしくて弾かれる。


『鱗は魚と同じようにやるには硬すぎて取れませんね。まぁ鱗が大きいので一枚一枚ずつ取っていきましょう』


 鉈を鱗の隙間に差し込んだ。そこから端を握って力を入れる。すると、てこの原理が働いたのかどうかは知らないが、鱗がパキリと取れた。


 それを首辺りの鱗が全て取れるまで昭子は繰り返した。


『では、脊髄を切りますね』


 その宣言通りに昭子は鉈をふるって首を切った。同時に血がボタボタと落ちる。出血の量があまりにも多いため、まるで血に染まった滝を見ているかのようだった。


 血抜きってスゲー光景だなって思って昭子の方を見ると、不思議そうな顔をしていた。


「何だ? 何でそんな顔をしているんだよ?」


『えーと、想定よりも血の勢いが出てきてどうしようかなーっと』


「血の勢いってそんな気にすることなのか?」


『地面が凄く汚れます』


「あー⋯⋯」


 血が落ちる地面を見ると、ぐちゃぐちゃに汚れている。土が汚れすぎてもはや沼⋯⋯いや、湖って感じな血池が出来上がっていた。そんな血池にドラゴンの血が勢いよく落ちるため、跳ね返りがドラゴンの頭にびちゃびちゃと飛び散っている。


 血抜きを始めてから数分が経過した地面、血池は楕円形に広がっており、半径7メートルを越えている。血が何時止まるのかが分からないが今現在でも血池が邪魔でドラゴンを捌くのがめんどくさすぎそう。


 数十分が経過してドラゴンの出血がだいぶ収まる。そのタイミングで昭子が発言した。


『捌く場所を変えましょうか』


 昭子の姿が消えてドラゴンの足を縛っている縄の元にいた。それを俺が確認した瞬間に昭子の姿がまた消えて、血池からだいぶ離れた場所にドラゴンを寝かしていた。


 あまりにも早すぎる行動。その癖に空気が避ける音や、流れを感じなかった。マジでこいつは性能がヤバすぎるよな。たしか昭子の元値が10億位だっけ? 10億でも凄すぎると思う。


『さて、まずは内臓を出しましょうか。お腹を開いて出します』


 ドラゴンの首元の下から、尻の手前までを鉈で割く。途中途中、鱗が邪魔になるが邪魔な鱗たちは一枚一枚丁寧に取り除いていく。


 割き終わった。そこから内臓たちがこんにちは。なんか色々な臓器が見える。血抜きをしっかりしたせいか分からないが、臓器たちの形がはっきりと見えて俺は気持ち悪くなった。


 昭子がそんな内臓たちを取り除いていく。とてもじゃないが直視できなかったので目を明後日の方向へ向けるが、『食道がなかなか硬いですねー』という昭子の声が、俺の想像力を働かせて気持ち悪くさせる。ツライ。


「気持ち悪いから解剖見ないようにするわ」


『あらあら⋯⋯慣れてない非日常的体験は辛いですよね。トラックで寝てますか?』


「そうするよ⋯⋯」


 トラックでお休みすることにした。スヤァ⋯⋯。






 ◇◆◇◆◇






 柔らかな感触が頬から感じる。そして声が鼓膜に刺さる。


『翔ちゃん。起きれますかー?』


「⋯⋯おはよよっよよよよ!」


 俺は急にバグった。俺の顔面数センチにドデカい眼球があったからだ。


 眼球が移動して、隠れていた昭子の顔が現れる。してやったり適な悪戯っ子笑顔が眩しい。


 昭子の片手が揺れて、同時に紐で吊るされている眼球も揺れる。


『がおー。妖怪目玉人間だぞー』


「⋯⋯心臓が止まるかと思ったから二度とやらないで欲しいな。てかどっかかその眼球持ってきたんだよ?」


『解体したドラゴンの眼球ですよ』


 うわー⋯⋯。


『翔ちゃん。サイコパスを見るような目で、私を見ないでください。さっきのは、ちゃんと論理的な解があってした行動なんですよ?』


「その解って?」


『翔ちゃんの驚く顔が見たいからですね!』


 こいつ介護アンドロイドとしてダメな気がするな。ああ、元からダメだとは思っていたけど。


「そんな事よりさ、なんで俺を起こしたんだ? 昭子が起こしに来るってことは何かあったということだろ?」


『はい。ドラゴンの解体と燻製が終わったので、夕飯の時間です』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ