転生までのあれこれ―――1
急に小説を書きたくなって始めました。
就活の息抜き目的なのであまり期待はしないでください。
他作品の連載の続きを楽しみにされてた方は申し訳ありません。作者自身に余裕が出来次第、連載の再会をしようかと思います。
それと作者は煽りや叩きにめっちゃ弱いです(前作で痛感しました)。絶対にやめてください。
よろしくお願いします。
初回のみ二話連続で投稿します。
そこは全てが白い、不思議な空間だった。
ドアも、天井と言えるようなものもなく、ただ白い。
「天国と言うのは不思議な場所じゃのぉ」
そこに一人の老人と――――
「うむ。だが天国ではないぞ、玄海どの」
―――鬼がいた。
その見た目は昔の絵に描かれたようなものとは異なり、全身が鱗のような棘で覆われている、阿修羅像をさらに2段階程昇華させたような【悪鬼】と呼ぶにふさわしい鬼だった。
「ふむ。では地獄か。まぁ、わしのようなもんが天国なんぞに行ける訳もあるまいしな」
老人はそう言って、ふっ、と笑った。
ちなみに鬼の見た目に関してはまるで気にした様子はない。
なお、二人は何故か正座で向かい合っている。
「いや、そうではない」
「ほう。ではここはどこになるのかのぅ? わしは間違いなく死んだはずじゃが」
老人は今いる場所が死後の世界であることを知っていた。
何故なら、自分が死ぬ瞬間を老人は見ていたのだから。
「そうだ。玄海どのは先刻、生涯最期の戦いにおいて破れ、その生を絶たれた」
「うむ」
老人は武人だった。
彼の世界において、生まれた国こそ平和であったが、世界全土でみれば争いにあふれていた。
その中を常に争いに身を置き、ついに敗れ、死んだのだ。
「やはり歳には勝てんのぉ。昔のようには体を動かせなんだ・・・」
「その心中お察しする。無念であっただろう」
「いやいや、そんなことはないぞ」
「む」
「いくら年をとったとはいえ、代わりに業は磨いた。それゆえにここまで生き抜くことが出来たのじゃ。それゆえに負けるのは己の未熟であり、わしの限界はそこだったという話じゃ」
「む、むぅ・・・」
「まあ鬼殿が言うように多少の未練はあるがな」
「そうか」
二人はしばしの間見つめ合う。
互いの意思をその目に宿し、伝えたのだ。
「ときに玄海殿」
「なんじゃ?」
「先程ここがどこかと聞いたな?」
「そうじゃったか? もう忘れよったわ」
老人はボケも正常に訪れていた。
「うむ。まぁ・・・いい、か。うん。いいか玄海殿。ここは【神界】。あらゆる神が暮らす、神々の世界だ」
「・・・ほぅ?」
「そして、私は見て分かると思うが【鬼神】と呼ばれる神だ」
「鬼神殿か。なるほどのぉ」
「今度、玄海殿をここに呼んだ・・・いや、呼べたと言うべきか」
「む?」
「私は鬼神。死後私と対面するためにはその資格を得た者でなければならない」
「なるほど、わしはその資格を得たと?」
「私と対面する者は少ない。身体のみならず、強靭な精神を持つ者でなければまず出会うことはないだろう」
「―――《修羅》じゃな」
「玄海殿の故郷で言えばまさにそれだな。人を辞め、化け物と呼ばれるような者でなくては私とは会えん」
「ほほほっ、自分が認められているようでなんだか嬉しいのぉ」
「事実認めているのですぞ?」
「して。最期に鬼神殿と出会えた褒美がもらえた訳じゃが、わしはこの後どうすればいいのじゃ?」
「うむ。この後は輪廻の神の下まで行き、玄海殿には魂となって転生していただく」
「輪廻転生か」
老人は予感はしていた。
死後、その魂は天に還り、そして巡る。
おそらく記憶も残らず新たな生を成すのだろう。
「ときに玄海殿」
「む?」
「次の生に対して要望はないか?」
「なに?」
いつの間にか、鬼神はペンと用紙を握っていた。
その姿は悪鬼そのものなのだが、持っているもののせいかコミカルな印象を受ける。
先程まで余韻に浸っていた老人にはその変化がどうにも受け入れがたいものだった。
「いや、なに。死した者に対し最も馴染みの深い神が対応することになっているのだが、その際に次なる生での方向性などをまとめて転生神に報告せねばならんのだ」
その説明に玄海は納得した。
なるほど神界とはそういうシステムで成り立っているのかと。
つまり目の前にいる鬼神のような神は受付なのだ。そして転生の力を持つ転生神によって新たな世界へと運ばれるのだと。
「……まぁその前に【輪廻神】に許可を貰える内容でなければならんのだがな」
「大変じゃのぉ」
しかしどんなところにも管理職というものはあった。
「奴らは容赦がないのだっ。前回は中々許可がもらえず、何百と書き直させられたっ!」
なお、見て分かる通りに武闘はである鬼神に転生先の細かい設定を建てられる脳があるはずもなかった。
「大変だったの・・・」
「だいたい二百を超えた辺りで転生者殿が共に考えてくれなければ永遠に許可が下りなかったかもしれん」
「・・・・・・そうか」
仕方なく老人も一緒に考えることにした。
そして――――――