代表5人の編成決め
柑崎、曽江川、石垣、刺神、結原。
古瀬川学園高等部のスタメンが決まった。
「さて。この5人で団体戦に出場するが、そのためには、まずそれぞれの強さを比較しないといけねぇ。アタシは2年だが、手加減なんて生温いコトはしない。全力で戦い合うよ!」
先輩だからこその意気込み。曽江川は、1年4人の背中を押す。
すると、石垣が提案する。
「先輩の能力なら、先鋒にしたらかなり多くの能力者を圧倒出来そうな気がしますね。私じゃあ到底かなわないと思いますね」
先鋒は、無条件に曽江川だ、という提案だ。
「いや、やってみねぇと分かんねぇだろ。んなら最初は石垣とアタシってことでいいか?」
曽江川は、石垣の能力を見極めるべく“最初”を提案。それに対し、
「そうしましょう、ね。曽江川先輩に圧勝されると思いますけどね?」
と、弱気になりつつ闘志はメラメラ。
1分後、戦闘位置につく。
審判は、教員さん。
「それじゃ、いくぞ。…スタートぉ!」
その掛け声と共に、曽江川と石垣は距離を詰める。
公式ルールでは、ランクごとに
HP(体力)
SP(術力)
の数値も設定するのだが、今回は様子見のため、公式ルールは適用せずに戦闘開始。
「…いきます、ね」
と、石垣。その直後、右腕に水をまとい、左腕に火をまとった。
踏み込んで、距離を一気に詰め、まず右手を曽江川めがけて振りかざす。
しかし、曽江川は受け止める。
その受け止めた右手を逆算し、電撃を右腕に流す。
「…逆算って便利ね。だけど、私はね…」
と言った瞬間、その右腕の水を、電気へと変換した。
「なるほどぉ? …ってことは、自然系か」
電気に変換されて相殺したコトに驚きながらも、曽江川は石垣の能力を見切り、順々に対応していく。
「…逆算されちゃうと…やっぱ難しいね。でも…」
ここまで5~6分、『火』『水』『電気』で対応してきて、いよいよ曽江川にも攻略されてしまって苦戦した頃に、石垣は最後の切り札を出す。
「…!? なっ…」
突然吹いた突風に飛ばされ、壁際に追い込まれた。
「これで終わ……」
と石垣が渾身の一撃を入れようとした刹那、
「…去年、その対策は施したんだ。宮井に負けてからなぁ…残念だったな、優…!」
と、曽江川が風を受け止め、それを周囲に受け流した。直後に、風の分け目を攻め込み、4属性すべてと別物の『光』と『熱線』で石垣を圧倒した。
「うっ、ぐ…! …本当に“逆算”なの…!?」
一気に体力を削られ、石垣はKO。曽江川が勝利した。
すると、刺神は、
「弟子が圧倒されて見過ごすワケにはいかないよ。…今度は私が相手するよ、曽江川先輩…!」
と、弟子の石垣の無惨な敗北を見て、闘志を燃やした。
実は、2人の能力は本当に師弟関係なのだ。
石垣が“風火水電”
刺神が“嵐炎氷雷”
文字通り『風』『火』『水』『電気』と、
『嵐』『炎』『氷』『雷』を操る“自然系”の能力者。
これだけでも、相当反則的な能力だが…。
「いいだろう。次は刺神、お前だ。いつでも来い…!」
半ば挑発じみた行為に出て、刺神の闘志を加熱させた。
「…いきますよ…」
右腕に炎、左腕に雷をまとい、体の表面に氷の鎧をまとった。
その右手を振りかざし、振り抜いた直後に爆散。威力を引き上げ、曽江川に当てにいく。
しかし、曽江川は逆算した。
「確かに師匠だな。使い方が一段上だ。だがな…」
当てられた刺神の右手を逆算し、一気に氷漬けにさせる。
だが逆算したのも束の間。刺神は瞬時に氷へと変換し、相殺させた。
「それも計算済みよ! …」
刺神は、語り始める。
「曽江川先輩の“逆算”は、手で触れた対象を逆算するのよ。ってことは、それ以外のガードが弱くなるのよ。つまり、手以外がガラ空きなのよ。それさえ分かってしまえば、手を使わせながら、無防備な身体のどこかを狙えば、攻略されてしまうのよ…!」
それを聞いた石垣は、
「でも、それを出来るのは“3つ以上を同時に使える自然系能力者”ね…。私は2つまでしか使えないから、曽江川先輩に攻略されたのね」
と分析したデータを基にコメントした。
すると曽江川は、
「すげぇな? よく見抜いたじゃねぇか。刺神…お前の洞察力には惚れ惚れするなぁ。でもな、これは改善しようが無いんだ。特性上、そのハンデは抱えるコトになるからなぁ。」
と、刺神に対して賞賛。それを刺神は、素直に受け止めた。
「だが、手の動きは極めたんだ。簡単には入れさせねえ…!」
確かに曽江川の手の動きは普通以上の速度だった。背中側への振り向き、正面からの攻撃の受け止め、その他もろもろ。すべてを受けきっていたのである。
そして、3人の特性が分かった時、最後の1人“結原 千紗”が動き出した。
「曽江川さん。逆算出来ない能力ってモノを見せてあげる♪」
得意気に挑発する結原。それに対し、曽江川は、
「…結原、か。確かに、石垣や刺神とは別能力のようだが。一体どこまでアタシを楽しませてくれんのかな?」
楽しみにしているのを露見させた。
「…いきます!」
すると、曽江川は結原を見失う。
「っ!?」
辺りを見回すも、見当たらず。
しかし、次の瞬間…!
ゴッガァァン!!
と、爆発に似た音がして地面が割れ、その地割れが曽江川を襲った。
「なっ!?」
瞬時に空中へ飛び、地に足を着かないように戦闘モード。
しかし、それを見越してか、結原は上空に居た。
そう思い身構えるも、いつの間にか背後から攻撃を受けた。
「あがぁっ!!」
曽江川は吹き飛ばされ、壁に衝突する。体が壁にめり込んだ。
「…ここまで速いと追い付けないみたいですね? 曽江川さん」
「っく…! まさか、神速系か!?」
結原は、語り始める。
「はい、神速系ですよ。でもって、能力名は、
“幻影瞬動”
と言います。名前通りに、速度に特化したモノです。でも、もう1つあります。」
そこまで話した時、曽江川は驚愕しながら話す。
「お前まさか、超能力者でも極稀な、
“2種混合型”
っていう異名を持った結原か!?」
と、知っていたウワサ話を本人に直接言い放つ。すると、
「やっぱり有名になっちゃいますよね。中学の時の異名でも…」
と肯定。認めた。
「そりゃ勝てねえわ。速度がケタ違いだし…」
同じSランクでも、やはり格差は存在するようだ。
曽江川は、結原に敗北した。
…。
そして、いよいよ柑崎の出番。
それを眼前にした曽江川は、喋り始めた。
「…結原。柑崎はバケモンだ。1年にして“S+”ランク…普通じゃあねぇ。普通に考えたら勝ち目なんざねぇ。…が、健闘を祈る…!」
それに対して、
「特性が分からない以上、やってみるしかないです…! いきます!」
と意気込んだ返事をし、柑崎に向けて攻撃を始めた。
すると、柑崎の体表面が妙な紫色に染まり、気づくと結原は動けない状態にされ、周囲を多属性(光、炎、氷、金属、雷電、激流、その他)の壁で覆われ、地面に足が食い込んでいた。
「んなっ!? な、なんて速さの“展開”…!!」
結原の動体視力をもってしても、柑崎の能力展開の速度には追い付けなかったようで。一気に圧倒された。
コンマ1秒でさえも結構遅く感じてしまう程の、尋常じゃない速さ。
「…治癒が追い付かない…うぐっ!」
結原の第2の能力を発動させたにも関わらず、回復速度が被撃速度に追い付かなかった。
第2の能力は“万能治癒”
自分にも他人にも使える。が、対象が他人の時、その回復先の対象が瀕死状態でも、体力満タンまで回復させることが出来る、治癒系で極めし者が使える治癒能力だ。
しかし、それすら追い付かない破壊力の、柑崎の“総性造爆”を食らった結原は、
「決まり、ですね。…ごふっ!」
と吐血しながら、団体戦エントリーする順番を提案した。
「先鋒が曽江川さん。次鋒が石垣さん。中堅が刺神さん。副将が私。大将が柑崎さん。…これで、いいでしょう…?」
2年の曽江川が居るにも関わらず、もはや部長のように仕切った。
「あっるぇぇ? …部長、アタシなんだけどな…?」
仕切られて決められてしまい、威厳を保てなかったような気持ちに打ちひしがれ、少々落ち込んだが、すぐに立ち直った。
「よぉし、古瀬川学園高等部のオーダーは、それでいこう…!」
それぞれの想いを胸に、一行は、団体戦へと準備を進める……ーーーーー