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野生の姫様 10

足を運んで頂いた皆様、ありがとうございます。

1ヶ月くらい丸っと空いてすみません(陳謝)。

年度末と新年度体制に揉まれて死ぬかと思いました。

仕事を遅れて持ってくる奴、不備のある奴を一撃ずつ殴る権利が欲しい。

ようやく落ち着いたので投稿再開頑張ります!


「ーーそれで、この場所に落っこちたの。」

『ふむ、大体予想の通りじゃの。』


ひとまず、白蛇はタオルと一緒にバッグに入れてアルティナが抱えて座る。

蛇が起きるのを待つ間、イールギルに問われてアルティナは此処に来た経緯を大まかに話した。

それを聞いたイールギルは少し考え込んでから問いかけた。


『して、アルティナや。お主はこれからどうするのじゃ?』

「うーん、おしろに帰りたい…けど、むり、よね。」


子供のアルティナであっても、流石に「ちょっと叔母夫妻に殺されかけました。」なんて出て行ったら不味い事になると断言出来る。


『無理じゃの。』


案の定、スッパリとイールギルが切って捨てる。


『お主のような子供を放り出す阿呆共の所にわざわざ戻る事もあるまい。玉座などくれてやれば良いではないか。』


アルティナは返す言葉がなかった。

今出て行けば十中八九、再び殺されるか幽閉されるかのどちらかであろう。叔母夫妻が涙を流して帰還を喜んでくれるとは思えなかった。

それに、アルティナは帝王学を含め基礎的な事しか学んでいない。「あまり好きになれない」から「嫌いかもしれない」にシフトチェンジしつつある叔母夫妻だが、アルティナを陥れてまで得た国である。最低限の統治はしてくれるだろう。このまま玉座を明け渡すのも一つの選択である。

けれど、



“ーーいつか、おまえが王様になったら、オレがきしだんちょうになって守ってやるよ。”


記憶の中から浮かび上がる声。

あれはいつだったか。勉強が難しくなって来て辟易するアルティナに、そう言ってくれた友がいた。


“ホント?…やくそく、してくれる?”

“……………………おう。”


見つめられるのが恥ずかしかったのか、青銀の髪と濃紺の瞳を持つ友はそっぽを向いてしまったが、小さな声で返事をしてくれた。

顔が見えないのが残念だが真っ赤な耳を見て、アルティナは何だかほっこりと胸が暖かくなった。


“んもう、フェルったら。そこは「騎士団長になって俺が迎えに行く!」ぐらいの事を言わないと。”

“フェルはまず、姉さんに勝たないと、ね。”

“リル姉!カイ!”


声のした方を振り向くと白金の髪と薄紫の瞳の少女と少年。似通った風貌を持つ彼らは、比較的整った顔立ちが多いアルバディアでも一際美しい姉弟である。巷でこっそり

ニヨニヨと笑う少女が姉のリリア、冷めた目の弟はカイという。フェルと呼んだフェリクス少年と家が近いので3人は本当の姉弟の様に育った。


“騎士団に入って功績をあげるか武闘大会で優勝すれば、爵位が貰えるものね。でも、それまで待ってたらティナ取られちゃうわよ?ねぇ、ティナ?”

“??うん。”

“ちょっ、リル姉!おまえもわかってないのにへんじするなよ!!”


いきなり話を振られて驚いたアルティナはとりあえず頷くと、即座にフェリクスから怒られた。


“…ヘタレ。”

“おいこらカイっ!!“”


そんな彼ら2人に揶揄われ、フィリクスは真っ赤な顔のまま言い返す。

仲良さげな彼らをアルティナは笑いながら見守る。


それはまだアルティナが幸せで、それがずっと続くのだと信じて疑わなかった時のこと。


待っていないかもしれない。

けれど、待っていてくれるかもしれない。

あの日々はもう、取り戻せないのかもしれない。

けれど、まだ間に合うのかもしれない。


アルティナはイールギルの目を真っ直ぐに見た。その瞳が不安に揺らぎつつも逸らされない事を知ると、イールギルは深く息を吐いた。


「…やっぱりわたし、おしろへーーん?」



口に出そうとした時、手に持ったバッグがモゾリと動いた為、アルティナは視線を手元に落とした。


外が騒がしくて起きたのか、寝ぼけ眼の白蛇がひょっこりと顔を出す。


『シャッ…シャルルルル!!』


目の前のイールギルと後ろのアルティナを見て、逃げられないと悟ったのか、白蛇は無謀にもイールギルに向かって吠えかかった。前後を挟まれた場合、より怖い方から目が離せないのは仕方がないといえば仕方ないのかもしれない。


アルティナとイールギルはどうしようかと顔を見合わせた。

バッグを手に持つアルティナには、小刻みな振動が伝わってくる。それが分かったアルティナは可哀想になって来てイールギルに目をやった。

その視線の意図するところが判り、イールギルが大いに焦る。


『な、何もしておらぬぞ!蛇よ、お主もワシに吠え掛かるでないわ!』


イールギルの声に白蛇はビクリと身を震わせた。その拍子に溜まっていた涙がぽろぽろと零れ落ちる。


「…いっちゃん…」

『ち、違うぞ!今のは違うじゃろう!!…あぁ、もう!泣くでない!ワシが何かしたかのようではないか!』

「いっちゃん大きい声だすからこわいんだよ。へびさん、かわいそう。」


元来、あまり気の長くないイールギルであったが、アルティナの視線と今も必死に涙を堪える小さな蛇に怒鳴るのは大人気なさ過ぎた。


『ぬぐぐぐ…』


やり場の無い怒りを堪えるイールギルの顔が怖くて白蛇が身を縮こまらせ、アルティナがイールギルを嗜め、またイールギルにフラストレーションが溜まるという悪循環に、暫く翻弄される三者であった。


蛇に涙腺は無い気がしますが、そこら辺はファンタジー設定でお願いします。

話が遅々として進まない事に焦る今日この頃。

文才が空から降ってくる…なんて事はないな、うん(遠い目)。

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