組み合わせ発表
団体戦まで、あと20日…。
いよいよ、優に急激な成長が垣間見えた。
「いくね、奈那。…っせぇい!」
まずは3種同時並行。風、水、火 をまとってみた。
今まで1秒程度しか保てなかったが、
「3…4…5…」
なんと、5秒以上のキープが出来たのだ。
「すごい…! 5秒以上も保てたよ!? 優、すごい!」
感嘆の声を上げ、素直に褒める奈那。
「…っ! やったね、奈那のおかげだよ!」
とても喜ぶ優。
そして香宇も、
「この調子で鍛練すれば、もっと長時間のキープが出来るようになりそうだな。なんにせよ、すげぇよ、優…!」
団体戦までに更なる強化を課題として与えながらも喜んだ。
「じゃあ次は、それぞれ単体の…」
練習に励もうとした時、校内放送にて、スタメン5人が呼び出された。
『選抜選手5名…曽江川 由真さん、柑崎 香宇さん、石垣 優さん、刺神 奈那さん、結原 千紗さん。団体戦の組み合わせが決まりましたので、速やかに職員室まで来てください。』
「…そっか。団体戦の組み合わせ発表は、大体20日前だったな。…いくか」
去年を思い出し、由真は、そう言った。
5人は校庭で集まってから、職員室へと足を運ぶ。
そして、トーナメント表を見る。
すると、組み合わせは…
全12校。所属はAグループ6校。
初戦は、液菜塔高校。
2回戦は、夢尺渦三高校か、港条学園高等部のどちらか。
3回戦は、沖城学院高等部か、河後江学院高等部。
そして、決勝は、Bブロック覇者。
おそらく丹波丘高校だろう…。
「…丹波丘は、反対ブロックか。勝ち進めば当たるけど…」
同ブロックを願望した香宇。
「決勝で当たる方が良くねぇか?」
逆ブロックだったことを幸運に思う由真。
「準決勝で個人戦第2位の大将が居て…しかも団体戦は去年優勝。そんなところに当たらない方が幸運だと思うけどね…」
「そうよ。今のままじゃ、まだ抵抗すら無意味な域よ…」
優と奈那も、由真に同意。
「先に準決勝で攻略して、決勝は楽に終わる。そうしたら1位は確実です…。まぁ、現実的じゃありませんが、私としては準決勝で当たる方が…」
千紗は、香宇と同じだった。
同チーム内で、ちょっとした違いがあるようだ。
ーーー……所変わって、未垂咲高校。
香宇の幼なじみ“須藤 真里”は、組み合わせ表を見て、
「香宇ちゃんと一緒のブロックじゃないのは残念だなぁ…戦いたかった」
と、香宇に当たらないことを悔いていた。
大将を務め、昨年度の全国7位に到達した、毛先を赤紫色に染めた銀髪で眼を隠し、Yシャツをインナーに赤紫色のブレザーを羽織っていて、赤紫色の制服ズボンを履いている男“宮井 拓海”は、
「曽江川は逆ブロックか。去年の雪辱を晴らしたかったが、決勝に上がらないといけねぇみてぇだな…」
由真に当たらないことを悔いていた。
ーーー……所変わって、沖城学院。
優と仲良くなった“尾上 沙希”は、
「お。石垣さんの居る古瀬川学園と同じブロックだな。…だけど、ウチの先鋒に勝てるかな?」
と、自校の先鋒を持ち上げながらも、闘志を燃やした。
そして、赤髪ポニーテールで、かなりのつり眼、Yシャツをインナーに真っ赤なブレザーを羽織っていて、クリーム色のズボン、革靴を履いている、大将で部長の女“麻井 霞澄”は、
「…なるほど。準決勝で新S+に当たるんだな。楽しみだ…!」
と、噂を耳にした“香宇”に対しての闘志を燃やしていた。
ーーー……所変わって、丹波丘高校。
昨年度個人戦2位、大将を勤める、明るい茶髪で、右の前髪だけ長めにして眼をほとんど隠し、右眼は斜めに傷があり細目、左目は二重まぶたの多少たれ目、白い丸首Tシャツをインナーに、襟元に丸い襟があり、胸下あたりで切れている赤茶色の服…胸元でヒモをくっつけるタイプで、真ん中にダイヤがぶら下がっている。波の無い膝上5センチの茶色いスカート、赤茶色のハイヒールを履いた女“瀬宮 舞”は、
「…輝夜さんが言ってた新S+の…古瀬川学園1年生、柑崎 香宇さん…だっけ? 決勝まで勝ち上がれば戦えるけど、果たしてどうかな。沖城学院に勝てば、決勝で当たれるけど…」
まるで他の高校は眼中に無いような言い方で、香宇のことを気にかける。
ーーー……古瀬川学園に戻る。
「そうと決まれば、もっと鍛練に励まねぇとな。…曽江川さん、もっとやるぞ、蓄積を!」
香宇は、やる気を漲らせながら、由真を誘う。
「ふっ。まさか、後輩に鍛練を促されるとはな…今更だが」
少々不本意そうだが、それでも多数の逆算を蓄積しようと試みる。
「もっと長時間できるようにするには…」
と、優も励み始める。
「最初に全開で発揮しちゃダメよ。最初は微力か半分で、よ」
しっかりとアドバイスする奈那。
「…あれ。このウェイトで軽く感じる…? …1段階、上げてみますか…!」
筋トレで順調にパワーアップしている千紗は、充実感に溢れていた。
「この回数に慣れたし、回数を増やしてみますか…!」
腕立て伏せや、腹筋、背筋。基本的な筋トレから、
ウェイトリフティング、懸垂等のプロ嗜好モノまでもこなしていた。
香宇は、全体的に見回すと、
(…それぞれ段々にパワーアップしてんな。優の能力が奈那の破壊力に近づいてるし、曽江川さんは蓄積値の上限が上がってる。千紗もパワーアップして、スピードもパワーも文句なしだ。スピードを殺さずにパワーアップしてるしな…)
それぞれの成長に喜びを隠せなかった。
同時に、自分も鍛えられているとは知らずに……。
ーーー……所変わって、峰本高校。
全世界最強の“羽狩森 輝夜”は、
「…団体戦、どうやら荒れそうだな。瀬宮は、きっと古瀬川学園の柑崎に苦戦させられるだろう。同じ“ダスト保有者”である限り…」
と、舞と香宇について気にかけていた。
「それ以前に、麻井と柑崎の対闘も気になるな。麻井も“ダスト保有者”…そこが最大の壁となるだろう…」
どうやら輝夜は、ダスト所有者(保有者?)に関して感知できるようだ…。
「比長樫のような“ダスト所有者”ではないからな…」
と、意味ありげな言葉を吐いて、何らかの方法で3校の様子を見守っていた。
ーーー……その頃、とある洞窟内。
昨年度個人戦第3位の“紗原 憂那”は、
「所有者不在のダスト…? それをアタシにくれるのか?」
と、一緒に居る“比長樫 万理”に問う。
「あぁ。んで、そのダストは“輝光のダスト”…」
どうやら、前話で明かされた“5種のダスト”のうち“輝光”が眠っているという。
「…ついにアタシも、ダスト所有者になるのか…楽しみだ…!」
わくわくと、嬉しさを隠せない。
「アッシとユナで、光と闇…。アッシは闇で裏を支配する。オマエは表を支配しろ。羽狩森や瀬宮もろともなぁ…!」
陰謀を憂那に言い放ち、依頼した。
「いいだろう。任されてやるぞ…比長樫 万理…!」
その台詞と共に、輝光のダストが在る場所に辿り着いた。
そして万理は、ダイヤが埋め込まれていない指輪を、憂那へ渡す。
渡されると、左手薬指に嵌め込む。
「このダストを、そこに埋めたら完成だ。だが、アッシがやってしまうと、オマエが全力を発揮できんよ。これはオマエが触って、自分で埋め込め…」
後退し、その様子を見守る。
「ついに、あの羽狩森と対等に…! ヒヒヒ…♪」
ニヤリと怪しげな笑みを浮かべながら、輝光のダストを持ち、空っぽの指輪に埋め込んだ。
すると…
キィィィィィィン…!
と、凄まじく眩い光が、憂那を覆った。
その瞬間、万理のダストが共鳴し、そして、黒炎の光に覆われた。
さらに、その共鳴は…
輝夜「…っ!!?」
舞「…!?」
霞澄「っっ!!?」
香宇「あぐっ!?」
輝夜を、紫色の光が覆い、
舞を、紺碧の光が覆い、
霞澄を、深紅の光が覆い、
香宇を、虹色の光が覆った。
正体が分からない香宇は、苦しみ悶え……ーーーーー