能力強化活動
古瀬川学園高等部 団体戦エントリー
先鋒:曽江川 由真
次鋒:石垣 優
中堅:刺神 奈那
副将:結原 千紗
大将:柑崎 香宇
ーーー……団体戦まで、あと1ヶ月。
今年の団体戦エントリー校は、全12校。
・古瀬川学園高等部
・丹波丘高校
・沖城学院高等部
・未垂咲高校
・峰本高校
・貴ヶ原高校
・液菜塔高校
・蕨美女子高校
・港条学園高等部
・翔茅布栢高校
・河後江学院高等部
・夢尺渦三高校
ーーー…昨年まで、古瀬川学園の他は、だいたいA~Sクラスが出場していた。
今年もそうであるが、他校に噂が広まっていた。
「今年は古瀬川学園に新しくSクラスが増えたらしいぞ?」
「今までSクラスが出たこと無いのに?」
「そうなんだよ! どうやら検査の時に手抜きでやったって噂だ。手の内を隠してるヤツがいるってこったろ?」
「今まで最高で“A+”だったのにね」
と、古瀬川学園の噂の傍らで、
「今年の丹波丘は、先鋒から中堅までA+で組んでるらしいよ?」
「副将に、とんでもない強者がいるみたいなのよ」
「その人は今年初参戦なんだとよ!」
「でも、大将は変わらず例のバケモノだけどね?」
と、丹波丘高校の噂も同時に広まっていた。
偶々それを聞いた柑崎は、
「丹波丘高校…か。確か、昨年度個人戦第2位がいるんだったっけ。名前は、確か…“瀬宮 舞”だったか?」
と、丹波丘高校を意識し始める。
「確か瀬宮は大将…。ってことは、副将が問題か」
いったい副将は誰なのか…。
ーーー…そうして気にしている中、古瀬川の5人で鍛練を始める。
師弟の、石垣と刺神。
それとは別に、曽江川と結原。
柑崎は、それぞれを傍観している。
『石垣・刺神』サイド
「その程度じゃないわよね?」
そう言い刺神は、右腕に炎を、左腕に雷をまとい、身体に氷をまとって、炎で石垣めがけて拳を振り抜く。
「もちろん…まだまだいくね!」
石垣も負けじと、右腕に水を、左腕に火をまとい、対抗する。
しかし刺神は、拳を引っ込めて、
「いずれは3つ同時に出来たら強いよ? その状態で、風を…自分の周りに渦巻かせるイメージをして?」
と、限界を越えるようにと指導する。
石垣は頑張ってイメージしたものの、
「うぅぅぅ…! …3つ同時にやろうとするとね、片腕が何もまとえなくなるね…。…どうしたら…」
と、途方に暮れてしまう。
それを見ていた柑崎は、
「3つ同時にやるには、全部を100%でやろうとしてると出来やしねぇ。そこは体内術力の応用で、両腕に30%ずつ、火と水。40%を自身の周囲に吹かせる風に。やってみろ」
と指摘。すると、微弱ながらも、
「おぉ…! 出来そうな気がしてきた…!」
風がすぐに弱ってしまったものの、一瞬だけ、3つ同時並行が出来た。
「それを団体戦までに強化すれば、かなりいい線いけそうだな」
柑崎は、その同時並行の強化をする課題を、石垣に与えた。
そして、柑崎は、曽江川と結原の様子を見に行く。
『曽江川・結原サイド』
「逆算するためには手を触れないといけない。それは決定的な弱点です」
曽江川に対して結原は告げる。
「確かに、速さが欠けちまうのは決定的な弱点だな。手の動きは1年間で鍛え上げたが、やっぱ限界があるよな…」
速さを極めた結原に手の動きは及ばず、その隙を突かれては、ダメージをくらう一方の曽江川。
「…どうやっても限界だな。こりゃ…」
そう諦めかけた曽江川だったが、柑崎は、
「気づいてないんだな。意外な副産物に…」
と、能力逆算の副産物について把握した。
「副産物…だと? 何のコトだ?」
気づいていない曽江川。
「曽江川さんの能力逆算には、確かに手で触れた能力を逆算するチカラがあるが、それと同時に記憶してるんだ。逆算しながら、いろんなチカラを記憶してるから、触れて覚えた能力は使えるハズ。やってみる価値はある」
と、能力のすべてを曽江川に教えた。
「…できんのか? アタシに…」
意識してみたものの、本人は“触れた先の記憶”しかしていないため、思い出すことは出来なかった。利用することも出来ず。
「…触れた瞬間なら出来んだろうけど、どうやら一定時間なら記憶してるっぽい。数分程度、または数時間程度なんだが…」
自分で気づく曽江川。すると、結原が思い付く。
「もしかして、さっき“逆算らしからぬ反撃”があったのは、その“記憶”が関係してるんじゃないですか? ほら…」
ーーー…時は戻り、石垣との戦闘。
石垣が風で曽江川を飛ばすが、昨年度の宮井との戦闘による“対策”で、風の分け目を攻め込み、『光』と『熱線』により反撃。
「本当に“逆算”なの…!?」
ーーー…現在に戻る。
「私たちの中に“光”や“熱線”を使える人っていましたか? 使えるとしても、すべての属性を使える総性造爆の柑崎さんだし、戦闘して逆算したワケでもない。どこで得たんですかね? その2つは…」
結原は気づく。光や熱線を逆算したのはいつなのか。
すると、曽江川自身も気づいた。
「…逆算することで、相手と逆の能力を記憶してたんだな。確かに、光を逆算したのも、熱線を逆算したのも、去年の個人戦の時だ。闇を操る能力者と、冷凍に長けた能力者を逆算した結果だな。…それか!」
ようやく気づいた。しかし、
「…ん?」
使ってみようとすると、どうやら消費してしまっていたようで、まるで消耗品のように、再び蓄えないといけない。そんな条件付きだった。
「また闘わないといけないんだな。逆算するために…」
………そうしてどんどん弱点が明らかになる中、鍛練の時間は終わる。
「…あと1ヶ月か。弱点克服しないとな…」
とあきらめかけていた曽江川。その脇で、柑崎は提案する。
「曽江川さんには蓄積させるための鍛練をアタシがする。優の訓練は、続けて奈那がやる。千紗は、速さと回復は充分だが、パワーが足りない局面がある。パワー強化しつつ、スピードを殺さない鍛練を。…で、どうだ?」
それぞれの特徴を把握した上での提案。
「…待ってよ、柑崎さん。私たちは同時並行の鍛練やればいいのよね?」
刺神は問う。すると、
「あぁ。…それと、香宇でいいぞ? 奈那」
肯定と、呼び方の訂正で返答した。
「あ、うん。分かったよ、香宇」
「…パワー強化って、何すれば良いんでしょうか?」
問う結原。すると柑崎は、
「スピードと治癒能力は申し分ねぇんだけど、肉弾戦になると弱い。だから、ミット打ちと筋トレをしようか。拳の速さにパワーが乗れば、S+に匹敵するチカラは持ってるしな」
と指摘。その直後に、
「…敬語んなるのはクセなのか?」
と、結原の話し方のクセなのかを聞く。
「はい。どうもクセでして。同級生でも年下でも外せなくて…」
どうやらクセのようだ。
かくかくしかじかで。
団体戦までの1ヶ月で、強化を試みる……ーーーーー