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異世界転生はもうこりごりだ!!!  作者: てるてる坊主
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2 異世界転生装置とは?

 異世界転生装置とは、文字通り異世界へ行くための装置だ。


 見た目は鉄製の棺桶に見える。大量の電気を食うから一般家庭には置いておらず、国が定めた専用の施設にのみ設置されている。そこで厳重な検査を受け、異世界へ行くことに十分耐えられる健康体であることを確認されてから、ようやく飛び立つことが出来る。身体に問題がある状態で飛ぶと、何らかの支障が生じて転生が上手く行かない。最悪どちらの世界にも戻れなくなる。


 そして、晴れて検査をくぐり抜けても、飛び立つ際にいくつか注意しなければならないことがある。


 まず、異世界転生装置で設定できるのは三つのことだけ、ということ。


 一つ目は行きたい世界だ。

 世界中の異世界観測所で観測された様々な異世界が乗ったデータから、行きたい世界を設定する。SFでもファンタジーでも人が想像出来ないような世界でも何でもある。当然、一番人気なのは超能力が当たり前になっていて人間以外にも様々な種族がいる中世ファンターだ。


 二つ目は戻りたい時間だ。

 異世界に行った場合、これを設定しなければ元いた世界に戻ってこれなくなる。逆に言えばこれをきちんと設定していれば、どんな状態でも一定期間経てば戻ることが可能だ。魔王の目の前でも大丈夫。注意すべき点は、戻ってくる時は転生先での容姿や力をそのまま引き継ぐことだ。


 三つ目はステータスについて。

 ステータスとは、転生先での自分の容姿や力を意味する。VRMMOなら自由にカスタマイズ出来ることが多いが、この装置は特殊で、今の自分そのものを引き継ぐか、ランダムステータスで生まれ変わるかの二択から選ぶしかないのだ。つまり、運が悪いとスライムに転生……なんてこともある。もっとも、スライムに転生しても最強になることもありそうだが。


 そして、異世界転生を行う上で必ず覚えておかなければならない暗黙の了解がある。


 それは、転生先で死んだら終わり、ということ。

 異世界転生ものによくあるVRMMOのように、死んでも現実に戻されるだけ、なんて甘くはない。どちらも現実なのだ。死ねば次はない。


 世界中の期待を背負って生まれた異世界転生装置は、以上の理由から、あまり歓迎されなかった。


「ステータスランダムってリアルと一緒じゃん! 糞ゲーかよ!」


 人々は口々にそう言った。


 しかし、中には恐れ知らずの者もいて、多くの人が転生を試みた。当然のように帰らぬ人が続出し、元の世界に戻ってくる際は転生先のステータスを引き継ぐため、戻ってきてみたら獣人だった!なんてことも平気であった。幸い、こういう人は芸があるので、テレビに出たり本を出したり講演会をしたりしてお金をかせいだ。


 そんな中、ある一人の中学生が転生を試みた。


 九条院龍一郎という、名前だけは異世界転生ライトノベルの主人公になれる男だった。しかし彼は残念ながら元の世界では世界中の業を背負って生まれたのかと疑うほど最悪な人生だった。決して頭は悪くなかったが、容姿がチビデブ短小包茎ハゲメガネだったのだ。しかも小学六年生にして。まあ、この時は皆短小包茎かもしれないが。とにかく彼は散々な日々を送った。


 やがて龍一郎は人付き合いが嫌になって家に引きこもるようになり、ゲーム三昧の日々を送り始める。親も息子の容姿を見て納得し、文句の一つも言わなかった。


「龍ちゃんは心は誰よりも美しいからね! ママ、それだけは保証するわ!」


 龍一郎の母、九条院由紀はいつもそう言っていた。


 しかし、引きこもり生活が半年をむかえると、龍一郎は唯一心を許していたはずの由紀にも顔を見せないようになり始めた。危機感を覚えた由紀は、中学に上がるタイミングで龍一郎に異世界転生をすすめた。初め、龍一郎はひどく嫌がっていたが、段々ゲームにも飽きてきて、どうせやることもないし行ってみることに決めた。幸い容姿はダメでも身体は超絶健康体だったため、すんなり転生を認められる。


 そして初めての転生で、龍一郎の人生は大きく変わることになった。


 


 

 


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