決勝戦、2
由真 vs 春美。
能力逆算 vs 隠技殺法
どちらも異常な能力だ…。
「勝てるか分かんねぇな…動かねぇで技を発動する奴なんざお前が初だ…」
「能力の逆算…去年、惜しくもラッキー7入りを果たせなかったものの、第7位の宮井さんと善戦…その実力、見せてもらうわね♪」
2人の闘志が高まったと同時に…
《ゴォォォーン…!》
開始のゴングが鳴る。
すると、由真が仕掛ける。
「うぉらぁ!」
蓄積していた“氷炎”…氷と炎が混ざった“逆属性化合”で攻撃する。
しかし、春美は、やはり動かない。
下腹部に両手を重ねて添えたまま直立不動。
「相殺させずに逆属性を化合…素晴らしいわ」
冷静に分析しながら、同じように“氷炎”。
しかし、それと同時に、雷を解き放つ。
その雷の気配に気付いた由真だったが、
「…!?」
当たる直前で気付き、避けきれず。
「ぐっ…!!」
膝を地につく。
「…ほんと、見えないのが厄介だ…」
そう言うと由真は、チカラの限りを振り絞り、3属性同時並行に切り替える。
---控え席。古瀬川学園サイド。
「!?」
優と奈那は、それを見て心底驚いた。
「…あれ?」
優が奈那を見る。
「…曽江川さんの“逆算”は、確か…ひとつが限界だったハズよ…。…同時並行、いつの間に習得したのよ!?」
奈那も、優を見て言い放つ。
香宇と千紗も、驚いていた。
「…“同時並行”は教えてねぇぞ? 自分で習得したのか…それとも“覚醒”したか…?」
「驚きましたね…。恐らく後者が正しいでしょう。戦闘中に“覚醒”したと見て間違いないかと…」
---闘技場。
「…3属性同時並行…やるわね?」
すると、春美は構えを変える。
両手を広げて、足を揃えて直立不動。
「…構えを、変えた?」
その変化に、攻めようとした全身が止まる。
「…全力でお相手するわよ?」
どうやら春美は本気になったようだ。
---控え席。丹波丘高校サイド。
「…あのスタイルの春ちゃんは、私でも苦戦した…。曽江川さんは、どうかな?」
どうやら第2位の舞ですら、苦戦したそうだ。
---VIP特別席。
「…曽江川も、どうやら“覚醒”したようだな…。…この調子なら、去年果たせなかった“目的”も、果たせるだろう…」
何か意味ありげな言葉を呟く輝夜。
「…? 何言ってんだ? 羽狩森…」
その発言の意味が分からず、聞き返す憂那。
「何でもない…気にするな」
しかし、輝夜からただならぬ雰囲気を感じ、憂那は、距離を取る。
(…さすがは第1位…。ちょっとした雰囲気の変化が、すぐビリビリと伝わってくる…!)
そう思いながら、輝夜を疑り深く見た。
その時、またも輝夜の指輪が紫色に光る。
(…! やはり、そうか…。羽狩森の指輪は、アタシの“輝光”のように、ダストだ…! だが、正体不明だな…?)
光を見た時、確信に至る憂那。
(…これは、新ダストでも生まれるのか…?)
輝夜は言葉に出しそうになったが、飲み込む。
---闘技場。
「…こっちから仕掛けるか!」
すると、右腕に氷、左腕に炎、身体の周囲に雷をまとい、自然界の三大驚異で突撃する。
「さすがね…曽江川さん」
その突撃に負けじと、烈風と雷をまとい、防御態勢。
「…うぉらぁぁ!!」
春美に、がむしゃらに攻め込む。
しかし、鉄壁の防御で、なかなか貫通しない。
そして…
由真
HP:1,040
SP:1,508
春美
HP:5,597
SP:3,014
なんと、圧倒的に負けていた。
「ほとんどくらってねぇのかよ…」
由真は絶望した。
「ふふっ…。大量にHPもSPも消費したのは、あなたの“逆算”のせいよ?」
「アタシの…逆算の、せい…?」
すると、春美は説明する。
「あなたは“逆算”することで、能力を蓄積する。しかし、逆算するということは、“真似をする”能力と一緒で…潜在能力者よりもSPを消費し、気付くとHPも削っている。たしかに逆算は強いけれど、弱点も多いのよね…」
全てを見抜かれていた。
「…まさか、能力だけでなく頭脳もあるとはな。恐れ入った…。…でも」
すると由真は立ち上がり、構える。
「…降参は、しない。HPある限り闘うのが、闘技者ってもんだ…いくぞ!」
「そうね。それでこそ闘技者よ、曽江川さん♪」
………
……
…そして、決着がつく。
由真が倒され、春美の勝利。
「…やっぱセコいぜ。動かねぇで発動するんなんざ、読もうと思っても読めねぇ…」
「でも、あなたは少し“隠技”を逆算できていたわ…。…無自覚かもしれないけれどね?」
さらっと驚きの発言をされ、由真は聞き返す。
「え? 隠技を逆算していた…?」
そう聞かれると、笑顔で、春美は教える。
「私が攻撃に徹して、正面から受けていた時よ…。私は時々、横に飛ばされた…“正面で受けたのに”…。つまりそれは、無意識のうちに“隠技”で私を攻撃していたの…」
説明すると、由真に手を差し伸べる。
「…なるほどな。少しだけかもしれないが、それは収穫だ…!」
その手を握り、立ち上がる。
そして、控え席へと戻る。
---次鋒の優、中堅の奈那。
2人は属性特化のため、隠技に敵わず完敗。
「…4属性の多属性能力者って、こんなものなのかしら?」
軽く挑発気味に、しかし優しい声色で言う。
「やっぱり…隠技は強い…」
そう言って倒れた優と奈那だったが、しっかりと手を差し伸べて優しく立ち上がらせてくれた春美には、嫌悪感を抱かなかった。
---そして、副将 vs 副将。
「速度の極みと、隠技の極み…。果たして、どちらが勝つのかしらね…?」
速度重視の千紗に警戒している様子の春美。
「私の“幻影瞬動”で、その“隠技殺法”を避けられるか…微妙なところですよね…」
同じく、隠技に対して警戒する千紗。
決勝戦も、いよいよ副将戦に…!




