ダスト
ーーー…古瀬川学園の近くで話し合う沙希と優。
そこに現れたのは……
下げたポニーテールの金髪、真っ黒なライダースーツで全身をみっちりとカバーしている女。
ビッチリ着ているせいか、胸や身体のラインが強調されている。
左手薬指に、黒炎に輝くダイヤモンドが埋め込まれた指輪をしている。
「…こんなとこで何してんのさ? 2人の能力者さんよ」
少々田舎くさい口調の話し方で、沙希と優に話しかけてきた。
「…」
優は沙希に視線を配る。
「…すぅ、はぁ…」
すると沙希は、深呼吸してから話し始める。
「自分は、沖城学園の尾上って言うんだけど、苦手属性の克服を強制されて困ってたんだ。そんなところに石垣さんが居て、石垣さんは…」
そこまで言ったとき、優は止めた。
「尾上さん。見知らぬ人に相談するのは…ちょっと…」
と、多少ながら警戒していた。
「あはは。警戒されるのも仕方ないかー…」
その女は少々苦笑いし、目を泳がせる。
「まず、自己紹介してほしいね。キミは誰なの?」
優は、怒った口調で、その女に名を聞く。
「あぁ、ごーめんごめん♪」
ふざけ気味に謝罪し、
「アッシは“比長樫 万理”」
と、自己紹介を始めた。
「河後江学園3年だ。知ってるとは思うが、あの羽狩森と同じで、ダスト所有者だ。アッシは“暗黒のダスト”を持っている。アッシが追っているのは、ダストの『創造主』…いったい誰なのか、未だに不明だからな…」
ここまで話した時、2人の間に疑問が浮かぶ。
「ダスト…? それって、いったい何…??」
…そう。
今まで出てこなかった単語が出てきたのだ。
「…あぁ。こりゃあ所有者しか知らんのかもしれないな」
その“ダスト”について、万理は語り始める。
「その昔、限られた人類に超能力を芽生えさせた創造主がいた。
すると、またたく間に選ばれし者達に能力が目覚めた。
大きく分けて5つの“ダスト”が、そこに存在したんだ。
“輝光のダスト”
“暗黒のダスト”
“自然のダスト”
“怪力のダスト”
“謎幻のダスト”
この“ダスト”というのは、簡単に言えば、元々存在していた超能力を使った痕跡…“大気残留型能力痕”…通称『フレア』をかき集めたモノだ。
そして、その全てを作り出したと言われる伝説のダストも、この世界のどこかに存在しているんだ。
名を“グリントダスト”…いわゆる“ダストの集合体”だそうだ。
アッシは、そのグリントダストを探しているんだ…」
そこまで語られたとき、沙希は質問する。
「その5つのダストの所有者は、比長樫さんには分かるの?」
持ち主を聞き出そうとした。が、
「わりぃんけど、そこまでは知らんよ。アッシは羽狩森がダストの所有者ってのぁ分かるんだ。だけど、何のダストかは分かんねぇ。そこまで感知できんみてぇだし」
と、万理でも分からないようだ。
「比長樫…。お前が表に出てくるのは珍しいな」
いつの間にか、また輝夜が現れた。神出鬼没…。
「羽狩森…」
万理は『いつも通りだな』という風に平然としていて驚かなかったが、
「うわっ!! いつの間に…!?」
と、沙希と優は、とても驚いた。
「裏側の人間が表に居っからってか? はは。そりゃぁただ単に、暇潰しに来てんだよ。平和だから退屈しててなぁ…」
小さくあくびをして、退屈そうなのをあらわにする。
戸惑いを隠せない沙希と優だったが、
「…ちょうどダスト所有者同士だし、ここで少し手合わせしたら、比長樫さんの暇潰しにもなるんじゃない? …あっ、自分ながら名案だ!」
と、沙希が手合わせを促し、
「そうだね。ダスト所有者同士の戦闘に興味あるし、ね!」
と、優も催促した。
「…」
少し考える万理と輝夜だったが、
「…後悔すんなよ? 2人が吹っ飛んでも知んねぇからな?」
と万理が戦闘体勢になりながら言い、
「お前達が間近で見るチャンスは滅多に無いだろうから、特別だ。ただ、それなりの覚悟をして見ているんだな…」
と輝夜は危険性を教え、戦闘体勢に構えた。
ーーー……戦闘開始。
まずは万理から仕掛ける。
「いくよ、羽狩森!」
手を伸ばすと、異常な重力が輝夜を襲い、同時に沙希と優も重力の圧に押し潰される。
「うっぐ…! なんて圧力…!」
耐えきれず、沙希も優も少し後退した。
どうやら万理は、重力を操る能力のようだ……。
だが…、
「なるほど。お前は“暗黒のダスト”か…」
と“喰らっている様子も無く”冷静に話す。
すると、次の瞬間…!
同じ重力攻撃を、数十倍の圧で、万理に返す。
「あっ、っぐ…っぇ!!?」
異常な重力に耐えきれず、対抗しても押し潰される圧がかかる空間から後退。
空間を脱出し、息を整えようとする。
「羽狩森…いったい何のダストなんだ、それは…!?」
思い当たるダストでは無いことを確認した万理は、そう問う。
すると、
「教えるワケないだろう…。手の内は、個人戦の時…または裏での戦闘時にしか見せない主義でな。その時に知れるだろう…」
秘密主義を貫く輝夜だった。
こうして輝夜と万理の戦闘が終わった頃、沙希と優は…
「…なんかね、悩み…吹っ飛んだね」
「…だな。こうしちゃいられない、お互い頑張ろっか!」
と、悩みや不安が解消し、お互いの校舎へと戻っていった。
それを見た輝夜と万理。
沙希と優を見送ると、2人もそれぞれの方向へ帰った。
ーーー…古瀬川学園、保健室。
優が戻ると、香宇、由真、千紗が、彼女を歓迎した。
それと共に、奈那も回復していた。
「おかえり、優…。心配したよ…」
そう優しく声を掛ける奈那に、
「よかっ、た…」
と、涙ぐみながら、優は奈那に抱きついた。
そして時は過ぎて…
団体戦まで、あと23日…
22日……
21日………
あと20日を切った…ーーーーー