悲劇の前触れ
僕は自分のPCに満足していた。
それは三ヶ月ほど前にPCのパーツを換装し、性能が一気に向上したからだ。
この時のパソコンのスペックは以下の通りである。
【CPU】
Corei9-9900K
【電源】
SilverStone 80PLUS GOLD 850W
【マザーボード】
MSI MPG Z390 GAMING PRO CARBON
【グラフィックボード】
ELSA GeForce RTX2070 S.A.C 8G
【メモリー】
Corsair DDR4 8G×4 32G
【CPUファン】
虎徹 Mark II
【SSD】
120G
【HDD】
1T
変更したのはCPU、マザーボード、グラフィックボード、メモリー、CPUクーラーである。
CPUのソケットの関係上、マザーボードを交換せねばならず、それに伴ってメモリーもDDR3からDDR4の型式に変更となった。
グラフィックボードは以前のものを流用可能だが、思い切ってGeForce RTX2070を購入した。
予算にして、合計17万円ほどである。
結構な出費だが性能は向上するし、僕がパソコンのパーツを換装するのはせいぜい5年に1回程度なので、長期的には大きな痛手ではない。
つまり今回のパーツ換装は性能向上、経年劣化の観点から見ても適切であったと思う。
オーバースペックであるという点を除いては。
分かる人には分かるだろうが、今回採用したCPU、Corei9-9900Kというのは相当な上級グレードのCPUなのだ。
IntelののCPUで型番にKのつくものは、オーバークロックに対応しており、この製品はオーバークロックすることで5.00GHzで動かすことが可能とされている。
単純に言ってすごいCPUなのだ。
ただ、これを必要とするようなPCの使い方をする人はなかなか少ない上に、発熱がものすごいとも言われていた。
そして僕のPCの用途も、このCPUを必要とする程ではなかった。
イラスト・執筆・動画視聴・ネットブラウジング・PCゲーム。
これが僕のPCの使用用途だ。
一番負荷がかかるのはPCゲームだろうか。
しかし、PCゲームをするにしてもここまでのCPUは必要ない。
ハイグレードなグラフィックボードとある程度最新のCPUがあれば十分だ。
要するに、今回Corei9-9900Kを採用したのは単なる趣味であり興味であり自己満足だったのだ。
それでも、組み上げた自作PCはちゃんと動いてくれたし、快適だった。
そう、快適だったんだ。
その快適さが僕に妙な安心感を与え、事の重大さを知るのに大きな遅れ生じさせるほどに。
夏が近づき少し暑さを感じ始めたある日、僕はPCでゲームをしていた。
以前のPCスペックでは遊べなかったタイトルだ。
DmC Devil May Cry。
デビルメイクライシリーズは4しかやったことないが、その世界観とスタイリッシュさに惚れた僕は、新しく発売が予定されていたDMC5を前に、DmC Devil May Cryをプレイしていた。
こちらはカプコンではなく他社の作った作品だが、5が発売されるまでの繋ぎとしては悪くないだろうと思い購入。
本家と比べてしまうと色々疑問点はあるが、別物だと考えればなかなかに面白い作品だ。
ストーリーも終盤へとさしかかり、僕は敵と戦闘をしていた。
その時だ!
悲劇は起こった。
いきなりゲームが停止し、ブルースクリーンが現れたのだ。
しかし、僕は意外と冷静だった。
いや、今思えばあまりにも愚かだとも言えるが。
ブルースクリーンはPCに何らかの不具合が生じた場合に起こる現象だ。
つまり何らかの問題がある訳なのだが、本当に問題なのは僕の認識の方だった。
「ブルースクリーンはたまに起こる」
これが僕の認識であり、
「なんか知らないけど再起動したら直る」
というのも僕の認識だった。
だから今回も、しばらく待って電源が切れないのであれば強制終了して再度立ち上げれば直るだろうと思っていた。
だからこれが悪夢の始まりだなんて思ってもみなかったんだ。